*第12回*  (H25.2.23UP) 前回までの掲載はこちらから
地域医療を支える国立大学医学部の役割トップページへ戻る
今回は琉球大学での取り組みについてご紹介します。

琉球大学における地域医療人育成の取り組み
~”ゆいまーる”の心で~
文責:  琉球大学医学部附属病院 地域医療部長・教授  大屋 祐輔 先生 
  琉球大学医学部長 須加原一博 先生 
             

【琉球大学医学部の歩みと地域医療貢献の実績】
 琉球大学医学部は、昭和56年に最後の国立大学医学部として設立された。前身の保健学部および保健学部附属病院の時代より、沖縄の地域医療への貢献を行ってきた。医学科は、これまで2,523名の卒業生を輩出し、現在、沖縄県内で働く医師のうち38%が琉球大学の卒業生である。この数字は女性医師では54%である。さらに、2012年の大学からの離島・へき地への卒後3年目~15年目の派遣医師数は116名となっている。
 保健学科は、昭和44年より保健学部として地域保健の向上のために設置され、これまで2,334名の卒業生を出し、地域の保健・看護等の分野で活躍している。

【医学科における地域臨床実習】
 琉球大学においては、創立当初より地域医療人教育への取り組みが重視され、沖縄県立中部病院での4週間の臨床実習や県内の保健所や診療所での実習が行われてきた。現在は、大学病院以外に、6年生は6機関、5年生は13機関の病院、また約10カ所の診療所での学外臨床実習が行われている
 平成18年度より、離島医師の確保を目的とした離島へき地実習を4年生に対して開始した。学生は、数名ずつのグループに分かれ、公立久米島病院、県立宮古病院、県立八重山病院、県立北部病院(およびこれに附属または関連する診療所)にて、連続する5日間の実習をする。医療のみならず、地域の特性を学ぶ事で、学生の学習意欲の向上や地域医療への理解の促進に大きく寄与している。

   
   図1 離島へき地実習


【沖縄県からの奨学・修学資金による地域で働く医師の確保】
 平成21年度から地域枠選抜制度を導入した。当初は推薦枠7名、翌年より一般入試枠5名を加えた合計12名が、沖縄県医師修学資金を貸与され地域枠学生として勉学に勤しんでいる。地域枠学生は沖縄県内の指定医療機関で4年間働くことが義務である。地域枠学生の教育では、能動的な学びを促進することと現場での学びを重視する方針を採っている。学部長所属で教育改革を担当する教育企画室、地域医療教育を担当する附属病院地域医療部、および、学生の自主サークル活動である地域医療研究会が関与し、通常の医学部のカリキュラムに加えて、離島・へき地、災害地域、ラオス、地域医療の先進地域などの見学・体験、地域医療に関するテーマでのPBL、地域で必要なスキルを身につけるためのシミュレーショントレーニング、離島・へき地での学生企画フィールド学習などを行っている。さらに、学生たちは、その成果を医学教育学会等で発表している。
 専門医の確保に関しては、平成20年度より、文部科学省のGPによる“多極連携型専門医・臨床研究医育成事業“が始まり、専門医取得のための研修促進のみならず、指導医の育成、シミュレーターの整備、臨床研究を学ぶためのワークショップの実施、離島・へき地で学ぶ若手医師のための巡回指導などを行った。その過程を通じて、沖縄県内の大学病院、地域の研修病院、離島・へき地病院との連携が強まり、この協力体制は、沖縄県地域医療再生基金による大型教育プロジェクトへとつながった。
 さらに、沖縄県で不足していた、麻酔科、産科、脳外科の特定診療科の医師育成のために、沖縄県より、平成19年度から指定診療科医師確保修学資金を5年次、6年次の学生4名ずつに貸与している。さらに、これら診療科に関しては、後期研修(専門研修)を行う医師に対しても修学資金を貸与し、専門医研修を支援している。

   
   図2 学生主体のフィールド学習(報告書)


【地域医療再生基金による“おきなわクリニカルシミュレーションセンター”の設置と寄附講座の設置】
 平成22年より、地域医療再生基金を用いた、クリニカルシミュレーション教育・トレーニングを実施、また、その指導者育成のための“おきなわクリニカルシミュレーションセンター”プロジェクトが開始された。日本で最初の総合的シミュレーションセンターの設立にあたっては、前例がない中、海外の同様の施設の視察やハワイ大学のシミュレーションセンターのバーグ教授の指導を通じて、グローバルな最新の医学理論に基づいた教育を導入すること、沖縄県のすべての医療系学生や医療関係者が利用できること、琉球大学、県立病院、県内臨床研修病院が協力して運営すること、地域医療を促進する教育プログラムを行うこと、などの方針で準備を進めた。約2年間の建築、機器、人材育成の準備ののちに、平成24年4月より本格的運用が開始され、現在、一ヶ月に約1000名の医療者が施設を利用している。
 沖縄県地域医療再生基金によって、平成23年1月より、地域医療教育の充実とシミュレーションセンターの設立・運営のための寄附講座(地域医療システム学講座、地域医療教育開発講座)が設立された。現在、教授2名、准教授1名が、地域医療に関連する教育と教育システムの改革に取り組んでいる。

   
  図3 おきなわクリニカルシミュレーションセンター 

【琉球大学の地域医療人育成の方向性】
 沖縄県自身が本土から海によって隔てられ、さらに、多くの離島を有するという他県とは異なった医療環境にある。また、琉球大学は、沖縄県唯一の医育機関であり、沖縄県の完結型医療システムを支えるという明確なミッションを有する。沖縄県県立病院では、琉球大学医学部設立前より、欧米型の医学教育・研修を取り入れ、先進的な地域医療人教育を行っていた。その土壌に、大学のアカデミズムと教育力を結合させ、地域医療人育成を促進していくことが沖縄の地域医療人育成に必要である。幸いなことに、沖縄には、“ゆいまーる”という、地域とのつながりや人のつながりが深いという財産がある。琉球大学は、それらを生かした地域医療人育成を実践することを目指している。