*第14回*  (H25.4.26UP) 前回までの掲載はこちらから
地域医療を支える国立大学医学部の役割トップページへ戻る
今回は鹿児島大学での取り組みについてご紹介します。

鹿児島大学の地域医療教育の取り組み
文責: 鹿児島大学離島へき地医療人育成センター教授 大脇 哲洋 先生
  鹿児島大学国際島嶼医療学講座教授 嶽﨑 俊郎 先生 
             

 鹿児島大学医学部では従来から5~6年生の各診療科の臨床実習に市中病院での地域医療教育を随時、取り入れていました。これに加え、離島医療学講座の新設に伴い、平成14年度からは学士学生を対象に離島医療実習を必須化し、平成19年度からは全ての学生を対象に9か所の離島へき地を活用した5日間の地域医療実習を実施しています。さらに、4年生に対しては離島を含む鹿児島の地域医療に関する講義(2単位)も行っています。また、平成22年度から開始した新カリキュラムでは、3~4年生を対象に市中病院や診療所、保健福祉機関での見学型実習(シャドーイング)も行っています。
 実習における交通費など経費は原則として学生負担ですが、5日間の離島・地域医療実習については、宿泊費を含む経費の3分の2を医学部および離島へき地医療人育成センターで補助しています。
 離島・地域医療実習の問題点の1つとして、まれに実習先の医師が診療所等を辞める場合があり、代わりの医師が準備できる大学病院などに比べマンパワーの制限があることです。そのため、実際の実習先は学生の定数より余裕をもって準備しています。また、6年生で比較的短期の実習であるため、大学での振り返り学習がレポートに限られてします。そのため、実習先は指導者講習を受けた臨床教授のいる医療機関とし、現地の臨床教授による振り返り学習を十分に行うように連携を強化して行っています。
 平成17~19年度医療人GP事業として設置された「離島へき地医療教育支援室」では、遠隔診断支援システムとしてIT Karteを開発し、現在も離島・地域医療実習で利用しています。
 これらの実績をもとに平成19年度に設置された「離島へき地医療人育成センター」では、鹿児島県の離島を活用した地域医療教育を他大学の医学生や鹿児島大学医学部の地域枠学生、同大学の保健学科学生や歯学部学生、さらに離島や地域医療に携わる医師に広げ活動しています。
 平成20年から開始した他大学の医学生に対する夏期離島実習は毎年15名前後が4つの離島に分かれ離島保健医療を学ぶとともに地域住民とのふれあいを通じて、現場で地域医療を深く理解する取組みです。これまでにのべ41大学から70名の医学生が参加しています。
 鹿児島大学医学部医学科の地域枠学生に対する正規カリキュラム以外の地域医療教育も平成20年から開始しています。1・3年生に対する夏季離島実習、自己の決定した地域医療の課題を現地に行って調べる2年生の地域医療研究、4・5年生の自主的地域医療実習に加え、学生の発表会や全国の地域医療教育専門家を呼んでの講演会などを実施しています。この地域枠医学生の実習費用は、鹿児島県から資金提供を受けています。さらに、地域医療に高い意欲を持った優秀な学生を確保するために、県内の主だった高校を訪問して、地域医療に関する出前授業を実施しています。
 さらに年一回行われる医学科に加え保健学科および歯学部の学生を交えた山間部の里山での地域医療トレーニングキャンプでは、地域医療の現状と問題点、チーム医療を学び、地域住民との交流の機会も提供しています。さらに、離島へき地で働く医師に対してもe-learningの提供や定期的な講演会を実施しています。

 地域枠学生の急激な増加に伴い、地域枠学生に対する卒前・卒後教育を検討する必要が出てきました。そのため、離島へき地医療人育成センターでは全国の地域医療関係者(医療関係者、自治体)に呼びかけ、平成21年から全国シンポジウムを毎年開催し、意見や情報交換の場を作り、同学生の教育内容の改善にも貢献しています。

 今後も鹿児島県内だけに留まらず、全国の地域医療、更には世界の地域医療の教育・研究の発展に邁進していきます。

  離島へき地医療人育成センター: http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~ecdr/