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今回は徳島大学での取り組みについてご紹介します。

地域医療を支える徳島大学医学部の役割
文責 : 徳島大学 医学部長  苛原 稔 先生 
             

 医師数統計が発表されるたびに、徳島県の人口当たりの医師数は全国のトップに位置していると報告されるので、徳島県地域は医師が余り、医師不足とは程遠いと思われがちだが、ご多分に漏れず、診療科医師の偏在と過疎地域の医師不足は深刻である。すなわち、面積が小さく人口当たりの医師数の多い徳島県においても、人口が多く医療資源が集積している「東部医療圏」(これは徳島市近傍に徳島大学をはじめ大病院が集中しているため)と、県南部や県西部のへき地等を中心とする「南部医療圏」と「西部医療圏」があり、これらの過疎医療圏の医師は不足している。また、産科や小児科、救急医療分野では診療科偏在が存在し、医療ニーズに完全に対応できているとは言えず、県全体に必要な医師や看護師等を供給できるだけの医療従事者養成・確保機能も不十分であるなどの課題を抱えている。この意味から、大学には地域医療を支援することが切実に求められている。
 医師不足に関しての徳島大学における地域医療支援の2大事業は、地域枠を設けて医学生を受け入れることと、大学内に地域医療を支える寄付講座(診療部)を設置して、過疎地に医師を派遣し診療支援を行うことである。いずれの事業も、平成21年度から地域医療再生基金として各県に措置された資金をもとに実施されている。

 地域枠学生の受け入れでは、徳島大学医学科の学生定員114名の内、地域枠定員を17名入学させている。そのうち徳島県から奨学金を貰う学生、すなわち特別地域枠定員は12名であり、残りの5名は奨学金は出ないが地域枠として推薦入学した学生である。本年度6年生からこの地域枠学生が卒業するので、現在、卒後9年間の地域枠出身の学生の研修・勤務の在り方について、有効な医師としての研修が行われ、また医師不足の解消につながる良いシステムを作るため、徳島県と協議を行っている。
 また、寄付講座(寄付診療部)に関しては、徳島大学病院に地域外科診療部(西部医療圏の県立三好病院支援)、地域産婦人科診療部(南部医療圏の県立海部病院支援)、地域脳神経外科診療部(南部医療圏の県立海部病院支援)、ER・災害医療診療部(県立中央病院救急医療支援)の4診療部(各診療部とも3名の職員が配置されている)が設置され、さらに県立中央病院の小児医療への支援のための医師の拡充が図られ、徳島県立3病院でのそれぞれの診療科の臨床活動に参加する形で地域医療を支援している(図1)。

 


 一方、医学部には地域医療の教育と地域医療を担う徳島県寄付講座「総合診療医学分野」が設置され、地域医療レベルの向上と地域医療に貢献できる総合診療医育成に向けた研究に取り組んでいる。教室員は教授1名、講師1名、助教2名、事務員1名のスタッフに大学院生や後期研修医で、徳島県立海部病院の地域医療研究センターを研究拠点とし、徳島県の地域医療に貢献しながら、医学生から初期研修医、そして後期研修医への継続した総合診療医育成システムの構築に努めている。また、徳島大学はその歴史から四国の他の県での医療にも大きく関わっており、現在、愛媛県四国中央市にある四国中央病院から寄付された「総合地域医療学分野」が寄付講座として設置され、内科医3名が勤務している。
 また、徳島市内に隣同士で隣接する徳島大学病院と徳島県立中央病院は、その特異な位置関係をメリットに変えるため、両病院でメディカルゾーンを形成し、救急医療は県立、高度医療や周産期医療は大学と役割分担をしながら、両者で協力して、医師養成や地域医療に貢献する体制を整備しつつある。すなわち、徳島県の医療体制の要となっている。その象徴として、両病院間にかけ橋が設置されている。
 地域医療を充実させる方策は幾つか考えられるが、個人的には、医学部教員数を見直し、地方医学部の人材育成機能と医師派遣機能を充実させる事が最も有効であると考えている。従来の医局制度による医師派遣機能は、幾つかの問題を抱えていたが、地域医療を効率的に機能させるためには大きな役割を担ってきたと信じている。各地域の実情にあった地域医療を効率的・機能的に展開するためには、引き続き医育機関が中心となって、医師の生涯教育も配慮した人材派遣システムを構築する必要があると考える。