*第3回*  (H24.5.17UP) 前回までの掲載はこちらから
地域医療を支える国立大学医学部の役割トップページへ戻る
今回は滋賀医科大学での取り組みについてご紹介します。

滋賀医科大学医学部の地域医療人育成の試みについて
(文責:滋賀医科大学理事・副学長 服部 隆則 先生)

 滋賀医科大学医学部医学科は1974年の開学以来3013名の卒業生を輩出しているが、そのうち1037名(病院858名、開業145名、診療所27名、他7名)が滋賀県内で就労している。また、看護学科の963名の卒業生のうち280名が県内で就労している。
 地域医療人を増やす目的で、本学では、全国に先駆けて、平成10年度から推薦入試(当初15名平成14年度から20名)において地域枠(当初7名平成20年度から8名)を導入した。平成21年度に緊急医師確保対策で5名、経済財政改革の基本方針2008で5名、さらに、平成22年度には基本方針2009で5名の定員増が図られたが、このうち緊急医師確保対策と基本方針2009の計10名増については、卒業後滋賀県で働くことを条件(9年間以上)として県奨学金が6年間貸与される。基本方針2008の5名増については推薦入試地域枠で運用しているが、現在、推薦入試枠が25名、そのうち地域枠が13名となっている。これらの制度で、滋賀県で医療に参加する人材が多くなることが期待される。
 定員増とは別に、地域医療人を確保するために、平成19年度から、産科、小児科、麻酔科と精神科を目指す学生に滋賀県から奨学金を貸与(3〜6学年)される制度が運用されている。また、平成20年度から、滋賀県国保連合会から、滋賀県で働く(4年間以上)ことを希望する学生に卒業までの2年間奨学金が貸与される制度が同時に運用されている。これらを利用する学生が毎年5〜8名いる。滋賀県からの寄附講座として、産科医の養成のために「地域周産期医療学講座」が平成19年に、また、精神科医の養成に向けて「地域精神医療学講座」が平成22年に設置されている。これらの制度面での試みとは別に、教育プログラムとして以下のような取り組みを実施している。



 医学・看護学修学のモチベーションを高めるために、カリキュラムにおいて「早期体験学習」を配当している。これは、地域で展開されている医療・保健・福祉の現場に学生を入学直後から参加させ、医学・看護学を学ぶ自分の役割や課題について省察させるものである。実際には、学生は診療所と養護施設を訪問し、医療人や患者と交わることで体験学習をしている。
 平成19~22年度に文部科学省の支援を受け、『地域「里親」による医学生支援プログラム』を実施した。これは、地域住民が「地域医療の担い手の育成」に参加する教育プログラムで、卒業生や医療関係者を「里親」、住民、特に献体登録者や模擬患者等を「プチ里親」とし、里親、プチ里親と学生が、年に数回県下の医療機関で研修会を持ち、地域社会の良い所や地域医療の必要性・重要性について理解を深めるGPであった。平成23年度からは、県、市町村、医師会や看護師会等からの協力を受け、NPO法人「滋賀医療人育成協力機構」を立ち上げ、「地域「里親」による学生支援事業」を継続している。参加学生を登録制にしているが、医学科、看護学科とも2割ほどの学生が参加している。

 平成21年度からの地域医療再生計画に呼応し、国立病院機構滋賀病院を中心として東近江総合医療センターを立ち上げ、ここに総合内科と総合外科の寄付講座を設置した。これは県から委託された事業であるが、平成23年から、不足している診療分野を強化するため教授、准教授、講師と助教(平成24年4月現在計17名)を大学から出向させている。これにより地域医療の充実を図ると共に、平成24年度からは、ここで第5学年の臨床実習を行っている。学生全員に地域医療を経験できる体制とし、第2教育病院として位置づけている。また、本学では、従前、地域医療への関心を高めるために、第6学年の5月から6週間の学外臨床実習を滋賀県下40の医療施設で行っている。