*第33回*  (H27.1.30UP) 前回までの掲載はこちらから
地域医療を支える国立大学医学部の役割トップページへ戻る
今回は山梨大学での取り組みについてご紹介します。

山梨大学医学部の地域医療人育成の取り組み
文責 : 山梨大学医学部地域医療学講座 教授  佐藤 弥 先生
  山梨大学地域医療支援センター副センター長・特任准教授 板倉 淳 先生 
             
 山梨県は医師不足県であり、平成20年度から山梨大学医学部医学科の定員増(10名、現在は25名)が行われている。平成27年度入学者では、地域枠を一本化し、35名以内となっている。地域枠合格者は、山梨県医師修学資金給付制度の規程により一定期間山梨県内での診療を行う事になる。

1)地域医療学講座の開設
 定員増にあわせて、地域医療学講座を開設した。地域医療学講座では、1年次のECE(早期臨床体験)、2年次の防災トリアージ訓練、3年次の救急車同乗実習、4年次の地域医療関連フィールド研究を全員必修として行っている。ECEでは、県内の地域病院で2日間の実習を行い、山梨県内の地域病院の現場で見学・看護補助体験を通し、病院の概要と臨床医療の現状を理解することを目指している。救急車同乗実習では、学生一人が救急隊と夜間を含む24時間の行動をともにし、医学部卒業後ではほとんどみることのできない搬送の実際を体験し、救急活動の重要性と困難な点を理解し、学ぶことを目指している。また、地域医療フィールド研究は、5~7人のグループにそれぞれ異なった大きなテーマを与え、テーマに沿った地域の問題点を洗い出し(方法もグループで考える)、さらにその解決方法をまとめる、という一連の実習となっている。4月に開始し、11月までには、それらをまとめ、学会形式で公開発表し、討論を行い、調査研究の基礎を総合的に体験することを目指している(図1)。
   
   図1 地域医療学実習概要

 地域医療学講座では、地域枠と一般枠の垣根をなくして、全員が地域医療の現場を経験できるようにしている。これとは別に、在宅医療研修を平成25年度より、山梨県からの補助金で実施している。医学科の学生と看護学科(山梨大学、山梨県立大学)の学生がペアとなり、在宅医療を担当している医師とともに、1日実習を行うものであり、希望者だけだが、26年度は約25組が実習を行った(図2)。いずれは、地域医療実習と診療所実習を併用させて、5年次で行いたいと考えている。

図2 在宅医療実習(希望者のみ)

2)地域再生基金を活用した寄附講座
 地域医療再生基金を活用した活動では、地域医療連携支援学講座(平成23~25年度)、地域医療臨床研修学講座(平成25~27年度)の2つの寄附講座の支援により、9名の内科医と1名の整形外科が常勤医として、不足している病院へ派遣された。また、非常勤職員の派遣も内科3名、産婦人科1名、整形外科1名等で行っている。

3)山梨県地域医療支援センター
 平成24年度には、山梨県と山梨大学医学部附属病院で、山梨県地域医療支援センターが設置され、山梨県内の医師配置場所の把握と、山梨県内地域別の疾患の動向を調査することとなった。総合診療専門医の必要性も検討されている。

4)地域病院運営への支援
 山梨県立病院機構、市立甲府病院、独立行政法人地域医療機能推進機構山梨病院、峡南医療センターの各病院の経営または運営に対し、評価委員や経営検討委員会委員等の役員を派遣している。特に、峡南医療センターは、市川三郷町立病院と社会保険鰍沢病院を統合し、大学病院と山梨県が協力し統合して作られたもので、地域医療再編の一つの手段となり得るものである。
 以上のように、山梨県内の医療機関と山梨県、山梨県医師会との関係を深め、継続性のある対応をしているところである。