*第37回*  (H27.6.17 UP) 前回までの掲載はこちらから
地域医療を支える国立大学医学部の役割トップページへ戻る
今回は神戸大学での取り組みについてご紹介します。

神戸大学医学部の地域医療人育成の取り組みについて
文責 : 神戸大学大学院医学研究科地域医療教育学部門特命教授 岡山 雅信 先生
             
 兵庫県は、南は瀬戸内海、北は日本海に面し本州を縦断する多面的風土を持ち、人口555万人、離島を含む面積8,400k㎡余りを有する広大な県である。
 医療という視点で見たとき、兵庫県は10の2次医療圏域に機能上分割されており、それぞれの圏域において大多数の診療が完結する施策が取られてきている。そのためには、地域での病院あるいは病診連携が十分に機能するべく、各圏域に十分な医療資源、すなわち、医師・看護師をはじめとするメディカルスタッフの配置、病院・診療所及び医療機器の整備が確保されることが不可欠である。ここ数年来、メディカルスタッフの偏在が進み、特に医師における都市部への集中が問題となっている。そのような現状打破のため、兵庫県と神戸大学では、へき地医療学、プライマリケア医学、地域医療支援学などの講座を設け早くから対策に取り組んでいる。
 神戸大学医学部では、世界で活躍する研究者の育成を図る教育を推進する一方で、地域医療教育の充実を図るカリキュラムの変更が進められている。平成26年度入学者からは、介護・福祉施設での実習や地域医療臨床実習の導入が決まっている。また、平成22年度には推薦入試「地域特別枠」が設けられ、3人の学生が入学した。その後、入学定員は3人、5人、8人と増加し、平成25年度からは10人となった。このような取り組みは、すでに多くの医学部・医科大学にて行われており、神戸大学医学部においても同様の取り組みを行っている。
 神戸大学の特徴的な取り組みとして、兵庫県と密接な連携に基づく地域医療人材育成システムを紹介する。大学が持つ人材育成機能を生かして、地域の現場で働く医療従事者(医師以外のメディカルスタッフも含む)へ生涯研修の機会を提供する施設として平成26年4月に神戸大学医学部附属地域医療活性化センターが開設された。このセンターには、兵庫県養成医、教育・研修、復職支援及び調査研究の4つのユニットが設置され、それぞれが精力的に活動を行っている。兵庫県からの補助事業として、地域医療人材育成事業、エキスパートメディカルスタッフ育成事業、シミュレーション実習機器整備事業及び専門医研修事業などを受け、教育・研修ユニットでは、臨床基本技術トレーニングセンター、エキスパートメディカルスタッフ育成センター及び先端外科医療・内視鏡トレーニングセンターにて、医学生・研修医に加えて、地域の現場で働く医療従事者に対して地域医療を実践する上で必要な知識・技能のトレーニングを行っている。

   

 また、地域医療活性化センターには兵庫県の地域医療支援センターも併設されている。神戸大学と兵庫県とが連携して地域特別枠学生を含む兵庫県が修学資金を貸与する医学生の養成を担うために、医学教育学分野地域医療教育学部門が新設された。地域医療教育学部門は地域医療の普及活動や神戸大学での地域医療等に係る卒前教育に加えて、5大学(神戸大学、岡山大学、鳥取大学、自治医科大学、兵庫医科大学)で学ぶ修学資金貸与医学生及び卒業医師の教育、研修、キャリアパス支援及び相談を行っている。兵庫県からの委託事業として地域医療研修事業、県養成医師等キャリア形成事業及びへき地若手医師キャリアパスサポート事業等を受け、具体的には、地域医療教育、地域医療シンポジウム・学生セミナーの開催、地域医療への意欲・使命感の醸成を図ることを目的とした地域医療体験ツアーや見学ツアー、地域医療システムの理解を目的とした地域医療資源分析等を行っている。

 

 地域医療を推進するための人材確保の枠組みを構築するには、県の医療行政の役割は不可欠である。一方で、人材確保はその育成と不可分であり、その枠組みには優れた人材育成機能が必要となる。人材育成は大学が最も得意とするところである。県と大学とが連携し、両者の利点を生かして地域医療人材を育成する神戸大学医学部の取り組みを参考にして頂ければ幸いである。

神戸大学医学部附属地域医療活性化センターURL: http://www.med.kobe-u.ac.jp/cacm/