*第43回*  (H27.12.11 UP) 前回までの掲載はこちらから
地域医療を支える国立大学医学部の役割トップページへ戻る
今回は滋賀医科大学での取り組みについてご紹介します。

滋賀医科大学の地域医療人育成に関する取り組みについて
-地域に支えられ、地域に貢献し、世界に羽ばたく-
文責 : 滋賀医科大学 学長 塩田 浩平 先生

 滋賀医科大学医学部医学科は、1974年の開学以来の40年間に3,408名の卒業生を送り出してきた。そのうち、1,139名(33%)が滋賀県内で医療または医学教育に従事している。一方、看護学科の卒業生1,238名のうち329名(27%)が県内で就労している。両学科とも卒業生の大多数が関西圏の医療機関等で就労しており、滋賀医科大学卒業生が滋賀県を中心とした地域医療に貢献している。
 本学では、全国に先駆けて平成10年度から推薦入試における地域枠を設けたが、現在は推薦入試で13名以内を滋賀県枠、学士編入学で5名以内を地域枠(近畿圏および滋賀県に隣接する県の高校出身者)として、地域の出身者を積極的に入学させている。医学科入学者で卒業後滋賀県内の病院で勤務する意思を有する学生は、選考の上「滋賀県医師養成奨学金」を受けることができ、毎年5〜8名の学生がこの奨学金を受けている。
 滋賀県内でも医師の偏在が進んでおり、医師不足が深刻な問題になっている地域もある。本学では、「臨床教育講座」「医師臨床教育センター」などの協力体制のもと、卒前•卒後のシームレスな教育を進めており、その中で地域医療の担い手としての役割や意義についても積極的に教育している。平成21年度からは、(独)国立病院機構東近江総合医療センター(旧国立病院機構滋賀病院)を第二教育病院と位置づけ、大学から総合内科と総合外科の医師を出向させてきたが、27年度からは新たに独立行政法人地域医療機能推進機構滋賀病院を加えた「地域医療教育研究拠点」として、学生教育を分担し、また、地域医療を担う医師の養成を行っている。
 若手医師が県内で地域医療に従事していく過程の研修プログラムを作成したりキャリア支援を行う目的で、滋賀県と共同で「滋賀県医師キャリアサポートセンター」を運営している(図1)。同センターでは、滋賀県下の病院の医師充足状況調査とその対策案の策定、滋賀県医師キャリアアッププログラムの構築、医師のための総合相談窓口、女性医師支援などを実施して、県内における医師の流動性向上とキャリアアップ支援、病院診療機能の向上を目指している。なお、滋賀県における周産期医療、精神科医療を充実する目的で、滋賀県の寄附講座として「地域周産期医療学講座」と「地域精神医療学講座」がそれぞれ平成19年度、22年度に設置された。また、小児の発達障害に関する医療ニーズに対応するため、「小児発達支援学講座」を寄附講座として設置している。

   
  図1

 学部教育においては、医学科•看護学科で入学直後から「早期体験学習」を行い、地域の医療•保健•福祉の現場に学生を参加させて、地域医療、全人的医療を学ばせている。また、滋賀医科大学では、「里親制度」という独自の制度を設けている(図2)。これは、本学卒業生や県内の医療関係者に「里親」、大学に協力していただいている模擬患者や一般住民の方々に「プチ里親」となっていただき、学生がこれらの方々と定期的に交流させていただくもので、地域医療や地域文化に対する理解を深め、地域医療へのモチベーションを高める上で役に立っている。毎年、2割ほどの学生が「里親制度」のプログラムに参加している。

   
  図2