*第12回*  (H31.3.26 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は大阪大学での取り組みについてご紹介します。

卒前卒後の医学教育における国立大学医学部と地域医療機関との連携
文責 :  大阪大学大学院医学系研究科・医学部 金田 安史 医学系研究科長・医学部長
 大阪大学医学部では、大阪大学が掲げているモットー「地域に生き世界に伸びる」を実践すべく、地域医療に貢献しながら、世界の先端をリードする医学・医療の研究を推進する人材を養成することを使命としています。ここでの「地域医療」はいわゆる「へき地医療」ではなく、大阪大学が位置する京阪神地区を中心とした医療を意味し、この使命を実現するためには、卒前卒後の臨床教育において、大学附属病院と京阪神地区の関連病院とが連携しながら学生、研修医教育に当たることがなにより重要な要素となります。
 学部学生の臨床実習では、附属病院での高度先進医療、関連病院でのcommon diseaseをバランスよく配置する臨床実習を実現させるために、主に京阪神地区の関連病院に約280名の臨床教授、准教授を配置し、学生指導を担当いただきます。臨床実習では1診療科あたり原則4週間の実習期間を確保し、参加型臨床実習を実現するとともに、様々な病態を効率よく経験できるよう附属病院と関連病院との実習期間の配分も考慮しました。また、5年次後半の選択実習期間中には、学生が全国の希望する病院・診療所で地域医療を経験する機会を提供し、現在半数以上の学生が4週間以上の地域医療実習を経験しています。地域包括ケアシステムや在宅医療など、今後の我が国における医療の方向性からみて、我々は多職種連携教育を重視しています。そこで、2年次の早期臨床体験実習および5年次の臨床導入実習では、附属病院看護師、薬剤師、管理栄養士が医学部学生を指導するユニークな教育システムを導入し、チーム医療、多職種連携の重要性を学ぶ機会としています。

 卒前・卒後教育の一体化は重要なテーマです。2014年度より、卒前教育を担当する医学科教育センター長が卒後教育開発センター長を、卒後教育開発センター副センター長が医学科教育センターを兼任し、卒前・卒後教育を統括することで、学部教育と卒後教育を一体化する体制が構築されました。

 これにより、大阪大学の卒業生が将来大学に戻り、臨床、研究に貢献する人材の流れを作るとともに、全国から優秀な人材を大阪大学に集めることで、医学部の活性化を図っていく方向性が強化されました。また、学生、研修医に対するキャリア教育、研修医による臨床導入実習や臨床実習で学生への指導を行う機会が実現しました。大学医学部における臨床医学教育の長所は、学部、初期臨床研修、専門医研修からその後のサブスペシャリティや学位取得まで、長期的視野に立った人材育成が可能なことであり、それぞれの過程で附属病院と地域医療機関のバランスの取れた研修システムが求められます。初期臨床研修プログラムでは、研修1年目は協力型研修病院、2年目は医学部附属病院で研修する、いわゆる「たすき掛けプログラム」の定員は、募集定員61名のうち約7割の43名で、23の医療機関が本プログラムに参加しています。2020年度には初期臨床研修制度の見直しが予定されており、大阪大学としては「たすき掛けプログラム」に参加する臨床研修病院の充実、一般外来および在宅医療が研修可能な地域の医療機関の充実に努めています。