*第14回*  (2019.5.27 UP) 前回までの掲載はこちらから
トップページへ戻る
今回は千葉大学での取り組みについてご紹介します。

卒前卒後の医学教育における国立大学医学部と地域医療機関との連携
文責 :  千葉大学医学部 伊藤 彰一 医学教育学教授
三木 隆司 医学部副学部長
中山 俊憲 医学部長

千葉大学医学部では、医学部学生に卒業時に求められる学習成果(アウトカム)を策定し、これらを達成するための教育を実践しています(アウトカム基盤型教育)。そのアウトカムは以下のとおりです。

《千葉大学医学部学生の学習成果(アウトカム)》 
千葉大学医学部の学生は、卒業時に、
1. 医学的知識・技能を理論と根拠に基づいて応用し,適切な判断と医療が実践でき,生涯にわたり自らの能力を向上させることができる。 
2. 医療制度を適切に活用し,社会および医療チームの中で医師としての役割を果たし,患者中心の医療を実践できる。
3. 科学的情報を批判的に吟味し,新しい発見と創造のための論理的思考と研究を行える。 

これらを達成するためには、診療参加型臨床実習(クリニカル・クラークシップ)の充実が不可欠です。千葉大学医学部の臨床実習期間は合計72週間であり、そのうち64週間が各診療科のローテート実習(1~4週単位)、4週間が学内選択実習、4週間が学外選択実習となっています。各診療科のローテート実習は、高度先進医療を主に提供する医学部附属病院と、プライマリ・ケアを提供する地域医療機関が連携しつつ行われ、学生は、地域医療機関の外来診療や在宅診療等についても学ぶことができます。4週間の学外選択実習期間は学生が自らが選択した地域医療機関で見学・実習を行う期間ですが、希望があれば厚生労働省等で保健・医療行政について学ぶこともできます。

 千葉大学医学部附属病院の初期臨床研修も医学部附属病院と地域医療機関の連携の下で行われています。研修プログラムは大学病院から研修を開始するプログラムと、協力病院から研修を開始するプログラムに大別されますが、いずれのプログラムにおいても高度先進医療とプライマリ・ケアの双方の研修ができます。研修医は、これらの研修を通して自らの診療能力を向上させ、医師に求められるリサーチ・マインドを高め、臨床研修修了後の自らのキャリア・プランを明確にしていきます。


 千葉大学医学部附属病院は、専門研修の基本領域である19領域の全てにおいて専門研修プログラムを提供しています。いずれの領域においても地域医療機関との連携を意識しています。また、千葉県医師修学資金貸付制度の受給者(いわゆる“地域枠”の学生・卒業生)が研修しやすいようなプログラムを提供しています。


 このように、千葉大学では臨床実習、初期臨床研修、専門研修という卒前卒後の臨床医学教育の要となる部分において医学部や医学部附属病院と地域医療機関が連携しています。そして、千葉大学は、関連する約100の地域医療機関を構成員として千葉大学関連病院会議を設置しています。同会議では、年1回以上開催される総会や勉強会等を通して、卒前卒後の医学教育に関する諸課題への対応が検討されています。なお、関連病院の一つである東千葉メディカルセンター内には千葉大学医学部附属病院東金九十九里地域臨床教育センターが併設されています。同センターの活動は千葉大学大学院医学研究院総合医科学講座に所属する教員によって行われており、同センターは卒前卒後の地域医療教育において重要な役割を果たしています。


 千葉大学医学部附属病院は、主要診療科から選出された教育専任教員(アテンディング)を総合医療教育研修センターに配置しています(合計15名)。各アテンディングは、ファカルティ・ディベロップメント等を通して自らの教育能力を向上させつつ、臨床実習・研修のカリキュラム作成、教育指導実践、学習者評価などを行います。また、各診療科の他の指導医・教員の教育能力の向上にも貢献しています。アテンディングが地域医療機関に異動になった場合には、医学部附属病院での教育経験を活かし、地域医療機関における教育・研修に貢献していきます。


 上述のように、千葉大学の卒前卒後の医学教育は多くの地域医療機関の協力によって成り立っています。千葉大学医学部は、地域医療機関の優れた指導医に対して臨床教授等の称号を授与しています。今後も、地域医療機関との連携を強めつつ、卒前卒後の医学教育の発展に努めてまいります。