*第16回*  (2019.7.26 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は北海道大学での取り組みについてご紹介します。

卒前卒後の医学教育における国立大学医学部と地域医療機関との連携
文責 : 北海道大学大学院医学研究院
北海道大学大学院
医学教育・国際交流推進センター 村上  学 助教
               吉岡 充弘 医学研究院長
 北海道大学医学部は、北海道大学の4つの基本理念である「フロンティア精神、国際性の涵養、全人教育、実学の重視」の下、「世界をリードする先進的医学研究を推進し、高い倫理観と豊かな人間性を有する医学研究者・医療人を育てることにより、人類の健康と福祉に貢献する。」をその理念として掲げ、「広範な医学知識、高い倫理観、豊かな人間性、国際的視野を備え、医学の進歩と医療の実践・発展に寄与する医師・医学研究者を養成する。」をその教育目標として定めている。以下に、北海道の特殊性と、さらには北海道大学医学部(卒前)・北海道大学病院(卒後)による医学教育における地域医療機関との連携について述べる。
 北海道は、日本全国の国土面積の20.7%を占める一方で、人口は我が国の人口のわずか4.2%を占めるに留まり、かつ、人口の36%が札幌市に集中するという状況にある。医療資源に関する充足度も、札幌圏とその他の地域で大きく乖離する二極化の現象が認められ、広大な土地に医師が偏在するという深刻かつ独特の問題を生じている。

 このような特殊性がある中で、北海道大学医学部での卒前医学教育として、これまでの大学病院を主体とした実習から、北海道全域に広がる教育研修病院を含めた複合型臨床実習へと発展させるべく、新カリキュラムに5年次コア科診療参加型臨床実習を導入した。医学部長をセンター長とする組織である医学教育・国際交流推進センターが中心となって、北海道内の第一線の病院(札幌市内22病院、札幌市外36病院[図])と協定を締結し、卒前の段階から北海道の地域医療を担うことの責任感と重要性について体感できる充実した教育プログラムとなっている。
 

 北海道大学病院での卒後初期臨床研修そして後期専門研修へと継続する医師育成方法についても特色がある。初期臨床研修では、「たすきがけ研修方式」が採用されており、北海道大学病院外での52週間の研修を道内全域に広がる68の協力病院で体験することができる。また、大学病院研修中においても、8週あるいは12週(選択コースによる)を上限に地域医療研修対象病院にて一般内科・外科、総合診療科の研修が可能なシステムを構築し、高度先進医療とプライマリケアをバランス良く研修できる体制を提供している。また、大学病院臨床研修センターでは研修医に対する指導医の指導能力向上をはかる目的で、「指導医講習会」を毎年開催し、平成30年度は地域医療機関から22名の指導医が講習を修了した。

 専門研修においても、新専門医制度に対応しつつ17基本領域において本学を基幹施設とする専門研修プログラムを有し、全道の連携施設と大学病院での修練を経て質の高い専門医を育成・輩出し続けることで北海道全体の地域医療を支え続けている。専門医の受け入れに関しては、大学病院以外の臨床研修病院で初期臨床研修中の研修医が数ヶ月間、本学大学病院で学ぶ「逆たすき研修」を随時受け付けている。平成30年度は45名の他院研修医がのべ85ヶ月間にわたり大学病院で高度先進医療の実際を体験しながら専攻を決定する参考にした。

 このような、北海道大学医学部と北海道大学病院が緊密に連携した、シームレスな卒前卒後の医学教育を行うことで、広大な医療圏を有する北海道全域の地域医療レベルの維持・向上という役割を担い続けている。