*第2回*  (H30.5.23 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は広島大学での取り組みについてご紹介します。

卒前卒後の医学教育における広島大学医学部と地域医療機関との連携
文責 : 広島大学医学部地域医療システム学講座
広島大学医学部
松本 正俊 寄附講座教授
秀  道広 医学部長
 広島大学医学部医学科では6年間の学部教育の中で多くの地域医療機関と連携を行っている。1年生の夏期休業中に行われる2日間の早期体験実習では医学部、歯学部、薬学部混成の5~7名の学生を一組として計24の地域医療機関に派遣している。3年生後期に4週間行われる社会医学実習においても一部の学生は地域の診療所、病院などで見学、調査活動を行っている。4年生前期に16週間行われる医学研究実習では、地域医療システム学講座に配属となった学生は中山間地の医療機関で実習を行う機会がある。
 4年生後期から5年生にかけて行われる臨床実習
においては、全員必修の実習として「地域医療」がある。これは2名1組の学生を県内中山間地の5病院(多くはへき地医療拠点病院)に派遣し、一週間泊まり込みで実習を行うというものである。各病院は医学教育モデルコアカリキュラムで規定された地域医療実習の目標と方略をくまなくカバーしつつ病院独自の教育要素を盛り込んでメニューを作成している。実習後は病院と学生の双方がお互いを評価し、学生からの評価内容は病院に毎年フィードバックしている。また優れた学生レポートに対しては表彰を行っている。毎年年度末には受け入れ病院の代表者が集まる連絡会議を大学で開催しており、各病院のノウハウを共有するとともにより良い実習に向けた改善策を話し合っている。

  平成29年度臨床実習(地域医療)学生アンケート結果 
 
 

 5年生後期から6年生前期にかけて行われる臨床実習は2~4週間の選択型実習であるが、県内の臨床研修指定病院を中心に多くの地域医療機関が選択可能である。これら受け入れ医療機関はそれぞれ独自の実習メニューを用意しているが、なるべく臨床参加型実習となるよう大学から依頼している。実習終了後は各医療機関の実習担当者が学生の評価を行う。臨床実習とも、受け入れ医療機関の教育責任者には臨床教授や臨床准教授の称号を付与している。

  臨床実習およびの受け入れ医療機関 
   

 これら医学科生全員に行う教育とは別に、ふるさと枠(地域枠)学生に対して独自の地域医療教育を行っている。夏期休業中にふるさと枠1~4年生全員を4名一組で中山間地の病院や診療所に派遣し、一泊二日の現地実習を行い、終了後は大学にて発表会を行う。冬期休業中も1~4年生全員で一泊二日の合宿を行っており、地域の医療機関の医師を講師に招いている。また春期休業中も1~4年生のうち希望者を1泊2日あるいは2泊3日で地域医療機関に派遣している。
 卒後教育については、広島大学病院卒後臨床研修プログラムにおいて県内13病院との間に「たすきがけ研修コース」を設置しており、臨床研修医の1年ごとの相互派遣を行っている(各病院定員2名)。また広島大学病院を中心に2年間研修する「多目的研修コース(定員33名)」においても自由選択科および地域医療研修先として県内25医療機関と連携している。さらに、これら受け入れ病院と大学病院の間では、毎年連絡会議を開いて指導内容の連携を行っている。

 広島大学は280万人の人口を有する広島県に存在する唯一の医育機関であり、県内の地域医療を守る責任を負っている。今後も地域の医療機関との連携を強化し、地域に根差した医学教育を推進してゆく所存である。