*第33回*  (2020.12.24 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は富山大学での取り組みについてご紹介します。

「卒前卒後の医学教育における国立大学医学部と地域医療機関との連携」
文責 :   富山大学医学部
足立 雄一 医学部長

歴史
 富山大学医学部は、富山県民の強い要望により1975年に富山医科薬科大学医学部として創設されました。その後、1993年に県内初の看護系大学として看護学科が新設され、2005年には旧富山大学ならびに高岡短期大学と統合され、新たな富山大学医学部として生まれ変わりました。富山大学では、国立大学法人の中期目標における基本的目標に「地域と世界に開かれた大学として、生命科学、自然科学と人文社会学部を総合した特徴ある国際水準の教育及び研究を行い、高い使命感と創造力のある人材を育成し、地域と国際社会に貢献するとともに、科学、芸術文化と人間社会の調和的発展に寄与する。」を掲げ、「『人』と『地』の健康を科学する大学を目指して教育ならびに研究を行っています(図1)。以下に、本学医学部における地域の医療機関と連携した卒前卒後教育の特色を示します。

  図1
 

特徴1 卒前教育から初期研修、さらに専攻医育成までシームレスに地域医療人を育成する「医師キャリアパス創造センター」の設置
 地域に貢献できる人材育成教育のために各講座における教育体制の強化、特に地域医療を6年間一貫して教育できる体制とカリキュラムを確立することを目的として、2016年に「医師キャリアパス創造センター」を開設しました。本センターは、医学教育部門(医学教育学講座)、卒後臨床研修部門(卒後臨床研修センター)、専門医養成支援部門(専門医養成支援センター)の機能を有機的に統合したものです(図2)。

 図2

医学教育部門では、卒前医学教育の企画・立案・評価および卒前医学教育に関する調査研究(IR)、学生支援・教育支援等を行っています。具体的な教育内容としては、1年時には「医療学入門」を開講し、その中で医学科・看護学科・薬学科と合同の多職種教育を行うと共に地域の医療/介護施設における介護実習を行っています。また、5年時前半には総合診療部の実習の一環として地域の医療機関で1週間の地域医療実習を行い、さらに5年時後半からの選択制臨床実習では、全員が24週間の実習期間のうち8週間は学生の希望に沿って地域の基幹病院の様々な診療科での臨床実習を行っています(8週間/病院あるいは4週/病院を2病院)。
 卒後臨床研修部門では、主に初期研修における各診療科の研修プログラムの企画・立案・広報活動および研修協力病院との連携調整、研修医に対する支援、研修リポート監査、臨床研修プログラムの評価等を行なっています。具体的な研修内容としては、研修医一人一人にメンターを研修医の希望に沿って若手医師から選びサポートしてもらい、地域の関連病院とのたすき掛け研修や、県内の医療機関ばかりでなく県外の離島や僻地における地域医療実習を行っています。
 専門医養成支援部門では、各専門医養成プログラムの整備・支援・広報や専攻医のリクルート活動および地域の連携病院間の調整等を行っています。具体的な活動は、下の特色2で述べます。
 本センターでは、これら3部門を統括して部門間の調整を行う企画室(マネジメント部門)を置いて、横断的なIR機能を強化し、FD企画運営や医学教育・医療技術シミュレーター管理等を行うと共に地域の医療機関と綿密に連携をとって上記の教育・研修がスムーズに運営されるように支援を行っています。その結果、卒前・卒後・専門医取得までの一貫した教育・研修が実践できる体制が構築され、富山県という地方でも大都市の大学や病院と同等あるいはより充実した研修ができることを学生に示すことによって地域医療に貢献できる医師が一人でも多く定着するよう努めています。

特徴2 地域医療人育成を担う富山県寄附講座「地域医療総合支援学講座」の開設
 富山県の医療を支える質の高い医師を増やすための支援と医師の不足した地域への医師派遣の支援をすることを目的として、2017年に富山県の寄附講座として「地域医療総合支援学講座」を開設しました。
 本講座では、富山県内の地域医療に関する課題を科学的に検証することで各公的病院が抱える医師不足や専門医の偏在などの状況を把握し、富山県全体でバランスの取れた医療体制を目指して、地域に根ざす人材育成支援と医師派遣体制の役割を担っています。具体的には、富山県の厚生部と協力して富山県の公立病院における医療の現状を調査分析し、そこで得られたデータを全ての公立病院の関係者と共有することで今後の医師派遣や専門医養成の目安としています。
 また、本学では、2007年度の入学試験より修学資金の貸与を伴わないが富山県出身者から選抜する「地域枠」を、また2009年度から富山県からの修学資金の貸与を伴う「特別枠(2018年度からは富山県出身者に限定した「富山県特別枠」へ移行)」を設けており、現在、1学年25名、6学年合わせると150名が上記制度で入学しています。彼らの入学時のモチベーションを維持しつつ優秀な人材に育てるために、本講座では、個人面談やキャリアパスガイダンスなどを年に数回行い、また内視鏡や外科手技のハンズオンや臨床推論勉強会を定期的に開催するなど、地域医療に貢献する人材の育成に努めています。さらに、本講座の教授が附属病院に専門医養成支援センター長を兼務し、初期研修医がどの専門領域に進むのかのサポートをしたり、後期専攻医の資格取得のための支援を行っています。

特徴3 多職種連携に基づいた地域医療機関との関係構築
 本学附属病院総合診療部では、2014年より「とやま多職種連携教育プロジェクト(とやまいぴー)を年4回開催しています。ここでは、本学附属病院や県内の医療機関の医療従事者や学生(医学/看護学/薬学ばかりでなく福祉関係の学部など)が集まり、グループに別れて事例検討を通して医療や福祉の実践について学んでいます。また、医学部では1年時に「医療学入門」を開講し、その中で医学科・看護学科・薬学科と合同の多職種教育を行う共に地域の医療/介護施設における介護実習を行っています。
 このような取り組みを通して、医学部ならびに附属病院が地域の医療機関と顔が見える関係を築きながら医学の卒前・卒後教育を実践しています。

まとめ
 富山大学医学部では、卒前卒後さらに専門医取得までシームレスで地域医療に貢献できる医療人育成を行うために、上記のようないくつかの特色ある組織づくりや教育システムを構築しており、ここ数年間では県内で50名前後が初期研修を行い、約同数が専門医取得に向けて後期研修を行っています(図3)。今後は、地域の病院ばかりでなく、クリニックや検診センターなど幅広い医療の現場など教育機会の拡充を図るように努めていきたいと考えています。

 図3