*第41回*  (2021.8.24 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は東京医科歯科大学での取り組みについてご紹介します。

卒前卒後の医学教育における国立大学医学部と地域医療機関との連携
文責 :   東京医科歯科大学
北川 昌伸 医学部長

【卒前教育】
 本学では2006年度の臨床実習改編以降、1週間の診療所実習(プライマリケア実習)を必須ローテーションとして設けていたが、2015年度に行われた臨床実習改編に際し、2週間に延長した。同実習は、大学病院では経験できない診療所医療、在宅医療、介護医療、地域医療、病診連携、専門職連携、地域健康維持増進活動などを経験することのできる大変貴重な機会であり、熱意をもって教育してくださる診療所施設の先生方のご好意のもとに成り立っている。これら施設は卒後臨床研修における地域医療研修の実施施設でもあり、異なる学習段階に渡り診療所医療・地域医療を学べる仕組みが構築されている。本学は附属医療機関を1つしか持っておらず、大学病院以外での診療参加・診療経験機会を提供するためには、関東地域における診療所や病院の皆様のご理解とご協力が必須であり、2015年度改編に際しては1軒1軒回ってお願いさせていただいたが、皆様教育に対する熱い思いを語られ、ご快諾くださったことを深く感謝している。その後年1回それら機関の皆様との連絡会議を開催し、お礼を述べるとともに本学臨床実習カリキュラムの進捗状況報告を行い、そして改善のためのフィードバックコメントをいただき、さらなるカリキュラム改善に役立たせていただいている。

 2015年度の改編ではまた、第6学年学生の必須ローテーションとして、学外医療機関での実習を主体とした精神医療プログラムと緩和医療プログラムが配置され、また同学年の選択ローテーション(全実習の80%)においては、様々な診療科が、学外医療機関と連携し、創意工夫を凝らして効果的な診療参加機会を提供している。これらも、本学臨床系分野と連携する学外医療機関の皆様の多大なるご理解とご好意、そして教育に対する熱意に支えられてこそ成り立っており、この場を借りて御礼を申し上げたい。


【卒後教育】

卒後臨床研修における地域医療機関との連携


 東京医科歯科大学附属病院の初期臨床研修では、たすきがけ制度を採用しており、大学病院と関東甲信越の協力病院をそれぞれ1年ずつ研修している。一次医療機関から三次医療機関までの全てを経験し、幅広い視点を養うため、プライマリケア研修から三次救急診療まで十分な研修の機会を設けている。プライマリケア研修では外来研修と在宅医療の双方を経験する。研修に先立ち、自身の目標設定の提出と、研修中の症例記録・チーム医療参加の記録を作成し、研修終了後に複数名の研修医で振り返りの機会を設けて、地域医療についての貴重な経験と学びを共有する取り組みを続けている。また研修2年目には秋田大学と島根大学と連携した交換研修を実施している。秋田・島根の研修医数名が東京の三次救急を経験し、本学の研修医のうち希望者は秋田・島根の地域病院に2ヶ月間派遣され、過疎地での地域医療について貴重な経験をする、いずれも大変人気のあるプログラムとなっている。

 また地域医療機関の指導医育成にも力を入れており、総合教育研修センターで毎年開催する指導医講習会では、50名の定員のうち、約3~4割は協力病院や施設の医師であり、その指導力向上に貢献している。評価ではオンライン臨床教育評価システム(EPOC2)も相互で利用し、大学病院と地域で緊密に連携を取りながら、研修医の育成を行っている。