これから研究医を目指す学生が自分を語ります。
*第23回*  (H26.5.30 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は富山大学医学部医学科5年 平田 陽子さんです。
   「研究医養成プログラムに参加して
                         富山大学医学部医学科5年 平田 陽子
  日本再生医療学会(2014.4 京都)ポスター発表(左が筆者)  
 私は現在再生医学教室にて研究医養成プログラムに参加させていただいています。そのきっかけとなったのは、3年生の2月に行われた基礎配属です。基礎配属でなぜ再生医学教室を選んだかというと、当時山中伸弥教授がノーベル賞を受賞したことで再生医学の分野に注目が集まっており、今後ますますの発展が期待できる分野であると考えたからです。また私自身が元々興味をもっていたこともあって、再生医学教室を選びました。
 基礎配属では、高親和性コリントランスポーター(CHT)遺伝子を導入した不死化ヒト羊膜上皮細胞(iHAE)を培養し、特性を調べるという実験をさせていただきました。先生方の手厚いご指導のもとで、細胞の培養から免疫染色、RT-PCR法など一連の実験手技や手法に触れることができました。基礎配属での実験がとても面白かったので、基礎配属後も研究医養成プログラムを通して再生医学教室で実験を続けさせていただくことに決めました。また、学生中に研究する機会を得ておくことで、将来の働き方や考え方の幅が広がると考え、研究医養成プログラムに志願しました。
 研究医養成プログラムでは様々なことをさせていただいていますが、ここでは①実験、②ミーティングへの参加、③学会発表の3つに絞って述べたいと思います。
 まず①実験についてです。具体的にどのような実験をしているかというと、コリン作動性神経細胞に発現するCHT遺伝子を導入したiHAEを神経分化培地で培養し、免疫染色やRT-PCR法を用いて神経細胞マーカーの発現を検討したり、増殖能や自発電位の測定などを行っています。これまでの実験の結果、CHT遺伝子を導入したiHAEは神経細胞様に形態変化し、神経細胞マーカーおよび神経細胞の遺伝子を発現することが明らかになりました。さらに自発電位を盛んに発しており、機能的にも神経細胞の性質を示すことがわかりました。このように細胞が神経細胞様の性質を有する細胞へと変化する様子を調べることはとても興味深く、面白いです。基礎配属の時より理論的背景など深く学ぶことができますし、自分自身で考えて実験を行えることが魅力です。先生方と相談しながら自分で実験計画を立てることができるので、テストや夏休みなども考慮しながら自分のペースで実験を行うことができます。自分で実験する分、細胞がコンタミしてしまうなどの失敗もありますが、先生や大学院生の方々にいつでも相談できる環境が整っており、十分なサポートのもとに実験を進めていくことができるのも魅力です。
 次に②ミーティングへの参加です。ミーティングでは二階堂教授をはじめ先生方や大学院生などが集い、それぞれの進捗状況を発表したり、最新の論文をシェアしたりしています。先生方からご指導いただけるだけでなく、大学院生などを含めみんなで意見を交わす場となっています。英語でプレゼンされることも多いため科学英語に触れることができますし、他の人の研究や最新の研究について知識を得ることができ、とても有意義な時間となっています。また自分が発表する際には、自分の実験についてアドバイスやご意見をいただけるほか、英語の論文を読み発表する練習にもなります。
 そして、実験してきたことを発表する場として③学会発表があります。私は2014年春に京都で行われた日本再生医療学会で、ポスター発表の機会をいただきました。このような大きな学会で単独で発表することは初めてで、準備の段階から戸惑うことも多かったのですが、二階堂教授や吉田准教授をはじめ研究室の皆様から温かいサポートを受け、何とか発表できるまでにまとめあげることができました。学会前には研究室のミーティングで発表の練習もさせていただき、そのおかげで学会本番でもあがることなく発表することができました。実験から学会発表へと一連の流れを経験できたことは、とても貴重な経験であり、勉強になりました。

 最後になりましたが、私は研究医養成プログラムに参加して本当に良かったと思っています。なぜなら、これまで述べてきたように、とてもサポーティブな環境のなかで自分一人では決して経験できない貴重な経験を積むことができるからです。単に実験の機会を与えていただくだけでなく、研究者として必要な知識や経験を幅広く得ることができ、しかもそれを学部生のうちにできるということは大変恵まれた環境だと思います。研究医養成プログラムを通して、将来の選択肢の幅は確実に広がりました。臨床だけでなく研究という選択肢を持つことで、より現場のニーズに柔軟に応えられる医師になれるのではないかと思います。このような貴重な機会を与えていただいた皆様に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。そして今後もさらなる研鑽を積んでまいりたいと思います。