これから研究医を目指す学生が自分を語ります。
*第25回*  (H26.9.30 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は広島大学医学部医学科MD-PhDコース 藤井 雅行さんです。
   
                    広島大学医学部医学科MD-PhDコース 藤井 雅行
   
 広島大学医学部医学科MD-PhDコースの藤井雅行といいます。医学部4年生の時にMD-PhDコースへの進学を決意し、医学科4年修了時より大学院博士課程に進学し、現在大学院2年生です。大学院を3年ないし4年で修了し、医学科の5年生に復学するというコースです。私は中学生のころ医学部に進学したいと思い、無事、広島大学医学部に入学することができましたが、学生時代に研究をするコースに行くとは考えてもみませんでした。
 大学に入学し、徐々に医学部の専門の授業も始まるようになったころです。先生の薦めである一冊の本を購入しました。Kierszenbaum著のHistology and cell biologyという本です。あまり組織学がわからなかったこともあり、英語でしたが、わかりやすそうな図がたくさんついていたので、思い切って購入し、学校での授業に合わせて家で読んでいました。非常にわかりやすい本でしたので継続して読み進めることができ、学校の授業もよくわかるようになりました。今思えば、この本が私にとっての、医学の扉を開けた最初の本でありバイブル的な存在となっています。それからはどんどん授業が面白いと思うようになり、授業や実習に積極的に取り組むようになりました。私は大学に入るまで医学がどんな学問なのか全く知らず、ただ医師になりたい、人の役に立ちたいとしか考えていませんでしたが、実は医師になりたいと思う前は、生物や科学が好きで学校の教師や研究者になりたいと思っていました。大学に入って解剖学や生理学など基礎的な医学部の授業を受けて、やっぱり自分は生物科学が好きだと改めて思うようになりました。
 徐々に研究室に見学にいったりするようになり、学部3年の春頃から、生理学教室で、当時大学院生だった留学生の研究を放課後に手伝わせてもらうようになりました。骨代謝に関わる蛋白OPGと腹部大動脈瘤の病態生理に関する研究でした。マウスのオペやqPCR、ウェスタンブロットなど基本的な手技を習い、また、4年のころからは発生学が専門の小久保先生に教わりES細胞やプラスミドも扱うようになりました。実験の手技を学ぶのが楽しくて通っていました。そうしているとある日、生理学の吉栖先生よりMD-PhDコースはどうかと声をかけていただきました。MD-PhDコースへ進学するかどうかは実際かなり悩みました。早く医師になりたいという気持ちと、研究にもっと時間を割いて取り組み何か結果を出したいという葛藤がありました。悩んだり人に相談したりしましたが、やはり研究は面白いし、他の人とは違うことにチャレンジしてみたいという気持ちを抑えることができず、進学を決心しました。また、ちょうど進学することを決心した直後、4年の後期に医学研究実習がありました。私はアメリカのマサチューセッツ総合病院の金木先生の研究室で4か月間研究留学をさせていただきました。アメリカで活躍されている日本人の研究者との交流もさせていただき、一層、MD-PhDコースで研究を頑張ろうと思いました。
 帰国後、すぐに大学院生としての生活が始まりました。研究テーマは心臓の発生におけるWntシグナルの関わりです。実験に加えて、論文紹介やディスカッション、研究会での発表、学会への参加といった機会をいただき、生物のダイナミックな発生メカニズムの勉強をしています。大学院に進学してもうすぐ1年半になりますが、研究をしているとあっという間に感じます。上手くいかないときに落ち込むこともありますが、文献を調べたりしながら少しずつ前進していけるように頑張っています。主に、マウスの胚を用いて実験しているのですが、発生過程で日々刻々と細胞がダイナミックに動き、臓器などの構造を構築していくのを観察すると、学部の時に教わったホメオスタシスとは異なるもっと動的な原理を見せつけられるようで、生物に対する考え方が少し変わりました。研究で実際に生物を観察すると教科書で学ぶのとは異なる見方や印象を得ることができます。やっぱり研究をして実際にいきものとその細胞の様子を観察したりしてみないとわからないことがたくさんあることを知りました。これはMD-PhDコースにきて一番よかったことだと思っています。これからも、もっともっと実験をして、生物の体の中で起こっていることに迫っていきたいと思います。
 これからのことは、まだまだ自分が何に興味を持っていくのかわかりませんが、医師としてもしっかりやっていきたいと思っていますし、同時に研究を続けしっかり人の体と向き合っていかないと病気や病態の本質を理解できないのではないかと思います。医師としても、研究者としても医学の進歩に少しでも貢献していきたいです。