これから研究医を目指す学生が自分を語ります。
*第37回*  (H28.10.24 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は鹿児島大学医学部医学科4年 石川そでみさんです。
 「研究に挑戦して得られたこと」
                       鹿児島大学医学部医学科4年 石川 そでみ
  シカゴでの学会発表  

 私は2013年入学の石川そでみです。2年生の春より桑木共之教授の下、統合分子生理学教室でお世話になりました。鹿児島大学では2年生前期より科目「自主研究」として1年半の研究室配属があります。基礎系の研究室にも関われるのは学生時代だけかもしれないと思い、視野を広げるためにも臨床の教室ではなく基礎系の教室を選ぶことにしました。もともと実験の授業は好きで、動物実験に興味がありました。研究室紹介において耳にした、柏谷英樹先生の匂い誘発性鎮痛というテーマを面白そうだと思いこちらの生理学教室への配属を希望しました。
 先輩方の先行研究の結果、ある匂い分子をマウスに曝露すると鎮痛効果を示すことが分かっていました。そこで私にまず与えられた課題はこの鎮痛がストレス誘発性鎮痛ではないことを示すものでした。マウスの匂い分子に対する嗜好性と忌避性を調べる行動実験を行いました。工作をしたり、実験環境を整えたりと、うまくいかない理由を考えながら、工夫し行動実験の基礎を学ぶことができました。また、1年次に統計学は履修していましたが、実際に自分で集めたデータを使って、適切な検定方法を選択して傾向を調べていくことで、知識だけであった統計を、使える統計に変えることができたと思っています。夏休みも含め空いた時間は自主研究に費やしました。12月、東京で自律神経生理学研究会に参加する機会をいただき、口頭発表を行いました。知識不足のため質疑応答では言葉につまる場面もあり、反省点が多く残りましたが良い経験になりました。
 次に頂いたテーマは、c-Fosの免疫染色を用いて、匂い分子の暴露により特異的に活性化される脳領域があるのか調べるものでした。還流固定や脳切片の製作、免疫染色等、また新しい手技を経験することができました。実験では、地道な作業を丁寧に繰り返すことが必要でした。何度も失敗してはやり直し、上手く出来ないことに嫌になる時もありました。期待する結果にはならないかもしれない、結果が出なかったらどうしようかと何度も不安に思いました。それでも、やると決めたのだからと脳地図と顔を付き合わせながら実験を続けました。
 大学の学生海外発表支援事業の支援もいただき、幸運にもシカゴで行われたSfN2015(10月16日~21日)に参加しました。生まれてはじめての海外で、私は非常に緊張すると共に国際学会の雰囲気に興奮していました。ポスター発表にはたくさんの研究者が足を運んでくださり、英語でコミュニケーションをとることが出来ました。研究者の方々は、私のゆっくりな受け答えでも耳を傾けてくださり、恐縮でしたがとても刺激的な時間を過ごすことができました。つたないながらも英語で自分の考えを伝えられたことに感動しました。大きな会場で多くのセッションが催され、世界中から集まったたくさんの研究者が議論を交わしている様子は本当にかっこよくて、正直なところ強く憧れました。アメリカで研究をされている日本人の研究者の方々ともお話をすることができ、その積極的な姿勢と大きなビジョンに、かっこいいなと強く感じました。まだ学生の自分に海外発表などできるのだろうかと不安でしたが、図々しく挑戦してみて良かったと思い、非常にインパクトのある素晴らしい経験となりました。

 こちらの研究室は非常に賑やかで、研究室の方々との交流も自主研究で得られたものの一つです。大学院生をはじめ、研究室のみなさんはいつでも私たち学生を歓迎してくださり、実験方法や発表準備まで多くの助言をいただきました。自分の実験をしながら先生方、先輩方の実験を見るのも、楽しみの1つでした。実験が上手くいかないときも一緒に考え、励ましてくださり、私もめげずに実験を続けることができました。また、麻酔科や救急の先生方も忙しい中、仕事の合間に基礎研究にも取り組んでいらっしゃることを知りました。生理学教室には学生にどんどん実験をさせてくれる環境があり、こんなこともさせてもらえるのかと初めは驚きました。知識も乏しく、もっと医学の知識を身につけてからでないと有意義な研究室活動はできないのではないかと思うこともありました。しかし、先生・先輩方に聞きやすい、自分の疑問を発言しやすい雰囲気があり、自分にもできることはたくさんあるのだという自信が持てるようになりました。研究はコツコツとした作業を毎日積み重ねていかねばならず、根気がいりますが、教科書に載っていないことを自分で考え発見していくことの面白さ、達成感を学びました。
 現在は科目の勉強のほうに時間を割いていて、実験に通えていませんが時間を作って、また研究を頑張りたいと考えています。自分も研究で医学に貢献することができるかもしれないという新しい可能性を知ることができました。
 最後に、統合分子生理学教室の皆さんをはじめ研究を通してお世話になった方々にこの場をお借りして感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。