これから研究医を目指す学生が自分を語ります。
*第54回*  (2019.10.25 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は東京慈恵会医科大学医学部医学科5年 藤田 由見さんです。

                    東京慈恵会医科大学医学部医学科5年 藤田 由見
  研究室にて、凍結組織切片を作成している様子  

【自己紹介】
 東京慈恵会医科大学医学部医学科5年の藤田由見です。本学のMD-PhDコースの一環としてユニット医学研究を履修中です。臨床医になりたく医学部に入学しましたが、本学での大学生活を通じて研究にも興味を持ちました。臨床実習と研究の傍ら、陸上競技部やJikei CPR(cardiopulmonary resuscitation,心肺蘇生法) study groupといった部活動にも取り組んでおります。

【ユニット医学研究への参加の動機】
 「地域枠で入学している自分は研究とは無縁だろう」「自分は研究に向いていない」、基礎医学を学ぶ当時の私はそう考えていました。ところが、三年生の研究室配属を通じてその考えは大きく変わりました。「自分で抱いた疑問に対して仮説を立て、実験を行って得られた結果を考察する」という一連の過程が難しくもあり、またその過程に時間をかけることに楽しみを感じている自分に気が付いたのです。研究を始めるまでは、大学の講義を受け教科書を読む中で、医学的な知識は増えても疑問を抱き自分なりに考えることが少なかったように思います。そんな私にとって、自分で考え実践するということはとても刺激的でした。その経験を通じて研究への興味が湧き、研究室配属終了後も臨床実習を行いながら、放課後や休日に研究室に通っています。さて、本学のMD-PhDコースは卒後臨床経験を積んでからでも履修が可能となっている点が一つの大きな特徴です。そのため、学生としては研究そのものを身近に感じることができるとともに、在学中にユニット医学研究を始める際に抵抗を感じない学生が少なくないように思います。本コースにおいて、在学中は臨床実習と並行して研究を行うことができ、また大学院への進学が卒後の臨床経験を積んでからでも可能であることは、学生がより自由なキャリアプランを想定することを可能にするとともに、私のように地域枠で入学し卒後まもなく臨床医として働くことになっている学生にとっても、研究をする機会を提供していただける大変貴重な制度であると感じています。

【ユニット医学研究での実績】
第135回 成医会 ポスター発表並びに優秀ポスター発表賞受賞
第124回 日本解剖学会総会・全国学術集会 口頭発表
 研究内容は、「ゼブラフィッシュの頭蓋縫合の形成過程におけるeven-skipped homeobox1evx1) 遺伝子の関与」についてです。ゼブラフィッシュの鰭の関節の形成に関与するevx1 遺伝子が新たに、ゼブラフィッシュの頭蓋縫合の形成に関与している可能性、ならびに頭蓋縫合における頭蓋骨の成長の調整に関与している可能性を見出しました。水中という重力に縛られない環境にいるゼブラフィッシュで頭蓋骨ならびに頭蓋縫合の研究を行うことで、重力の影響を受け陸上で生活しているヒトや哺乳類との対比をしながら、正常な頭蓋骨の形成過程についての何らかの新しい知見が得られることを目標に、今後も研究を継続していきたいと思います。

【ユニット医学研究に参加して思ったこと】
 はじめのうちは何から手を付けていいのかわからず、困惑の連続でした。しかし、研究室の先生方・職員の皆様方のご指導のおかげで、少しずつ実験の手法や論理的思考法に慣れていくことができました。試薬の調整や切片の作成といった基本的な内容から応用的な内容まで親身になって教えていただいたことには感謝しきれません。組織実習や病理実習で使用しているようなプレパラートの作成では、ただ作成過程を覚えればよいというわけではなく、組織に応じた調整が必要で、見やすい切片を作成することがいかに難しいかを身をもって体感しました。時間をかけて自ら作成した切片を、始めて学会発表の場で使用することができたときは、感極まる思いでした。特に大変だったことは、自分が研究を進めていくテーマに関する文献を探し、英語で論文を読むことでした。専門用語が多い何本もの英語論文を読み、その要点を指導教員の先生に伝えることは、不慣れな自分にとっては時間と労力のかかることでした。また、学会発表を通じて、自分の中ではわかっていることを専門知識のある人にもない人にも、わかりやすく伝えることがいかに難しいかを身をもって感じることができました。
 病院での臨床実習を行っていくうえでこれら研究を通じて得られた経験が臨床の現場でも欠かせないことがわかりました。目の前の患者さんの身体で何が起こっているのか、またそれはなぜなのかと常に疑問に思うことに始まり、論文や成書を通じて理解を深め、病態の把握とより良い治療のために考察すること、そしてそれらの内容を先生方や患者さんにわかりやすく論理的に説明することの重要性を日々感じています。このように、研究を通じて医学を様々な視点から捉えるようになり、医学の奥深さを改めて感じました。

【将来への抱負】
 在学中は臨床実習の傍ら、卒業するまで研究を続けていきたいです。地域枠で入学しているため、卒後は臨床の道に進むことになりますが、ユニット医学研究での経験を活かし、将来的にも研究に携わりたいと考えております。