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今回は金沢大学での取り組みについてご紹介します。

金沢大学における研究医養成の取り組み
文責 :  金沢大学医学類副医学類長
金沢大学附属病院 卒後臨床研修センター長
医薬保健研究域医学系 血液情報統御学教授
和田 隆志 先生

【はじめに】
 生命の基本原理の解明を目指す基礎医学研究者および疾患の成り立ちや新しい治療法を研究する臨床医学研究者(研究医)の育成は、医学・医療の進歩発展に不可欠です。したがって、研究医育成は金沢大学医学類の重要な使命であると考えています。本学医学類では、平成24年度からメディカルリサーチトレーニング(Medical Research Training: MRT)プログラムを開始し、研究に関心を持つ医学類生が研究室で研究活動に参加しています。

【MRTプログラム】
1)プログラムの概要
 本プログラムは平成24年から開始されました。このプログラムにより、医学類学生時より医学研究に参加することによって、最先端の医学研究を体験して医学の理解・研究への関心を深め、将来研究者をめざすモチベーションを涵養したいと考えています。本プログラムの目的は、①次世代の医学研究者や医療人のリーダーの育成、②学生が積極的にかつ自由な発想で学べる環境作り、③「勉強」から「探求」への意識改革です。少人数ゼミ、研究活動、英語クラスの開催等を通して、生命の基本原理の解明に取り組む“基礎医学研究者”や、病気のメカニズムの解明や新しい治療法を開拓する“研究医”の育成を実践しています。

2)MRTプログラムのカリキュラム
 本プログラムの最大の特徴は、医学類学生に潜在的には広く存在している医学研究への関心・参加意欲を掘り起し、それを健全に育成する手助けとなる新しいシステムを提供することです。そのために学生が研究室に参加しやすい新しいシステムを作り、受け入れ教室の教員の熱意と工夫により、学生の修学や研究に対するやる気を支援・促進するプログラムを作成しています。本プログラムの内容の周知と参加への意欲を喚起するねらいで「Medical Science入門」を年間を通じて開講しています。以下に本プログラムのカリキュラムを示します。

   

 本プログラムの主体は、「研究活動」と「少人数ゼミ」からなります。通常の医学教育カリキュラムと並行してプログラムが進行することが特徴です。
 研究活動において、学生は1−3年次のどの学年からも参加可能です。学生は興味を覚えた研究領域を見いだして主体的に研究室を決定し、研究を開始します。現在の登録研究分野(研究室)数は43になります。学生は希望の研究分野主任に直接相談し、所属する研究室を決定します。遅くとも、第3学年夏季休暇前(7月)までに研究室を決定します。この際、MRTプログラム担当教員および上級学年のMRTプログラム参加学生が“研究室さがし”の手伝いをします。
 少人数ゼミは、各研究室の最新の研究成果をわかりやすく説明するリサーチゼミと、英語によるプレゼンテーションとディスカッション能力を磨く、英語コミュニケーションゼミからなります。Native English speaker の教員による少人数の医学英語クラスに参加しています。医学英会話、プレゼンテーションとディスカッションを通して、使える生きた医学英語を楽しく習得しています。 さらにメディカル・イノベーションコースと連携し、約2週間に渡る米国ニューヨーク・プレクラークシップ海外医学研修へのサポートも実施しています。なお、本プログラムは文部科学省 未来医療研究人材養成拠点形成事業「第三の道:医療革新を専門とする医師の養成」(メディカル・イノベーションコース)と連携しています。
 当初、MRTプログラムは、医学類学生の課外活動と位置づけ、医学類の正式科目ではありませんでした。その後本プログラムが徐々に学生に浸透し、参加学生が増えてきたこともあり、平成27年度から医学類の正式科目(選択科目)として、単位認定を行っています。
 プログラム参加学生は、6年生末までに研究成果をまとめて、MRTプログラム修了認定申請を行います。修了と判定された場合には、卒業時に修了証書が授与されています。

3)MRTプログラムの学生が行う主体的・自主的な活動
 平成27年度には1−6年生で約70名の学生がMRTプログラムに参加しています。学生自身が専門書や学術論文を選定し、役割分担を決めて実施するセミナー形式の「勉強会・論文抄読会」、研究活動をまとめて発表する「研究発表会・リトリート」を実践しています。本プログラムを開始して以降、学内リトリートを春と秋の年2回のペースで開催し、すでに計5回開催しました(写真は第2回と第5回の学内リトリート)。さらに、関東大学研究医養成コンソーシアムやMD研究者育成プログラム全国リトリートにも積極的に参加し、他大学との学生とも連携、交流をしています。また、教員もこの合同リトリートに参加することにより、各大学での研究医養成の取り組みに触れることができ、重要な情報交換の場となっています。

4)今後の展望
 本プログラムを開始して3年あまり経過し、平成27年3月に初めてプログラム修了生が出ました。学生時代に本プログラムに参加した学生の中から、将来研究医を志す方が多数出てくることを期待しています。このほかに、金沢大学医学類では学類・大学院一貫コース(MD-PhD コース)も設置されています。医学類4年次終了後に、大学院医薬保健学総合研究科(基礎医学系の研究分野) に入学して大学院を修了(博士の学位を取得) します。その後、医学類5年次に再入学して、医学類を卒業(医師国家試験資格を取得) するコースです。現時点ではこちらはふるわず、このコースをとる学生はまだでていません。

 
 

【終わりに】
 これらのプログラムを通じて、生命の基本原理の解明に取り組む“基礎医学研究者”や、病気のメカニズムの解明や新しい治療法を開拓する“研究医”など、次世代研究者人材育成につながることを期待しています。

金沢大学医学類HP : http://www.med.kanazawa-u.ac.jp