*第57回*  (2020.4.28 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は金沢医科大学での取り組みについてご紹介します。

「金沢医科大学における研究医養成の取り組み」の紹介
文責 :  金沢医科大学
金沢医科大学大学院
川原 範夫 医学部長
岩淵 邦芳 医学研究科長

【医学部編】
                               
医学部長 川原 範夫

~はじめに~
 金沢医科大学は、「良医を育てる」「知識と技術をきわめる」「社会に貢献する」という建学の精神のもと、学生の皆さんが恵まれた環境、充実した設備を十分に活用し、良き師、良き友と出会い、互いに切磋琢磨し、医学知識と医療技術を修得し、豊かな思考力、良識に基づいた判断力、確固とした倫理観を持った「人間性豊かな良医」の育成を通して社会に貢献することこそが、本学の教育の最終目標であり、大学の理念の実践であり、本学の社会的使命であると考えております。現在の本学医学部のカリキュラムでは、研究医育成に特化したコースや研究室配属の制度はありませんが、科学研究へのアプローチやアウトプットの方法について、第1学年の3つの科目および第3学年において学習する機会を設けております。

~カリキュラム編成では~

 「大学基礎セミナー」は、医学的な問題の解決を図るグループ学習を中心とし、それに必要な調査・要約の基本スキルを習得する導入学習、課題学習の成果を論理的に再構築し、グループ発表するプレゼンテーション学習の3つから全体が構成され、これらを段階的に履修することにより医学生として科学的思考ができるための基礎的な態度、技能、知識を身に付け、相手に分かりやすく情報を伝達する口頭発表がスムーズにできることを目的として開講しております。
 「アカデミック・スキルズ」では、自らの発想で医学的な課題を見つけ出し、原著論文などを読みながら実際に医学論文執筆をおこなうことを通じて、論文の正式な書式や剽窃の危険性等の基礎知識を学びます。また、講義テーマについて学生同士で議論を行い、人の話をよく聞き、自分の考えを言葉にして伝えるという、論理的な文章を書いていくためのトレーニングを行います。さらに、将来カルテや論文で必要となる人体部位のデッサンについて、プロの画家を招いて描画の練習も行っています。(特別講義 メディカル・ドローイング)。最終講義ではポスターを作製して発表し、お互いの投票により優秀発表を決めます。

 「クリティカル・シンキング」では、臨床・研究に必要な「気づき」や「疑問」を大切に、映像資料や読書資料を用いて他の学生とのオープンな対話を可能にし、「根拠を持って考える」思考プロセスやコミュニケーションの推進を目的にしています。
 「医療プロフェッショナリズム
」では研究プロジェクト(グループ)を作成し、教員のサポートを受けながら、研究計画の立て方や研究デザインに応じた医学統計、Web文献の検索方法を学び、より実践的な発表資料(パワーポイント・ポスター)を作成します。優秀プロジェクトには日本医学教育学会などでの発表の機会を提供しています。

~課程教育を超えて~
 カリキュラム外では、各講座から、夏季休暇期間を利用したセミナーや研修、臨床トレーニング又は研究補助等の特別プランを募集し、毎年バラエティに富んだ演習や実験、研究の機会を学生に提供しています。希望学生は期間中自由に参加でき、大変好評を得ております。
 また、平成27年度から医学部学生の研究マインドを育てるため、研究活動を行う学生を支援する「金沢医科大学スチューデント・リサーチャー・プログラム」を設けました。希望学生に対し、年間を通して実験や研究に参加する機会を提供しております。場所・器具・ノウハウや学会発表活動を提供・支援する講座に対して研究費用を支給し、該当学生には学会参加時の旅費を補助しております。毎年約6プログラムを採択し、10名程度の学生が約1年間研究を行います。場合によっては2~3年に渡って1つのテーマにじっくり取り組む学生もおります。平成30年度は第6学年の学生1名が第107回日本病理学会総会で発表し「学生発表賞」を、また、第5・6学年の学生3名が第114回日本精神神経学会学術総会の学部学生演題部門において「優秀発表賞」を受賞するなど、各学会において研究の成果を発表し、高い評価をいただいております。
 今後も、各種取組みを通じて研究に興味を持つ学生に少しでも多くの機会を提供できるよう努めてまいります。



【大学院医学研究科編】

                           大学院医学研究科長 岩淵 邦芳

~はじめに~
 医学研究科の生命医科学専攻は、基礎医学と臨床医学が融合した3つの専門分野(生体機能形態医学分野、生体制御医学分野、健康生態医学分野)に大別され、それぞれがさらに専門科目(合わせて47科目)に分かれています。現在、約100名の担当教員が各専門科目で指導にあたり、学生は、指導教員のもとで広く知識を修得し、最先端の研究に従事することで研究能力の涵養に努めています。

~カリキュラム編成では~
 専門科目では、領域にこだわることなく関連科目が協力し、さらに国内外の研究機関の協力も仰ぎながら、広く学際的な研究を進めることを推奨しています。1年次に専門科目、共通科目の講義を履修し、あらかじめ専門分野、関連分野の知識を修得したうえで、2年次から特別研究を開始することとし、特別研究開始時から指導教員が充実した研究指導を行いやすいよう配慮しています。
 特別研究は、科目担当の研究指導教員の指導のもと、特定の研究テーマを設定し、専門科目、共通科目で修得した知識・技術を応用して行います。論文作成の指導は、主科目担当の指導教員が主導的立場で行いますが、副科目として履修する科目の担当教員も副指導教員として研究指導を補助するという複数指導体制をとっています。学生は、主科目担当指導教員、副指導教員と相談のうえ、2年次初めに研究テーマを設定します。その後、指導教員に随時助言をもらいながら、4年間の課程内での博士論文作成を目指します。
 高齢化が進む現代において必要とされる、がんや認知症を専門とする医療人を育成するため、文部科学省補助事業「超少子高齢化地域での先進的がん医療人養成(北信がんプロ)」、同「北陸認知症プロフェショナル医養成プラン」による、がんおよび認知症専門医養成系コースを設置しました。これらは、複数の医科系大学が共同で取り組んでいるプログラムで、最先端のIT機器によるテレビ会議やe-Learningのシステムを使って講義・演習が行われています。

~学部学生に向けた新たな取組み~

 学生の受入れに関しては、社会人を受け入れるため、昼夜開講制を2006年度から導入しました。さらに、初期臨床研修2年次から入学できる制度を2013年度から実施しています。また2020年度から、学部在学生が大学院の授業を履修できる早期履修制度を導入する予定です。この制度は、大学院進学へのモチベーションを高め、大学院入学後に研究活動へスムーズに移行させることを目的としたものです。