*第51回*  (H28.10.24 UP) 前回までの掲載はこちらから
地域医療を支える国立大学医学部の役割トップページへ戻る
今回は琉球大学での取り組みについてご紹介します。

琉球大学医学部における地域医療人育成の取り組みについて
文責 : 琉球大学医学部附属病院
沖縄県地域医療支援センター副センター長・特命准教授 
川妻 由和 先生

 琉球大学医学部においては、昭和56年度の学生受入開始当初から地域医療人教育への取り組みが行われ、これまでに地域医療を担う多数の人材を輩出してきました。その結果沖縄県の医師数は年々増加し、人口10万人当たり250.0人(平成26年医師・歯科医師・薬剤師調査)と全国平均244.9人を上回るものの、県庁所在地を含む南部医療圏に304.6人と集中し、中部194.5人、北部191.3人、宮古191.5人、八重山178.5人と地域偏在が解消できていません。特にへき地離島である北部、宮古、八重山では、基幹病院勤務医師の大部分を県外からの派遣に依存している現状があり、専門診療科の偏在解消を含む長期的視野に立った医師確保が重要な課題となっています。

 平成26年度琉球大学医学部附属病院内に、医師の地域偏在解消を図るため沖縄県の委託事業として、沖縄県地域医療支援センター(以下センターとします)が設置されました。センターは、センター長(病院長が併任)、専任医師(定数2名)、専従事務職員(3名)の体制で、①医師不足状況等の把握・分析 ②医師不足病院の支援 ③地域医療に従事する医師のキャリア形成支援 ④情報発信と相談への対応 ⑤地域医療関係者との協力関係の構築 ⑥新たな専門医の仕組みの構築支援などの事業、特に琉球大学医学部地域枠学生および卒業生、ならびに沖縄県医師修学資金等被貸与者の育成およびキャリア形成支援に重点的に取り組んでいます。さらにセンターは、政府の「経営財政の運営と改革の基本方針2015」に位置づけられた「国際医療拠点」の中核を担うために策定された「琉球大学医学部および同附属病院移転整備基本構想(以下基本構想とします)」において、県内の地域医療確保の拠点と位置付けられています。

 沖縄県では地域枠に先がけ平成19年度より琉球大学医学部医学科生を主な対象に医師修学資金等貸与事業が開始され、平成27年度現在で36名が貸与を受けました。しかしながらそのアウトカムを調査すると、離島へき地勤務(以下勤務とします)修了者は4名(全員が琉球大学所属)に対し、勤務未了の修学資金返還者が8名にも上る危機的な状況でした。勤務予定医師および所属機関等との対話を重ねた結果、幸い平成28年度は返還者なく、初の学外所属医師を含む4名の勤務が実現しました。また各個人の強い意志にも関わらず勤務に至らなかった事例が少なからず存在することが分かりました。対話を重ねることにより阻害要因を減らしつつ勤務をキャリア形成に生かせる支援策を見出し、関係各機関の立場を超えた協力を得ることが勤務実現の要と考え、このよい流れを今後地域枠制度に続けたいと考えています。

 琉球大学医学部では、平成21年度より推薦入試II(地域枠)として7名を増員、平成22年度より一般入試合格者5名を追加し1学年12名とし、平成25年度には12名全員を推薦入試とし、平成27年度より北部離島枠3名を含む17名に増員しました。卒業生および学生の合計は平成28年度現在合計101名です。なお地域枠学生全員が6年間沖縄県の医師修学資金の貸与を受け、知事が指定する研修病院で臨床研修および専門研修を修了後直ちに知事が指定する医療機関<図1>に4年間勤務した場合に債務が免除されます。

   
  <図1 : 沖縄県知事が指定する医療機関>
 地域枠学生に対しては、入学時より臨床研修および専門研修を経て勤務開始まで約10年、勤務修了まで約15年という長期的展望に立ち、卒前卒後一貫したキャリアプログラムを作成中です。卒前教育では、医学教育企画室と連携し、一年生の間に県外を含む離島へき地での早期体験実習<図2>を3回実施し、各々に参加型学習やアクティブラーニングの手法を取り入れた事前および事後学習会ならびにeポートフォリオを使用した振り返りにより学習を深める習慣を身につけ、コアコンピテンシー指導により短期間での成長が難しい感情、意欲、態度を含めた非認知領域の学習支援を試みています。また基礎医学教育の段階よりClinicalKeyなどの電子媒体を活用し英文教科書での学習に習熟しスマートフォン等でいつでもどこでも最新かつ国際水準の医療情報に触れることのできる環境を提供し、勤務時や産休育休時にも継続して知識をUpdateするトレーニングを開始しています。さらに、学生や若い医師に勤務の素晴らしさを感じる広報誌「ムルウチナー」を定期的に刊行、勤務を経験した医師による講演会を開催し、勤務がキャリア形成に対しマイナスではなくプラスに働くことを実感してもらう機会を提供しています。卒後は、臨床医学系各講座のご理解とご支援の下、新しい専門医制度に対応し、県内中核病院と離島へき地の医療機関を交互にローテーションし、基本19領域中18領域の専門医資格が取得可能で、地域においてニーズが高い特定領域のサブスペシャリティ―専門医取得も可能なプランを作成中です。

 このキャリアプログラムを通じ、学生が理想の医師像に「自ら気づき」「考え」「近づく」習慣を低学年より時間をかけて涵養し、赴任した地域それぞれにおいて地域住民のニーズを尊重しつつ最新の医学論文やガイドラインを常に参照する姿勢を身につけ、地域住民から信頼されかつグローバルにも通用する志高い地域医療人を育成し、同時に地域医療の向上を図ることを目標としています。

   
  <図2 : 地域枠1年次高知県地域医療実習(平成28年3月)>