*第64回*  (H29.11.24 UP) 前回までの掲載はこちらから
地域医療を支える国立大学医学部の役割トップページへ戻る
今回は浜松医科大学での取り組みについてご紹介します。

浜松医科大学における地域医療教育
文責 : 浜松医科大学学長 今野 弘之 先生
●はじめに
 浜松医科大学は、静岡県内で唯一医学部を設置している大学である。そのため地域医療を担う優れた医療人を育成し、最善・最高の医療を提供し地域医療の中核的存在となることを使命の一つとし、医学教育に積極的に取り組んできた。
 静岡県は東西に長く広がっており、県東部地域や中東遠地域は拠点となる病院も少なく、医師不足が問題となっている。また、県内の各医療圏では専門医の偏在もあり、この解消に向けての取組みも重要な課題となっている。そのため本学では、地域で活躍できる医師を育成すべく、地域医療に関する教育の充実と研究体制を確立し総合診療教育センター及び卒後教育センターを設置し、臨床実習体制や環境を整備するとともに卒後の教育システム構築を進めている。

 さらに、新専門医制度の地域への影響を調査しながら、各医療圏で求められている医師の育成に取組むこととしている。

●浜松医科大学と地域医療
 静岡県は人口も多く、多くの医師を必要としている現状であるが、医師を養成する医学部を持つ大学は本学のみである。近年、本学の卒業生の内、60%を超えて静岡県に就職し、さらに、後期研修医の数も年々増加してきている。

 こうした状況を踏まえて、本学は県と連携しながら地域医療構想の実現に向けて一層の協力を行い、各医療圏で必要とされる専門医の育成に取組んでいる。

 また、総合診療医については、静岡県中東遠地域の3市1町(磐田市、菊川市、森町、御前崎市)からなる静岡家庭医養成協議会と連携し、静岡家庭医養成プログラムの運営に寄与し、地域医療への貢献に努めている。

 本学の地域家庭医療学講座は、静岡県の寄附講座として平成25年11月に開設され、地域医療、特にプライマリ・ケアや家庭医療に関する教育の充実及び研究体制を構築し、地域で活躍する総合診療専門医の育成を通して、静岡県内の地域医療の充実に向けて貢献することを目的とし、長期的には、講座の研究・教育・社会貢献活動を通し、診療・教育・研究・診療所運営・地域健康増進といった複数の側面で活躍できる家庭医・総合診療専門医のキャリアパスの確立に取り組むことを目指している。

 また本学に平成28年4月に設置した総合診療教育研究センターは、学部学生の教育、附属病院の初期研修プログラム、専門研修プログラムの総括、管理、運営、教育・研究の支援、推進体制・指導体制・地域との連携や調整を行っている。


●地域医療への今後の取り組み

 地域における専門医の偏在(各医療圏のニーズと専門医のミスマッチ)や、県東部に連携病院が少なく基幹プログラムも少ないことからくる医師不足の問題を解消するためには、対象地域毎のニーズ調査や分析を通して、必要な専門医を育成し、各医療圏で必要とする拠点を整備し、地域における研修体制の充実を図るとともに行政と連携してネットワークを確立することが必要である。

 本学は、学長が静岡県の地域医療構想会議のコアメンバーとして、実際に将来構想案を提案するなど、積極的に地域医療構想の策定に関与している。行政と大学が一体となり、支援する各地域の現状・課題及び将来の医療需要の予測等を踏まえつつ、将来のあるべき医療提供体制の方向性を決定していくことで、ニーズに応じた地域医療支援が行えるであろう。

 地域で求められる医師(専門医)の育成、各医療圏のニーズに応じた専門性の再教育機会の提供、行政や医師会等との連携による地域医療体制の支援、これらをうまく循環させていくことにより、よりよい地域医療支援を行っていく予定である。

 また、総合診療医に関しては、地域でのプライマリ・ケアができる医師を育成し確保するため、自治体と連携して、医学部低学年、高学年、初期研修、専門研修、大学院までの一貫した教育研究体制を整備し、日本の総合診療医育成モデルの構築をさらに進めていく。

 今後は、静岡県の地域医療と臨床教育の中心的役割を担うべき大学として、スタッフや施設設備を充実させ、地域との連携をさらに深め、より一層の機能強化を進めていく。