これから研究医を目指す学生が自分を語ります。
*第20回*  (H25.11.18 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は愛媛大学医学部医学科4年生 西岡 龍太郎さんです。

愛媛大学医学部医学科4年生 西岡 龍太郎
   
 愛媛大学医学部医学4年生の西岡龍太郎です。私が田中潤也教授のご指導のもと分子細胞生理学教室にお世話になり始めて、1年半が過ぎようとしています。
 もともと医学部に入学したきっかけは、祖母の癌治療の看病をしている際に医師という仕事の素晴らしさに触れ、臨床医になろうと思ったことからでした。医学部入学以前から基礎医学や研究医の存在自体は知っていたものの、正直に言うとまったく興味はなく、自分には縁のないものだと考えていました。入学後も、特に研究に興味が湧くこともなく、だらだらと毎日を過ごしていました。
 転機になったのは、3回生の春に友人に実験を手伝ってほしいと言われたことです。その頃は、基礎配属の授業開始を目の前に、いかに実験をしなくてもいい研究室に行くか考えている日々でした。そんな中で実験を手伝わせていただいたとき、教室の先生方が楽しそうに実験をしていて、田中先生に「ここで実験してみたら?」と一言をいただいたので、何かの縁だしやってみようかなと軽い気持ちでお世話になることを決めました。
 春から実際に実験手法を教わり、夏前には『脳梗塞後の運動療法の効果』という研究テーマをいただき、『自分の研究』が始まりました。当時愛媛大学では、三年次の午前は講義、午後は基礎配属という時間割がほぼ一年続くというカリキュラムだったので、学部生でも非常に研究がしやすい環境だったと思います。このころから講義が終わったら、研究室に行き、時間が許す限り実験するという生活が始まりました。
 研究が動き始め、大変でしたがラットの脳梗塞モデルが少しずつ作れるようになり、サンプリング、リアルタイムPCR、免疫染色など基本的な実験手法を覚え、最初に感じたことは自分にでも基礎研究ができるかもしれないということでした。このころは新しいデータが出るのが楽しくて、今後の実験の展開が楽しみでした。そして、データが揃いはじめたころ、サンプル数が増えるにつれ、各データの差が無くなっていき、本当にこの実験がうまくいくのだろうかと不安を感じたのを覚えています。この時は、指導教官であった助教の杉本先生や田中先生のおっしゃることを信じて、ひたすら実験を繰り返しました。この時、唯一差が出たのが、今、私の研究の中心テーマとなっている、脳浮腫についてです。
 このころが11月くらいだったと思うのですが、ちょうどこの時大学で「医学科大学院からの基礎研究医養成プログラム」が始まりました。具体的には、研究活動を行っている学部学生に学生研究員としての身分を与え、研究活動や学会発表などのサポートを行う制度で、私としては責任を持って実験に取り組む良いきっかけになったと同時に、初級研究員から中級、上級研究員へとステップアップしたいと、研究活動において分かりやすい目標を持つことにもつながりました。
 基礎研究を始めて一番良かったことは実際に基礎医学に触れ、研究医のやりがいや面白さを知れたことにあると思います。冒頭でも触れたように、研究にまったく興味のなかった私がなぜ研究を続けられているかといえば、単純に研究活動を面白いと感じているからです。また、学会発表などで様々な大学の先生とディスカッションをし、意見を交換する機会が多くありますが、実験に関する貴重なご意見を頂けるとともに、自分なんかがすごい研究をやらせてもらえていると実感するときでもあります。
 今後は、自分の研究を形として残すために論文が書けるまで、実験をすることを第一の目標とし、その後も時間の許す限り実験を進めていきたいと思います。
 自分の一年半の活動を振り返ってみて、本当にいい大学と研究室に巡り合えたと感じています。私の研究活動を支えて下さっている田中先生をはじめ、分子細胞生理学教室の先生方、愛媛大学の先生方にこの場を借りて御礼申し上げます。学生研究員のプログラムには、私のような研究に興味のなかった学生が、基礎研究に触れ、興味を持つことにも意味があると感じていて、今後ますます多くの学生が研究活動の面白さに触れてもらえればと思います。