これから研究医を目指す学生が自分を語ります。
*第4回*  (H24.3.7 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は東北大学大学院医学系研究科 前田 恵さん、 藤田 剛さん、 光齋 久人さんの3名です。
1.東北大学大学院医学系研究科MD-PhDコース修了生の体験談

   
前田 恵 (平成20年3月大学院医学系研究科博士課程修了、平成22年3月医学部医学科卒業)
          (現:東北大学病院初期臨床研修医)

左が前田さん

 私がMD-PhDコースへの進学を選択したのは学部3年次にある教育カリキュラムの一環“基礎医学修練”において分子薬理学教室で研究の一端に触れたのがきっかけでした。当時臨床医という選択肢しかなかった私にとって、初めての基礎研究の実際と、未知なる領域を「研究」することの面白さを知ったことは、人生の転換期だったと思います。学部4年で同期とはなれ、大学院博士課程に進学。大学院時代はどっぷり分子生物学の研究生活に明け暮れ、東北大学21世紀COEプログラム“CRESCENDO”のRAとして3年間研究プロジェクトに加わる他、国内研究会・学会さらには、国際学会での発表の機会にも恵まれました。結果のついてこない、ゴールの見えない毎日の研究生活は非常に厳しいものでした。しかし20代前半で研究に打ち込める機会を得、また様々な分野において若手研究者が率先して活躍する世界に踏み入ることができたのは、このMD-PhDコースに進学したからこその経験であったと思います。博士学位論文が国際誌に受理され(Biochem. Biophys. Res. Commun. 369, 603-608 (2008))、修業年限短縮が認められ3年間で学位を取得することができ、再び学部に戻り医学生として臨床実習に加わったときには、これまでとは全く違った視点で臨床に接する事ができたのを覚えています。臨床医学は過去の研究の成果が積み重なって構築された賜物であり、まだまだ解明すべき課題が多く残っていると実感しました。臨床医学に基礎研究は必要不可欠であり、臨床に根ざした研究がしたい、大学院の時以上にそう思うようになりました。
 現在私は東北大学病院初期臨床研修医として臨床の現場に出ています。臨床医学においても、基礎医学と同様、様々な分野・疾患において病態の解明が行われており、それに基づいた新たな治療戦略が次々と生み出されています。多くの疾患がある中で、私は特に心筋虚血性障害と心不全の病態・治療に関心を抱き、循環器領域に進むことを決めました。研修後は最先端の心筋再生治療を積極的に開発しているOttawa Heart InstituteにResearch Fellowとしての派遣が決定し、今後も医師-研究者として医療に携わっていきたいと思っています。若い時代に基礎研究に没頭できたあの期間は、とても重要だったと思います。
 多くの患者さんと出会い、触れあっていく中で、人の生命(いのち)に少しでも手を携えることのできる医師という職業につけたこと、このコースの中で多くの尊敬する研究医、臨床医の先生に出会えたことは心から幸せだと感じています。

     
   2.東北大学大学院医学系研究科研究医コース(MD-PhDコース)在校生の体験談(1)
      
         藤田 剛(博士課程研究医コース(MD-PhDコース)1年、医学科5年次在籍中)
 
   
藤田さん
 
   私はHIVの克服ということに興味を持ち医学部に入学したためMD-PhDコースにはもとから興味を持っていました。そのような中で基礎修練では柳澤教授のもとでご指導いただき、研究室の多くの先生方に繰り返し相談に載っていただいたことでコースに入ることを真剣に考えるようになりました。また、やはりHIV/AIDSはまだ完治することができない病気であり、少しでも早くよりよい治療に向けて自分ができることをしたいと思ったことが一番の決め手であったと思います。
 また、私は将来研究者として仕事をしていきたいと考えていますが、果たして自分は身を立てていくことができるかということが不安だったので、その試金石としてMD—PhDコースに進んでみようと思いました。
 実際に大学院生として実験を開始してからは、すべて自分次第であることの喜びとそれよりもはるかに大きい不安を感じながら、知識や手技の面で周囲の人々に早く追いつこうとひたむきに努力し続ける毎日です。焦燥感もありますが、幸い面白い実験結果が得られ充実感を持って大学院生活を送っています。
 12月からはハワイ大学のAIDS研究センターに交換留学させていただいています。英語圏で生活することはもちろんですが、HIV研究の最前線に身を置くことができとても刺激的な毎日で、頑張らなければいけないなと日々自然と奮い立たされます。今後はT細胞のexhaustionについて研究をする予定です。
 
     
   3.東北大学大学院医学系研究科研究医コース(MD-PhDコース)在校生の体験談(2)
      
       光齋 久人(博士課程研究医コース(MD-PhDコース)1年、医学科5年次在籍中)
 
   
中央が光齋さん
 
    勉強しよう。ひとえにそれが、私をMD-PhDコースへと誘った動機というものでした。
 私は通常の学部の課程を4年生まで終えた後、いったん医学科を離れ博士課程へと進みました。一般にこのような特殊な進路をたどる人は、学業優秀で勉学に熱心なことが多いようですが、私は幸か不幸かご多分に漏れ、お世辞にも勉強をきちんとこなしてきたほうではなく、合否の狭間でのらりくらりと何とか4年間を切り抜けてきたような有様でした。ですが、そんなものぐさな私にも思うところがあり、渡りに船とばかりにMD-PhDコースへ進学することに決めました。
 大学院生になってからは、環境が一変しました。何より手痛く実感させられたのは、もう自分は教えてもらうだけの雛鳥ではいられないのだということでした。
 学部生のころは実習こそありましたがほとんど毎日座学で、9時から5時まである意味そこに座っているだけでも日々は無難に過ぎ、あとはテスト前にちょっとがんばればぎりぎり落第を免れることができるものだと高をくくっていられました。しかし、研究室ではそうはいきません。自分で問題を探し、自分に課題を課して、自分の力で解決しなければならないのです。しかし、こうした過程を経て、逆説的に今まで積み重ねてきた座学の大切さも実感することができました。
 私の研究はまだ始まったばかりですが、大学院生としてこれから多くのことを学び、いつか社会に還元することができるよう励みたいと思っています。