これから研究医を目指す学生が自分を語ります。
*第46回*  (H30.6.26 UP) 前回までの掲載はこちらから
研究医養成情報コーナートップページへ戻る 
今回は名古屋市立大学医学部5年 橋本 真耶佳さんです。

                        名古屋市立大学医学部5年 橋本真耶佳
   
これまで
 私は今5年生で、臨床実習の最中ですが、時間をみつけては研究活動を続けています。私が初めて基礎研究に関わったのは、基礎自主研修コースにおける研究室配属のときでした。名古屋市立大学では、三年次の秋から約3ヶ月間、基礎分野の研究室に配属され、各研究室で研究に参加します。私はこの時に、現在までお世話になる再生医学分野で澤本和延教授をはじめとした先生方に師事することになりました。再生医学分野では、内在性の神経幹細胞・前駆細胞による傷害後の脳の再生過程を研究しています。私の研究テーマは、大脳皮質の傷害部にオリゴデンドロサイトと呼ばれるグリアの前駆細胞が移動する際の足場構造を解析するというものでした。このテーマは、基礎自主研修で再生医学分野に配属された先輩から引き継いだもので、最初の一ヶ月間に、これまでの解析結果や実験方法を詳しく教えてもらいました。マウスの新生仔を用いて大脳皮質傷害モデルをつくり、その後、傷害部へ向かって移動するオリゴデンドロサイト前駆細胞の様子を、脳切片を免疫染色して解析します。先輩方の解析によって、オリゴデンドロサイト前駆細胞が血管や胎生期〜新生児期のみに存在する長い突起を持った放射状グリアと呼ばれる細胞に接着していることが分かりました。そこで私は、脳室下帯と呼ばれるニューロン再生に関係する領域で産生される、少数の特殊なオリゴデンドロサイト前駆細胞に着目した解析を行いました。この研究は、基礎自主研修コースの最後に行われる成果発表会で優秀賞を頂くことができました。優秀賞を受賞した学生は、学外の専門学会で研究成果を発表する場合、大学から参加費の助成を受けることができます。
 名古屋市立大学には、研究者を養成するコース(MD-PhDコース)があり、基礎研究分野に興味がある学生は、MD-PhDコースに入ることで積極的に研究を行うことができます。大学1年次からMD-PhDの存在は知っていましたが、どのような基礎研究室があり、どのような研究をしているのか、詳しく知る機会も、実際に基礎研究を体験する機会もなく、三年次の基礎自主研修コースが始まるまで、基礎研究分野とは縁がない大学生活を送っていました。配属研究室の選択の際、以前から傷害モデル動物を使った研究に興味を持っていたこともあり、丁度傷害モデルマウスを扱っていた再生医学分野の門戸を叩くことになりました。研究室への配属後も、当初は自身が基礎研究にこれほど長く関わることになるとは想像していませんでしたが、医学部での6年間の中で研究に集中して取り組めるのはこの時期ぐらいしかないだろうと考えて、3ヶ月間、実験・解析に没頭しました。約3ヶ月間はあっという間に過ぎましたが、様々な実験手技を先生や先輩方が丁寧に教えてくださり、大事な実験を任されることでとてもやりがいを感じ、実験が成功することの楽しさや結果が苦労の末にでることの達成感を初めて感じました。研究は3ヶ月間で完了する訳もなく、たくさんの未解析の課題を残して配属期間を終えてしまい、更に研究を続けたいと考えてMD-PhDコースに入ることにしました。
 名古屋市立大学からの学会参加費の助成を頂き、MD-PhDコースに入って継続した解析結果を加えた研究成果を、2017年10月に仙台で開催された日本神経化学大会でポスター発表しました。学会中は、様々な研究発表や講演を聴講するだけでなく、全国各地から参加された同分野の研究をされている先生方とお話しする機会も頂きました。自身の研究の弱点や可能性を実感することができ、さらに学んでいきたいという思いが強くなりました。また、異なる分野や研究施設で研究されている方々のお話も非常に勉強になりました。学部生という立場で、研究成果を全国の研究者に向けて発表する場を与えて頂いたことは、とても緊張しましたが、自身にとって非常に貴重な経験となりました。

これから
 私が再生医学分野で研究をはじめた後も、多くの医学部の後輩がMD-PhDコースに加入して研究室に参加するようになり、5年生となった現在ではそのほとんどが下級生になりました。これまでMD-PhDコースの先輩から、実験だけでなく、病院実習や卒業後の進路など、多方面にわたって親身に相談にのってもらっていましたので、私も後輩たちに頼られる存在になりたいと思っています。また、お互いの研究を切磋琢磨できる関係になり、より良い研究を続けていきたいと考えています。大学入学時は漠然と医師になる未来を想像していましたが、基礎自主研修、MD-PhDコースを通して研究の楽しさ、面白さを経験して、研究に関われるような臨床医を目指していきたいと現在は考えています。
 最後になりますが再生医学分野の澤本和延教授、金子奈穂子准教授をはじめ、ご指導下さった先生方・諸先輩方にこの場をお借りして心から感謝申し上げたいと思います。