これから研究医を目指す学生が自分を語ります。
*第49回*  (H30.12.25 UP) 前回までの掲載はこちらから
研究医養成情報コーナートップページへ戻る 
今回は埼玉医科大学医学部5年 岸美裕子さんです。

                        埼玉医科大学医学部5年 岸 美裕子
   
 埼玉医科大学医学部5年生の岸美裕子です。私は生殖医療の中でも特に不妊治療の研究に興味があり、本学の研究医養成コースを志望しました。女性の社会進出が進み、晩婚化が進む今、30代、40代になってから出産を望む女性は増えています。しかし、卵子の元となる一次卵母細胞は出生時から卵巣にあり、年齢と共に年を重ねます。つまり、卵子は老化していくため、年齢が高くなるほど妊娠率は低下します。卵子提供などの解決策もあり、もちろん選択肢の一つではありますが、私は他人の遺伝子を持つ卵子を使わざるを得ないこの治療法に、違和感を覚えていました。自身の遺伝子を持つ卵子が出来るのであれば、その需要は高いのではないかと考えます。そこで、様々な組織や臓器の細胞に分化することの出来るiPS細胞に興味を持つようになりました。
 大学2年生の夏には産婦人科の課外学習プログラムにて、実際に行われている生殖医療を見学させていただく機会がありました。私が見学した中で生殖補助医療における不妊治療の成功例を見ることは出来ず、現在行われている生殖補助医療の成功率が決して高いとは言えないことを実感しました。治療にかかる費用は高額で、薬によるコントロールや卵子の摘出の際に痛みを伴うなど、患者に大きな負担のかかる治療ですが、それでも生殖医療を受ける方が多くいらっしゃることも知りました。この分野における研究が進むことによって不妊治療が高い成功率で、安全かつ安価に出来るようになれば、救われる人が多くいることを確信しました。そして現在、不妊治療の研究に関してどのようなことが行われているのか知りたいと思い、研究医養成コースに参加しました。
 いま私は産婦人科研究室に所属して、胚と子宮内膜の相互作用に重要な中鎖脂肪酸について先生方の御指導のもと、子宮内膜の脱落膜化を電子顕微鏡で観察したり、RT-PCR法でβ酸化を行う代謝酵素の発現の変化を研究しています。臨床の現場でも遺伝子解析は重要になってきており、研究室で実際に自分の手でPCRをかけていると、臨床実習で出てくる遺伝子検査も理解しやすくなりました。

 また日本卵子学会で発表させていただく機会もいただくことができ、初めての学会発表はとても緊張しましたが無事終えることが出来ました。学会に参加すること自体も初めてで、他の先生方の発表は興味深く、とても刺激的な一日となりました。学内での研究発表会にも参加させていただきました。先生方からは沢山のアドバイスをいただくことができ、改めて研究の面白さを感じることができました。さらに他の学生も各々が自分の興味のある分野で同じく研究をしており発表を聞くことができて、自分もますます頑張ろうとモチベーションが上がりました。学生の研究に対して発表の機会を設け、先生方が大勢聞きに来てくださるという大学の環境がとても有意義だと感じました。

 産婦人科研究室に所属したいとご相談した時から、先生は快く受け入れて下さり、研究室の皆様はとても暖かく歓迎してくださいました。普段の研究においても、学会発表においても、先生方にはとても丁寧に御指導いただき、このコースに参加して本当によかったと感じています。

 今後は実際に患者さんの子宮内液の中鎖脂肪酸量を調べるなど臨床研究も行い、不妊や反復流産の原因の一つとして中鎖脂肪酸をマーカーとして用いることができないか検討していきたいと考えています。また、長期的な目標としては、iPS細胞を用いた不妊治療や、人工子宮などの研究にも興味を持っています。他にも卵子の老化のメカニズムの解明など、漠然としたやりたいことや、興味は尽きませんが、まずは今行っている研究を一歩ずつ進めていけたらと考えております。