これから研究医を目指す学生が自分を語ります。
*第52回*  (2019.6.25 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は東邦大学医学部医学科3年 金理志さんです。

                        東邦大学医学部医学科3年 金理志
   
 東邦大学医学部医学科3年の金理志と申します。私は現在、学部の講義の傍、生理学講座細胞生理学分野教授の内藤篤彦先生の下でお世話になっております。
 本学には医学研究の原著論文コースとして自由に研究活動を行える環境がございますが、それとは別に研究活動を行わせていただいております。まだまだ知識も浅く、研究者というには未熟ですが、ご縁がありましたので私が研究活動を行うようになったきっかけや今後についてお話したいと思います。

 私は中学・高校と生物部に所属し、プラナリアを用いた実験を行っておりました。また、高校はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定校でもありましたので高校2年生の頃は課題研究も行なっておりました。しかし、この課題研究で私はなかなか思うように研究を進めることができず、1年間の期間の終了後には「二度と研究なんてやりたくない、自分は研究には向いていない」と思うほどでした。

 そんな私が今再び研究を始めようと思うようになったのは3つのきっかけが重なったことによります。

 1つ目は、医学部を志望していた高校生の頃に読んだ、元金沢大学医学部附属病院長の河崎一夫先生による『医学生へ 医学を選んだ君に問う』という記事にあります。この記事の最後に書かれている「世のため人のために役立つ医学的発見の歓び」について読んだ時から、臨床医志望だった私の中に「研究って大事なんだな…」という思いが芽生え、それは医学部に入ってからもずっと心の片隅にありました。むしろ医学生としての日々を送っていくうちに徐々に大きくなっていたのかもしれません。臨床医になる道は拓けたが、果たしてそれだけで良いのだろうかという思いが心の中に巣食っていたのです。

 そんな思いを抱えながら毎日を過ごしていた2年生のある日、私はNHKの番組『歴史秘話ヒストリア』で病理学者の山極勝三郎先生の特集がされていたのを観ました。これが2つ目のきっかけです。番組内では山極先生の、実験がどんなにうまくいかなくとも諦めず、同じ実験を8年間もやり続け、ようやく成功する姿が描かれていました。それを観て、私の中にあった研究に対する思いは急に存在感を増すようになりました。

 そして奇しくもその2、3日後、3つ目のきっかけが訪れます。3つ目のきっかけは現在お世話になっている内藤先生による病態の科学概論の特別講義でした。そこで内藤先生はiPS細胞を用いた大学時代から現在までのご自身の研究について講義をしてくださりました。それに感銘を受けた私はさきに述べた2つのきっかけと相まって、「もう一度研究を頑張ってみてもいいかもしれない」と思うようになりました。

 その後内藤先生のもとを訪れ、2月の終わりから通うようになりました。


 現在私は内藤先生とともに心筋細胞の分裂停止メカニズムの解明を大きな目標に日々活動を行なっています。今でも臨床医になりたいという思いが強いことは間違いありません。しかし、まずは卒業までの間研究活動を続けたいと思っております。3つのきっかけに支えられている今の私はどんなに研究がうまくいかずとも、高校時代のように「二度と研究なんてやりたくない、自分は研究には向いていない」と思うことはもうないでしょう。残りたったの4年間では難しいとは重々承知ですが、もし、心筋細胞の分裂停止メカニズムの解明という様々な研究者が取り組んできた難題に何か爪痕を残すことができれば、それが将来の顔も名前も知らない多くの患者さんのためになれば、それほどの歓びはありません。


 最後になりましたが、内藤教授をはじめとする生理学講座細胞生理学分野および薬理学講座の方々にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。