これから研究医を目指す学生が自分を語ります。 | |||||
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昭和大学大学院医学研究科4年 大熊 遼太朗 |
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「日本内科学会 ことはじめ2018京都」にて優秀演題賞を受賞 | |||
昭和大学大学院医学研究科4年 大熊遼太朗と申します。現在は昭和大学病院腫瘍内科で臨床医としての研鑽を積みながら、大学院生として新規がん免疫療法、がん診断方法の開発を最終的なテーマにかかげ研究を行っております。 「特別奨学金制度」への参加 医学部生時代には研究に触れる環境になかったためか、学部在学中は病院で活躍する臨床医になることを志しておりました。そこで私が大学院に進学して研究に励みたいと考えるきっかけとなったのが、昭和大学が設置する「医学部特別奨学金」制度でした。初期研修医として臨床研修に従事すると同時に大学院に進学することを条件に、学部5年次、6年次の授業料と大学院の授業料に相当する額の給付を受けることができ、優れた研究医の育成を支援するという趣旨で設立された奨学金制度です。まだ将来の展望が明確でなかった私にとっては、臨床医として経験を積みながら、早い段階から研究に携われることに魅力を感じ、昭和大学の附属病院で臨床医をスタートさせるのと並行して大学院に入学しました。 研究との出会い 大学院の基礎科目の履修、また研修を進めていく中で、「腫瘍内科」という分野に大変魅力を感じました。昭和大学腫瘍内科は固形がんに対するがん薬物療法を専門としており、あらゆるがん種を対象としております。特にがん分野の中でもがん免疫療法の進歩は著しく、私の医師人生のなかで大きな変化が起こるだろうと考え、そして自分でも何か研究の分野で変化を起こしたいと考えるようになりました。 研究では、医学部内科学腫瘍内科学講座の角田卓也教授、臨床薬理研究所 臨床腫瘍診断学講座の和田聡教授に師事し、ご指導賜りながら研究生活を開始しました。腫瘍内科で診療を受けておられる患者さんから検体を頂き、それを用いた免疫学的解析や新規バイオマーカーの探索を主に行っております。研究を始めた頃はテーマを与えて頂くものの、それを理解することにすら苦しみ、厳しくご指導頂くことも多々ありました。また時間をかけて得られたデータもポジティブな結果とならずに落胆したことも記憶に新しく、実臨床とは違った研究の難しさ、新しいものを発見しカタチにすることの難しさを強く実感しました。直接研究をご指導頂いている和田教授には、研究経験がなく基礎から学ぶ必要のある私の指導には大変お時間を取らせてしまったと思いますが、手のかかる私に対してもいつも熱心に指導して下さり、その指導に応えたいという思いも次第に大きくなっていきました。 研究での取り組み 現在は「固形がんに対する新規がん免疫療法の開発」というテーマを最終的な目的として研究を行っています。がん免疫療法は第4のがん治療法として確立し、その治療効果として長期生存を認める患者も報告されていることから、がん治療に強いインパクトを与えました。近年、免疫チェックポイント阻害薬とともに新たながん免疫療法の一つとして遺伝子改変T細胞移入療法が着目され、その臨床的有用性が認められつつありますが、固形がんに対する臨床効果はまだ不十分と言わざるを得ない状況です。問題点として複数の要因が指摘されていますが、固形がんにおいては腫瘍特異性の高い適切な治療標的抗原が同定されていないことが問題点の一つとして挙げられます。そこで、固形がんにおける適切な標的抗原の探索研究を行ってきました。 ヒト膵臓がん腫瘍組織を超免疫不全マウスに移植したモデル(Patient derived xenograft(PDX))に膵臓がんの一次治療薬を投与し、その後治療耐性を示した腫瘍組織を用いて次世代シーケンサー(NGS)で解析しました。その結果、分子XのRNA発現が抗がん剤耐性腫瘍に共通して発現が増強していることを見いだし、その分子Xのタンパク発現も同様の結果であることを確認しました。そこで実際の術後病理標本のFFPEサンプルを用いて分子Xの免疫組織化学染色を行い、その発現と臨床情報の解析から、膵臓がん患者において分子Xが高発現であることは、抗がん剤耐性と予後不良に関与することを発見しました。この結果は、米国癌学会(AACR)Annual Meeting 2019でポスター発表を行っております。 現在は、この分子Xの解析を膵臓がんだけでなく消化管がん、肺がん、乳がんなど他がん種へと広げ、さらに患者血清においてはバイオマーカーとしての有用性を目指し実験を進めております。分子Xは正常細胞にも一部発現していることが研究を通じて判明したため、分子Xの三次構造を解析する事により腫瘍特異性を高めることが出来るのではと考え研究を続けております。最終的には分子Xを標的抗原とした新規がん免疫療法の開発へと繋げていく事を目指しています。 将来の抱負 特別奨学生としては、大学院卒業後4年以上は昭和大学の専任教育職員として、病院での臨床や研究、教育活動に従事することが条件となっています。現在は大学院の学位論文を投稿中の段階ですが、大学院卒業後は腫瘍分野で後輩の研究を指導できるようになること、そして海外留学を行い海外の研究者たちと自分の研究分野について議論できるようになることが、今後の目標となっています。そして何よりも、がんを患い闘病されている患者さん方に自分たちが開発した診断技術や新規治療をお届けできる日が来るように、今後も研鑽を積んで参りたいと思います。 最後にはなりますが、腫瘍内科や研究室の先生方、日々ご指導頂いております医学部内科学部門腫瘍内科学講座の角田卓也教授、昭和大学臨床薬理研究所 臨床腫瘍診断学の和田聡教授、本稿を執筆する機会を頂きました医学部長 小川良雄教授に心より御礼申し上げます。 |