これから研究医を目指す学生が自分を語ります。
*第60回*  (2020.10.26 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は関西医科大学医学部3年 田畑 凱光さんです。


                        関西医科大学医学部3年 田畑 凱光
   
自己紹介
 関西医科大学3年の田畑凱光です。研究医養成コースに2年次から参加しています。このコースに参加しようと考えるようになったきっかけは、漠然と実験というものに興味を持っていたことも関係しますが、入学前に、大学に入ってからは普通の医学部の生活ではできないような事をしようと思っていたからです。入学してから自分の興味が持てそうな研究をされている研究室の扉を心の赴くままに叩いてお話を聞き、しばらくの流浪期間を経て、廣田喜一先生が主宰される侵襲反応制御部門の研究室にお世話になることになりました。課外活動として他に部活動にも所属しており、学校の勉強、部活、研究と忙しい毎日を送っています。

研究医養成コースへ参加志望動機
 今までの自分ではしなさそうなことをしてみたいという想いと、将来医師になった時に他の医師の方々とは違った側面で物事を捉えられる人材でありたいという目標からです。

今までの活動
 3年次以降に開講される研究医養成コースへ参加したい学生は、前段階として1年次に少人数ゼミである「基礎医学セミナー」に参加することになっていました。月ごとに、大まかなテーマについて先生がある程度授業で説明したのちに、各学生にその詳細についてのテーマが与えられ、ある程度期間を設けてそれについて自分で調べてきたことをセミナーの中で発表することが求められます。発表準備は今思い返してもとてもヘビーなもので、試験の勉強よりもそのテーマについての勉強が勉強時間のほとんどを占めていました。どれだけ自分が調べた、と考えていても足りない部分があるとそれを指摘され、指摘を受けないことはありませんでした。大変なものでしたが、論文を読む、論文の探し方を知る、今知られていないことを知られていないこととして理解する、など基本的なことをそこで学びました。
 また、同時期に研究室にお世話になり始めていました。大学入学してすぐに研究に参加しようと思っても、自分ができることがほとんどないということは明白でした。何より自分の知識不足をなんとかしなければならないということで、研究室に入り浸り始めてからすぐは教授から渡された基本的な生物学に関わる本を読んだり、研究会について行ったりして、知識をつけることに専念しました。しばらくして基本的な実験に参加させていただけるようになり、最初は失敗続きだったものの技術も上達し、実験の一部は共著者として論文に載せていただけるまでになりました。(Real-time diagnostic analysis of MinION™-based metagenomic sequencing in clinical microbiology evaluation: a case report. JA Clinical Reports volume 5, Article number: 24 (2019))
 2年次へ進級した際に、何か自分の研究テーマを持って活動したいと廣田教授に相談したところ、周術期管理に関与するSNPの新規同定法の開発をする、というテーマをいただきました。手術を行う際に、患者さんに対し術前、術後に疼痛管理や麻酔などの処置を行いますが、患者さんによってその処置に対する効果や副作用の現れ方は異なると言われています。生じる差異に患者さんが持つ遺伝子が関わることが知られており、その一つとして一塩基多型(SNP)が挙げられます。これを外注に頼ることなく簡便に検出する方法を考えよう、というものです。昨年の夏頃から現在にかけてこの研究を続けています。COVID-19の影響を受けて研究が思うようにできないこともありますが、活動自粛期間に改めてプランを考え直すなど、前向きに捉えて活動しています。

参加しての感想
 今もなおコース履修の只中にありますが、感じたことは「知らないことを知る、ということは大変ながらもとても楽しい」ということです。論文を検索することによって知識が拡がっていきますが、それと同時にいまだに知られていないことにも触れることになります。この先を自分が解明できたら、どんなに素晴らしいか、と思うようになりました。このコースを修了してもこの思いは無くならないと思います。
 また、自分のテーマを与えていただいたことにより、気づくこともありました。当たり前のことではありますが、「自分のテーマについては自分しか知らない」ということです。答えがわからないからと言って答えを教えてくれる人はいません。指導教員と相談することによってある程度解決への道筋を立てることはできますが、それが全てではないということです。それだからこそ、相談できる先生が近くにいるということがこんなにもありがたいのか、と思うようになりました。諸先生方の助言に感謝しつつ課題を乗り越えられるようになりたいと思います。


将来への抱負
 研究もさせていただきつつ、学校の勉強もしつつ、自分はどのような人材になりたいのかを改めて考えるようになりました。今経験させていただいていることは臨床医になるにせよ、研究医になるにせよ間違いなく有意義なものになると思います。入学時に立てた、「他とは変わった視点を持つ医師」とは何かを考えつつ、患者さんのために活動する医師になりたいと考えています。