*第14回*  (H24.12.26 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は長崎大学での取り組みについてご紹介します。

長崎大学医学部における研究医の養成について       
(文責:長崎大学医学部長 松山 俊文 先生)
 長崎大学医学部医学科の教育理念・目標は,深い医学知識と豊かな科学的創造性,高い倫理観を有し,科学性と自立性・社会性をともに身に付けた責任感あふれる次世代のリーダーとなるべき医療従事者,教育者及び研究者を育成することです。このため,医学科では「医学を学び,科学を学び,人間を学ぶ」をモットーに,基礎医学・臨床医学の総合的理解,医科学的創造性の養成,医師としての社会的責任と人間性の確立を重視した教育を実施しています。
 一方、現在基礎医学研究については人材不足という一番の課題を抱えており,基礎医学研究の復興に向けて,基礎研究医の確保と養成は急務となっています。これは医学部卒業生の大都会志向,臨床専門医指向によるところが大きいのですが,裏を返せばこれまでの基礎研究医のリソースとして,ほぼ全員が臨床医を目指す目的で入学し卒業を迎える医学部生に頼っていたことの表れでもあります。この問題を解決するために,長崎大学医学部では全国に先駆けて平成20年度から入学定員枠に基礎研究医枠(研究医枠5名,国際保健医療枠5名)を設け,更に平成23年度からは熱帯医学研究医枠(定員5名)を設けて選抜を行っています。これらの入学者には,入学から3年次後期に予定されているリサーチセミナーまで,基礎医学系研究室に配属して基礎医学研究を体験するようにしています。

 在学生には,奨学金を給付する研究医コースや4年生時から大学院講義を受けて学位早期取得が可能となるプログラムを開始しています。また臨床系大学院生には,基礎医学研究への興味を喚起し,転向・回帰を誘導するため利用しやすい医学部共同利用研究施設を目指して,先端機器専任教員を全国公募して採用して活動を始めています。

 これまでの実績を更に発展し充実させるための課題と対応策について以下に述べます。
<課題と対応策>
1)大学入学で特別選抜した基礎研究志望入学生
 課題の一つは,4年次以降では特別教育カリキュラムを予定していないために低学年で培われた研究マインドが臨床実習等のために途切れてしまうことです。
 これに対しては,4年次から6年次前期までアドバンストリサーチセミナーの形で特別教育カリキュラムを組み、研究マインドを大学院までシームレスにつなぐことを考えています。また優秀な学生にモチベーションを高く保ち続けてもらうために学会発表や論文発表を促すようにするとともに海外の先進的な研究機関へ専任教員が同行し,海外での研究活動に積極的に参加できるようにしたいと考えています。

2)一般選抜で入学した在学生
 在学生には4,5年生時から奨学金を給付する研究医コースを,平成22年度から開始しています。研究医コースは元々法医学基礎研究医希望者を中心に募った制度のため7名の受給者がいますが,うち6名が法医学専攻であり他の基礎医学系分野での奨学金受給希望者が皆無に等しいところが大きな課題です。
 これに対しては,3年次後期に2か月開講されるリサーチセミナーで,医学部共同利用研究センターの先端機器を用いた研究を指導し基礎医学研究への興味を喚起することで対応することにしています。


 なお,研究医枠に係るカリキュラム等については次のとおりです。


推薦入試(研究医枠)学生カリキュラム
1)学生指導担当者
 推薦入試(研究医枠)学生グループには年度ごとにそのグループ担当者を決める。この担当者は担任制度の担任を兼ねる。学生は担当者と協議し、研究テーマを考慮しながら2カ月程度で配属教室および指導教員を決定する。配属教室・指導教員は個別の研究指導に当たる。
2)研究枠学生カリキュラム目標
 -1.配属教室に関連した研究活動を行う。
 ‐2.研究活動に基づいて学会発表や論文発表を達成する。
3)研究枠学生授業計画
 ‐1.配属教室において年間の到達目標を設定し研究を行う。1単位
   1年次~3年次、配属教室での研究 年間1単位を限度とする。
  ※3年次リサーチセミナーは配属教室でのリサーチを義務付ける。
  ※担当教員が100点満点で評価し60点以上を合格とする。
4)報告会
 1年次~3年次まで毎年末活動報告会を行う。
5)進級要件
 4年次への進級には研究枠学生として3単位以上を修得していること。進級要件を満たさなかった者は、該当する研究枠カリキュラムについて再履修を課す。

AO入試(国際保健医療)学生カリキュラム
1)学生指導担当者

 AO入試(国際保健医療)学生は年度ごとにそのグループ担当者を決める。この担当者は担任制度の担任を兼ねる。学生グループ担当者は活動の指導に当たる。
2)国際枠学生カリキュラムの目標
 ‐1.国外における臨床実習、医療を行えるよう医学英語に習熟する。
 ‐2.国際医療に関する広い知識を習得する。
3)国際枠学生授業計画
 ‐1.医学ゼミ 1年前期、2年前期・後期、3年前期、4年前期・後期  各1単位
   医学ゼミは国際枠学生が受講可能な講座を対象とする。
 ‐2.医学英語 前期・後期   各1単位
 ※1、2の授業評価:担当教員が100点満点で評価し60点以上を合格とする。
4)報告会
 1年次~3年次まで毎年末活動報告会を行う。
5)進級要件
 4年次への進級には国際枠学生として医学英語2単位以上を含む3単位以上を修得していること。進級要件を満たさなかった者は、該当する国際枠カリキュラム科目について再履修を課す。

AO入試(熱帯医学研究医)学生カリキュラム
1)学生指導担当者
 AO入試(熱帯医学研究医)学生グループには年度ごとにそのグループ担当者を決める。グループ担当者は新興感染症病態制御学系専攻の医学系基礎研究分野の教授とする。またこの担当者は1~4年次の担任制度の担任を兼ねる。学生は担当者と協議し、研究テーマを考慮しながら数カ月程度で配属教室および指導教員を決定する。配属教室は医学系基礎研究分野教室及び熱帯医学研究所基礎教室とする。配属教室・指導教員は個別の研究指導に当たる。
2)熱帯医学研究医枠学生カリキュラム目標
 ‐1.配属教室に関連した研究活動を行う。
 ‐2.研究活動に基づいて学会発表や論文発表を達成する。
3)熱帯医学研究医枠学生授業計画
 ‐1.熱帯医学ゼミ(1年次) 1単位(熱帯医学研究所教室及び新興感染症病態制御学系教室において開講)
 ‐2.配属教室において年間の到達目標を設定し研究を行う。1単位
   1年次~3年次、配属教室での研究 年間1単位を限度とする。
 ※3年次リサーチセミナーは配属教室でのリサーチを義務付ける。
 ※担当教員が100点満点で評価し60点以上を合格とする。
4)報告会
 1年次~3年次まで毎年末活動報告会を行う。
5)進級要件
 4年次への進級には熱帯医学研究医枠学生として4単位以上を修得していること。進級要件を満たさなかった者は、該当する研究枠カリキュラムについて再履修を課す。