*第16回*  (H25.3.22 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は千葉大学での取り組みについてご紹介します。

研究医養成の取り組みの紹介
(文責:千葉大学医学研究院分子ウイルス学教授 白澤 浩 先生)

概要
 研究医を養成するためには、入学後早期から、医学の基盤となる生命科学の基礎的知識及び研究方法論を十分に修得し、基礎医学系及び臨床医学系各種研究領域の先端的・応用的研究に触れるとともに、それらの実験科学を自ら体得することにより、生命科学における科学的思考法を身につけながら学問体系構築の道筋を理解し、医学研究へのモチベーションを涵養する教育課程が求められる。
 千葉大学医学部では、医学的知識を基盤とした柔軟な思考力を涵養し、研究を実践するための知識、技術、倫理観を修得させるために効果的なプログラムとして、一般入学者に対して6年一貫研究医養成プログラム「スカラーシッププログラム」を実施している。3年次編入のMD-PhDコースでは、スカラーシッププログラム(アプライドおよびアドバンスト)に加えて、チューターのもとで卒業までの4年間研究指導を受け、卒後は大学院へと進学する。

 スカラーシッププログラムは、1・2年次のスカラーシップ・ベーシック(必修)、3年次のスカラーシップ・アプライド(必修)及び4年次から6年次のスカラーシップ・アドバンスト(選択)により構成されており、平成20年度から本学部が導入している学習成果基盤型教育(OBE)における「千葉大学医学部学生は、卒業時に基礎、臨床、社会医学領域での研究の意義を理解し、科学的情報の評価、批判的思考、新しい情報を生み出すための論理的思考と研究計画立案を倫理原則に従って行うことができる。」という目標を達成するものとなっている。

 更に、平成25年度からの研究医養成のための入学定員増に伴い、研究医養成を確実なものとするために、研究発表及び論文作成により単位を修得する「スカラーシップ・アドバンスト」を選択科目から必修科目とすることによる、大学院教育を含めた特別コース「スカラーシップ・アドバンスト特別コース(定員4名)」を設定した。

 また、群馬大学,東京大学,山梨大学と形成した関東四大学研究医養成コンソーシアムにおいて、合宿形式の研究発表会(写真)等を通じ、教育環境の整備に努めている。研究指向を有する学生が相互に刺激し合い、研究医になることの動機付けが高まるとともに、プレゼンテーション能力やディスカッション能力の向上も期待される。学内においては、研究に参加する学生間の情報交換の場である「獅鷹会」では、学生が自主的に抄読会、勉強会を定期的に開催している。

 教員の体制については、前述した教育課程、教育方法の実質化のためには、医学部の教員の理解と実践が不可欠であることから、スカラーシッププログラムに関するFDを定期的に開催し、教員の理解の深化とモチベーションを含む指導力向上を図っている。さらに、屋根瓦方式による研究医養成学部教育を支援するために、「先端研究リサーチフェロー制度」により雇用された若手基礎研究医がスカラーシップ・アドバンスト特別コースのメンターとなる。

 また、研究医養成を支援する制度として、毎年開催しているちばBCRC (Basic & Clinical Research Conference)を学生研究の発表の場とし、最優秀者には千葉医学会奨励賞を授与している。

 


沿革
【基礎配属(early exposure to medical science)、平成9年〜平成14年】
 千葉大学医学部では、平成9年度より基礎医学研究へのearly exposure (基礎配属)として、4年次を対象とした必修科目として基礎医学教室において、研究に参加する取り組みを行なってきた。
【自主研究(基礎医学生命科学特論・研究コース)、平成15年〜平成19年】
 平成15年に、基礎配属は研究参加教室に臨床医学教室も含めた「自主研究」へと発展し、3年次履修に変更された。同時に、ゼミ形式の「基礎医学ゼミ」を自主研究に加えた「基礎医学生命科学特論・研究コース」を設定した。基礎医学ゼミでは、一般講義よりも高度な内容が設定されたゼミを各研究室が提供し、学生は2つ以上のゼミを受講する。
【スカラーシッププログラム、平成20年〜】
 千葉大学医学部では、平成20年より、学習成果基盤型教育(outcome-based education, OBE)を先駆的に導入し、研究医養成カリキュラムの大幅な見直しを行い、「基礎医学生命科学特論・研究コース」に、自主研究に代えて6年一貫の研究医養成プログラムであるスカラーシッププログラムおよび探索的先端治療学の導入を行った。
 千葉大学のOBEにおいては、「科学的情報を批判的に吟味し,新しい発見と創造のための論理的思考と研究を行える」ことを、卒業時の到達目標の一つとして設定し、卒業時に到達すべき6つの能力(コンピテンス)の一つに「科学的探求」を設定している。この教育目標を達成するための6年一貫研究医養成プログラムがスカラーシッププログラムである。

 スカラーシッププログラムでは、卒業時の到達目標(コンピテンス)が順次性をもって設定されており、それぞれの目標をベーシック(1・2年次対象、必修)、アプライド(3年次対象、必修)、アドバンスト(4〜6年次対象、選択)の履修により達成する。

【アドバンスト特別コース、平成25年〜】
 スカラーシッププログラム・アドバンストを必修とした特別コース(定員4名)を平成25年度より設定する。本コース履修生に対しては、若手研究医がメンターとなって指導を行い、奨学金が付与される。

 


スカラーシッププログラム・アドバンスト特別コース
【コースの主旨】
 平成25年度より、研究医養成のための入学定員増に伴い、スカラーシップ・アドバンスト特別コース(定員4名)を設定した。本特別コース履修者には奨学金が付与され、スカラーシップ・アドバンスト履修による研究発表及び論文作成により単位を修得する。本コース履修者は、卒後は大学院へと進学し、大学院修了後は研究医として研究を継続する。

【プログラム概要】
 スカラーシッププログラムは,スカラーシップ・ベーシック(1年次~2年次必修),スカラーシップ・アプライド(3年次必修),スカラーシップ・アドバンスト(4年次~6年次選択)により構成される。アドバンスト特別コースにおいては,スカラーシップ・アドバンストは必修である。本コースでは,若手研究医である先端研究リサーチ・フェローがメンターとなり指導を行い,卒業後は大学院に進学し研究を継続・発展させる。
 また,大学院修了後には研究医となり,研究に従事するとともに,本コース履修学生のメンターとして研究指導を行う役割を担うことを確約した学生に対し,奨学金を付与する。

【プログラム内容】
(1)スカラーシップ・ベーシック
①対象学年:1年次~2年次
②単位数:2
③概要: 研究室を選択し,その指導教員(アカデミックメンター)の指示に従って,研究・抄読会・カンファレンス等に参加する。研究室の選択は変更も可能であるが,研究活動経験の継続性の観点から,原則として半年以上ひとつの研究室に所属することが求められる。
研究への参加に関する指導・相談はメンターがあたる。研究室の変更,中断の相談にはユニット責任者があたる。
また,医学研究院が主催する研究会に参加し,研究発表等を行う。
(2)スカラーシップ・アプライド
①対象学年:3年次
②単位数:5
③概要: スカラーシップ・ベーシックの継続に加えて,「基礎医学ゼミ」により医学の基盤となる基礎医学の先端的または応用的研究に触れ,それらを理解することによって臨床医学を学ぶ際の基礎医学的知識を整理し高度化するとともに,基礎医学および臨床医学での独創的研究を行う際の基盤となるより高度な知識の獲得を図る。希望したゼミを2-4コース選択し,基礎医学のより高度な内容を自ら学習する。
「探索的先端治療学」においては,基礎研究成果から探索的治療,標準治療への移行について,橋渡し研究の実例を通して学び,医学・医療の発展を見据えた基礎的研究の重要性を学ぶ。
(3)スカラーシップ・アドバンスト
①対象学年:4年次~6年次
②単位数:3
③概要: スカラーシップ・ベーシックから継続した主な研究活動の継続に加えて,研究発表および論文作成を行う。提出された論文および研究発表の審査により単位認定される。なお,スカラーシップ・アドバンストは,4~6年次の履修を目安としているが,各自の希望によって前倒しや全年次を通じた自由な履修も可能である。

 
  写真:平成23年度関東四大学研究医養成コンソーシアム・リトリート

参考URL:千葉大学医学研究院・医学部ホームページ・研究医養成プログラム
http://www.m.chiba-u.jp/edu/scholarship.html