*第23回*  (H26.5.30 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は富山大学での取り組みについてご紹介します。

富山大学研究医養成プログラム
(文責 : 富山大学医学部長 村口 篤 先生)

【目的】
 本学医学部医学科の学生が本格的な基礎研究を行い,その面白みや醍醐味を体験することを通して,学生の研究マインドや研究能力(知識や技術)を涵養することを目的とし,医師資格を持った優れた医学研究者(研究医)の創出を目指します。

【概要】

 本学では,本学医学部医学科の学生を対象とし,次世代を担う医学研究者を育成するための研究医養成プログラムを開設しました。
 本プログラムの受講者は,医学部医学科在学中に,自由選択科目「基礎研究演習」を履修し,希望する研究室において研究活動を行います。6年次前期までにその研究成果を学術研究会(学会等)で発表,または学術雑誌に公表します。
 なお本プログラムを修了すると,本学大学院医学薬学教育部博士課程(医学)の在学期間短縮修了要件の一部を満たすことになります。すなわち,本プログラムの修了者が,当該博士課程に進学し,大学院3年次に研究成果を学位論文にまとめ,学位審査を受けて合格し,かつ,大学院学則第37条に定める短縮特例修了の要件を満たした場合,通常4年間の在学期間を要するところ早期の修了により3年間で博士の学位を取得することが可能です(短縮特例修了について,より詳細にお知りになりたい場合は,富山大学医薬系事務部医薬系学務グループ大学院教務担当にお問い合わせください)。

   

【履修の手続き時期と履修期間】
 基礎研究演習の履修開始は,1年次後学期から3年次後学期までとし,希望する講座の許可を得て,各学年の指定する期間に手続きを行ないます。本プログラムを修了するためには,最短3年間,基礎研究演習の履修を必要とします。基礎研究演習の単位認定は1年ごとに行ないます。

【プログラム修了に関わる事項】
修了要件
 本学医学部医学科を卒業するまでの間に,「基礎研究演習」を3単位以上取得し,あわせて次の各号のいずれかに該当し,所属講座の指導教員が推薦する者を研究医養成プログラム修了者とします。

(1)学術研究会*における第一発表者としての発表が少なくとも1回あり,かつ,第一著者としての纏め(論文形式)を修了認定評価委員会に提出し,その内容が当該委員会において一定水準に達していると認められた者。
(2)第一著者または第一著者と同等の貢献度で研究を行った第二著者として,査読のあるジャーナルに論文を掲載された者または投稿した者。
*学術研究会には,国内外の学会,ワークショップ、シンポジウム等に加え,本プログラム履修学生を対象として学内で開催する学術研究会も含みます。


富山大学医学会誌への修了報告書の提出と修了認定時期
 研究医養成プログラムを修了した者は,当該プログラムにおける研究成果について,富山大学医学会誌に2,000字程度に纏めた報告書を掲載することとします。また研究医養成プログラムの修了認定については,原則として卒業時に行うこととします。


【本プログラムの履修内容】
 本プログラムの履修内容は履修学生を受け入れる講座ごとに異なります。各講座の教育・研究分野及び研究テーマについては別表をご参照ください。

【事業の運営体制】
 本プログラムの実行母体は,基本的に医学部医学科の基礎系および臨床系の講座から構成されています。本事業の実施計画などは、学部教育,卒後臨床研修,大学院教育等の担当者から構成される研究医養成プログラム実行委員会において決定されます。

【学年別プログラム履修者数】 平成25年6月現在

1年生

2年生

3年生

4年生

5年生

6年生

合計

 

3

5

19

26

 

53

 
【問題点】

 本プログラムに参加する学生数は毎年増加しています。しかしながら、学生が所属したい講座が集中している、学生の研究に対する本気度やレベルに差がある、担当教員の数が足りず教員自身の研究に支障が生じる等の問題があります。これらの諸問題を解決しながら、未来を担う若い研究医を養成したいと考えています。


【別表:基礎医学・社会医学系のみ掲載】

講座名

教育・研究分野及び研究テーマ

解剖学

神経科学ビギンズ
動物の行動を支配する神経回路の構造と機能を三つの現象を手がかりに
探索します。
(1)手綱核の左右性(マウス)
(2)捕食行動の左右性(魚類)
(3)求愛行動と排他行動の選択(魚類)

統合神経科学

動物の脳からのニューロン活動記録実験

生化学

1.記憶形成のメカニズムに関する分子生物学的・
 細胞生物学的・組織学的な解析
2.神経科学に関する英文の研究論文の演習
(どちらかを選択する)

再生医学

1.ヒト上皮組織,間葉系組織の分離・培養
2.細胞の分化誘導
3.細胞および組織よりRNA,DNA,蛋白質の抽出と解析
4.組織の観察

病理診断学

1.病理解剖実習(剖検,診断及び診断書等の作成)
2.外科病理実習(迅速診断,生検手術材料等の診断)
3.分子病理診断(癌関連遺伝子の固定)

病態・病理学

1.病理診断,病理解剖
2.神経幹細胞の分離培養,蛍光イメージング,
 血管由来幹細胞の分離培養
 (希望によりどちらかを選択も可)

感染予防医学

1.感染症コンサルテーション症例の臨床実習
2.グラム染色の手技習得
3.一般細菌・真菌の培養
4.論文の検索,読み方などの指導
5.簡単な実験計画の立案から実施,発表までの経験

免疫学

1.抗原特異的リンパ球の検出
2.ELISA,ELISPOT,フローサイトメトリー

ウイルス学

1.プラスミドの設計,作製,蛋白の発現とその精製
2.ウイルスの培養法
3.ウイルスのDNAシークエンス

分子医科薬理学

1.ウェスタンブロット,リアルタイムPCR
2.組織標本作成,免疫組織染色法,細胞培養
3.輪読会への参加

放射線基礎医学

1.アポトーシス
2.活性酸素
3.カルシウムイオン
4.遺伝子導入と発現の検討

疫学・健康政策学

1.心理社会的ストレスやワーク・ライフ・バランスと
 健康に関する国際比較研究
2.社会経済的要因による健康格差に関する国際比較研究
3.小児期からの生活習慣病予防に関する研究

公衆衛生学

1.子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)
 データの集計と解析
2.脂肪酸と疾患に関する臨床疫学研究
3.環境化学物質の生体影響に関する実験研究

法医学

1.司法・行政解剖
 (諸臓器の切り出しや組織標本観察を含む)
2.循環器,神経病理学
3.心筋イオンチャンネルの分子生物学

システム情動科学

1.光トポグラフィーによる脳機能計測
2.非侵襲的自律神経機能計測
3.高次脳機能解析
4.非言語的コミュニケーション機能解析

分子神経科学

講座内で実施している研究プロジェクトに参加し,分子生物学的実験を行う
1.D-アミノ酸代謝制御機構の解明
2.シナプス形成の分子機構解析
3.神経活動可視化プローブの開発と応用
4.ストレス性脳機能疾患の解析