*第39回*  (H29.2.27 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は旭川医科大学での取り組みについてご紹介します。

旭川医科大学における研究医養成の取り組み
文責 : 旭川医科大学 副学長(教育・研究・情報担当) ・ 生理学講座教授 高井 章 先生

概要
 本学の基礎医学系研究室(総数16、センター系の2研究部門を含む)で働いている医学部出身の研究者は17名(うち本学卒業者は9名)と定員の30%を下まわっており、さらに減少の傾向にある。これの原因としては、初期研修の義務化など他の大学にも共通する一般的要因に加え、もともと地域医療の現場で医師として働くことを目指して入学してくる学生の比率が高いという本学に特徴的な要因も考えられる。ここ10年間の大学院学生(定員各学年15名、全60名)の充足率は、休学者、長期履修者などを控除しても100%を超えてはいるが、ほとんどの学生は臨床医学系部門の所属であり、現在、基礎医学系所属の院生は全体で11名、うち本学医学部卒業生は4名にとどまる。この状況が続けば、近い将来、本学卒業者で、基礎医学的視点をもって研究・教育に従事できる人材が枯渇してしまうおそれがある。本学では、卒業者から少しでも多くの基礎医学研究医を生み出すことに重点を置き、下記の様に、第2学年から第6学年まで各学年(臨床実習が集中する第5年次を除く)で基礎医学部門への関心を高めるための講義や講座配属による直接指導などを継続的に行っている。

医学部各学年における取組み
● 第2学年後期:「基礎医学特論」
 基礎医学系14講座 (解剖学2講座、生理学2講座、生化学2講座、病理学2講座、薬理学1講座、社会医学系2講座、微生物学1講座、寄生虫病学1講座、法医学1講座)が、それぞれ1コマ担当し、各講座で行っている研究の紹介をしている。2004年の開講以来、出席率もほぼ90%を維持するなど、聴講する学生の反応は良好である。

● 第3学年後期:「選択必修コース」の一部:選択した学生の基礎系講座配属

 上記の基礎医学系14講座に加え、一般教育の心理学、化学、生命科学および脳機能医工学研究センター、教育研究推進センターにそれぞれ2~4名の学生を配属し、実験、データ整理、プレゼンテーションなどを体験させることを狙っている。教員の指導・補助のもと、実験的成果の学会発表までこぎ着ける学生も例年数名いる。

● 第4学年前期:「医学研究特論」

 趣旨・内容は上記の「選択必修コース」と同様であるが、一般教育系、基礎医学系、センター系基礎医学研究部門に加え、臨床医学系19講座に学生を配属。第3年次の「選択必修コース」から継続して同じ基礎医学系講座で実験を続ける学生の割合が多い。

● 第6学年前期:「アドバンス臨床実習」
 後期臨床実習と並行し学生を主に臨床医学系講座に配属。希望する学生は基礎医学系講座を選ぶことも可能。これは、卒業し初期研修に向かおうとする学生が基礎医学系講座とのコンタクトを保つ機会を作ることを意図している。平成28年度第6学年の123名の学生のうち、この科目で基礎医学系講座を選択した学生は29名であった。

現況と今後の課題
 上記のような取組の結果、本学大学院は全体としては高い学生充足率を維持しており、臨床系に関しては研究医としての教員の多くを本学卒業生で恒常的にリクルートできている状態である。しかし、基礎医学系分野への大学院進学者が非常に少ない状態はなかなか改善できていない。臨床系大学院在学者または卒業者で基礎医学系研究に興味をもつ者が、実際に基礎医学研究を遂行できるような学内体制を構築することを検討中である。