*第40回*  (H29.6.5 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は福井大学での取り組みについてご紹介します。

福井大学医学部における研究医養成の取り組み
文責 : 福井大学医学部 医学科カリキュラム委員会委員長/統合生理学分野 教授 松岡 達 先生

 福井大学医学部医学科に入学する学生は、地域医療や総合医などを目指す学生が多く、臨床医志向が強い傾向にある。また、卒業後は出身の地元に帰る学生が多く、福井大学での研究を希望する学生は多くはない。このような現状の中、研究医、特に基礎研究を目指す学生を育成するために、いくつかのコースを設けて研究マインドの涵養に向けた地道な努力を続けている。なお、平成28年度入学生から、医学科カリキュラムが改訂となり、現在は新旧カリキュラムが並行して進んでいる状況である。

1.初年次教育 : 1年次生前期に、医学科で学修する科目の概略を説明する「医学入門」を開講している。この医学入門の中で、本医学科における医学研究の概略や、先輩の大学院学生による研究体験を説明する研究紹介を平成29年度から開始した。また、少人数ゼミ方式の「基礎生物学」も平成29年度から開講した。これは、1グループあたりの学生数を7~8人とした13グループで編成されており、各グループには、テューター的役割を担う教員1名を配置して、指定した生物学の教科書「アメリカ版 大学生物学の教科書」を、学生同士で解説し合うゼミである。担当教員は、学生の学修補助をするとともに、学生に教員自身の医学生物学研究の面白さを語ったり、学生が実験を見学することで、学生の研究意欲を掻き立てようとする試みである。

2.研究志向の学生に対する選択科目の設置と少人数教育 3年次生の学生を対象に、基礎系および臨床系の研究室での研究に参加する「研究室配属」(4週間)を実施している。研究室への学生の振り分けは学生が主体となって行い、担当教員の都合等も考慮して、研究室あたり1~9名程度の学生が研究を行っている。新カリキュラムにおいては、研究紹介を主とする内容に変更して期間を短縮する予定である。その一方で、研究志向の学生には、1~4年次のどの時期でも研究に参加できる「研究実践コース」を選択科目として開講し、参加期間の長さにより単位が付与されることになっている。3年次生を対象に、学内外の講師による研究紹介や動物実験施設における実験を体験する「アドバンストコース」を実施している。新カリキュラムにおいては、アドバンストコースをより実践的な内容に変更し、短期集中の開講となる予定である。

3.研究者勧誘についての取り組み : 4年次生を対象に、基礎研究の魅力を伝えるリサーチ・マッチング(研究者勧誘に係る説明会)を実施している。教授等のベテラン研究者や若手研究者が演者となって、基礎研究の魅力を伝える内容となるよう工夫している。新カリキュラムにおいては、リサーチ・マッチングは4年次生に加えて、1年次生の「医学入門」(前記の1)でも行い、学生の医学研究への興味を掻き立てるよう努めている。また、京都大学、神戸大学、滋賀医科大学、福井大学の四大学が合同でMD研究者養成を図るべく、年に一度集まり、さまざまな活動を行う「四大学合同リトリート」を開催してきた(平成23年度から平成27年度までの計5回)。企画運営は学生が主体的に行い、学生主体の研究発表、意見交換、交流会、そして一流研究者の講演会などが行われた。

4.Advanced Training of Medico-research (ATM) プログラム 本学の医学系研究科博士課程へ進学して研究を行い、研究医になることを希望する学生に対し科目早期履修制度を設けている。これは、医学科4~6年次生のうちに博士課程科目の講義を受講し、本研究科入学後に大学院の単位として認定する制度である。また、初期研修期間中に大学院博士課程を同時履修する制度も設けており、初期研修医にも研究医としてのキャリアパスの機会を提供している。これらの制度を利用した場合、博士課程1年目の授業料が優先的に半額免除(免除人数の制限あり)される特典もある。なお、医学科卒業後に引き続き大学院に進学することで、通常よりも2年早く博士号を取得することも可能となる。(下図)。