1. 入学時の研究医志望学生のリクルート
横浜市立大学医学部医学科の入学試験では、現在一般入試枠60名、指定診療科枠5名、地域枠25名(推薦入試枠5名を含む)で入学選考を行っており、残念ながら研究医養成枠の入試がありません。また本学の他学部から研究医枠として受け入れを行うことが案として出されていますが、現在医学部への編入システムが無いこともあり、学内で正式に議論されていません。
2. 医学科カリキュラムの中での研究医養成の取り組み
横浜市立大学が定める卒業時のコンピテンシーとして、(1)プロフェッショナリズム、(2)医学知識、(3)医療の実践、(4)対人関係とコミュニケーション能力、(5)医療と社会、(6)生涯学習、(7)医学の進歩への貢献に向けた準備、が挙げられています。特に、(7)医学の進歩への貢献に向けた準備、に医学研究に関わる教育成果を定めて、1年次の教室体験演習、4年次での研究実習であるリサーチ・クラークシップを実施しています。そこでは、「リサーチマインドの涵養」を目的とし、「未解決の医学的課題を認識し、科学的探究の意義を理解のうえ、その解決に向けて貢献する準備ができている」ことを目指しています。
1年次の教室体験演習では、基礎系、臨床系の各教室へ少人数で配属され、主に臨床研究を含む医学研究を体験します。
また、4年次では「未解決の課題に対する意識を常に持ち、積極的に取り組み、科学的な思考で真実を見極める努力を怠らない、物事の本質に迫ろうという姿勢」の育成を目的とした研究実習であるリサーチ・クラークシップ(研究実習)を前期に実施しています。基礎医学教室および臨床医学教室に15週間所属し、医学研究に主体的に参加し、それを通して、現在の医療がこれまでの膨大な医学研究の上に成り立っていることを知り、医療人として医学知識や医療技術を駆使できるだけでなく、今後の医療レベルの向上に対して自分自身がどのように貢献できるかを考え、科学者として医学研究を実践していくための考え方や技術を学習していきます。
リサーチ・クラークシップでは、15週間の研究実習期間終了後に同級生や教員の前でのプレゼンテーションがあり、それが評価されます。リサーチ・クラークシップが終了した後にも、自主的に研究室に通い、引き続き研究を行う学生が増えており、さらに論文執筆や学会発表に進む成果も出てきています。学生の自主的な研究を更に奨励するために、学生の研究成果を評価する医学部長賞を設けるなどしてモチベーションを高める試みをしています。
なお、リサーチ・クラークシップでは、学内に留まらず、学外の機関の他、海外での活動の機会も拡充しつつあります。
2017年度学外活動の例:東京大学理学研究科、国立感染症研究所、国立成育医療研究センター、国立国際医療研究センター、神奈川県立こども医療センター、東京工業大学など
2017年度海外活動の例:シンガポール国立大学、シンシナティ小児病院、世界保健機関本部、サンフォード・バーナム・プレビス医学研究所、ウェイン州立大学、ハーバード大学医学大学院など。
しかし、リサーチ・クラークシップをカリキュラムに導入してから期間が浅いため、基礎研究者育成に関する成果を今後評価していく必要があると考えられます。
その他の試みとしては、関東四大学研究医養成コンソーシアム(東京大学・山梨大学・千葉大学・群馬大学)主催の「夏のリトリート」及び「MD研究者育成プログラムリトリート」に2013年から毎年教員と学生(3〜6名程度)が参加し、交流を促進しています。
また、6年次の臨床実習の中で、診療科を自由選択できる期間(2週間)を用意していますが、その中で解剖学、生理学等を選択する事も可能です。
3. 卒後のキャリア形成を含めた今後の取り組み
先日の学内会議にて、横浜市立大学研究キャリア育成プログラム(案)なる提案がありました。多様なキャリア、多様な人材育成の支援を目的に、大学の教育資源を使用して行える仕組みの提言がされています。その中では、医学部と医学研究科の課程を融合させるM.D.-Ph.D.コースの設置検討、初期研修との並行、新しい専門医研修との並行、専門医取得後の研究環境の整備などに加えて、卒業後すぐに研究キャリアを開始できるような仕組みの提示がありました。いわゆる狭義のM.D.研究者コースに属するかもしれません。本学に勤務する基礎研究者のなかには、卒後すぐに教員として雇用され、キャリアをスタートさせたものも少なくありません。過去の実績の評価も含め、今後の継続的な検討が必要と考えています。
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