*第42回*  (H29.10.16 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は岐阜大学での取り組みについてご紹介します。

岐阜大学医学部における研究医養成の取り組み
文責 : 岐阜大学医学部 副学部長・腫瘍病理学教授 原 明 先生

 基礎医学系研究室に在籍する医学部出身の研究医は全国的に減少傾向にありますが、岐阜大学医学部においても、臨床研修が義務化され、卒業直後に研究医となることが困難となってからは減少傾向が顕著です。基礎研究に従事する後継者を育てることができなければ将来の研究活動の弱体化が避けられないという危機感のもと、岐阜大学医学系研究科・医学部憲章に「研究基本戦略」を置き、様々な施策により優れた若手研究者の育成に努めています。

 以下に「研究基本戦略」に沿った施策のいくつかを紹介します。

1)MD-PhDプログラム
 このプログラムは,前期プログラム(医学科在籍)と後期プログラム(大学院在籍)に分かれています。前期では医学科のカリキュラムと併行して大学院の教育・研究指導を受けます。一般学生と同様に、医学科卒業後,医師免許(M.D.)を取得します。続いて後期プログラムに進学し、博士の学位(Ph.D.)を取得するための研究を行います。後期プログラムは、医学科卒業後、すぐに大学院に進学する《コース1》、臨床研修を修了後、大学院に入学し研究を再開する《コース2》・《コース3》があります。いずれも大学院3年次に研究成果を学位論文にまとめ、学位審査を受けて早期の修了により3年間で学位の取得をめざします。さらに、後期プログラム在籍中には、下記に紹介する学部独自の奨学金制度に申請することができ、また、リサーチ・アシスタント(RA)として採用されるなど経済支援も優先的に受けることができます。
 なお,MD-PhDプログラムは、できるだけ早い段階から基礎医学の研究の機会を与え、将来の医学研究を支える人材を育成するための取り組みですが、本人の希望により、本プログラム修了後は、臨床医の道に進むことも可能です。

*関連サイト http://www.med.gifu-u.ac.jp/grad/grad-med/mdphd.html


2)研究者育成奨学金制度
 本学では平成20年度から学部独自の奨学金制度を創設し、奨学金を給付しています。対象は日本の医学部医学科を卒業し、本研究科医科学専攻の基礎医学分野に入学した者又は在学生、およびMD-PhD後期プログラム進学者です。ただし,社会人学生(常勤職員として勤務する者)は対象としていません。すでに奨学金制度を利用して巣立った研究医が数名います。奨学金の給付条件に岐阜大学医学部での研究者としての勤務義務がないため、岐阜大学のみならず、他施設研究機関においても研究医として活躍しています。したがって、この奨学金制度は広く研究医育成に貢献できているのですが、逆に言えば奨学金制度終了後の研究職としてのポジションが確約されていないため、本学で研究医としての将来設計が見通し難い側面があります。岐阜大学医学部の教員組織の将来構想として、医学部長・医学系研究科長裁量による流動性のある教員ポストを奨学金制度終了後の若手研究医に配分することが今後の課題として検討されています。
*関連サイト http://www.med.gifu-u.ac.jp/grad/grad-med/life.html

3)研究室配属
 カリキュラム「テュトーリアル選択配属」として2年〜3年次の10週間、学生を希望・選択する研究室に配属し、研究の重要性を体験させています。研究成果をポスターにまとめ、さらに学内のホールにて学生全員が出席した上での学会プレゼン形式による発表会を行っています。配属先の教員による相互評価・投票により優秀発表グループに対して表彰を行っています。

4)学生研究員
 この制度は、学部学生が早期に研究に参画することで、研究の面白さを体験し、医学研究を志す研究者を育てることを目標としています。1年次から参加でき、募集時期が、上記、3)研究室配属の履修時期と重なっているため、相乗効果により、モチベーションの高い学生が集まるようになってきました。学生研究員に採用された者には、課外時間や休業期間を利用して行った研究活動業務に対し、時間給により給与を支給しています。教員の研究活動の戦力となり、共著論文に名を連ねる学部学生も現れています。
*関連サイト https://www1.gifu-u.ac.jp/~patho1/260.html

5)学部学生の企画・計画する研究支援
 平成26年度から、MD-PhDプログラムあるいは学生研究員の学部学生が主体となって計画し実施する研究に対して、学生が所属する研究室に研究費を助成しています。この研究助成費を活用して、学生は指導教員とともに学会発表に積極的に参加しています。