*第44回*  (H30.2.28  UP) 前回までの掲載はこちらから
研究医養成情報コーナートップページへ戻る
今回は大分大学での取り組みについてご紹介します。

大分大学医学部における研究医養成の取り組み
文責 : 大分大学医学部副学部長(研究担当) 小林 隆志 先生

 大分大学の研究目標として、「1.大分大学は,創造的な研究活動によって真理を探究し,知的成果を大分の地から世界へ発信する。」、「2.大分大学は,広い分野の学際的な研究課題に対して,総合大学の特性を活かし,学の融合による新たな学問分野の創造を目指す。」を掲げている。その中において医学部は、最新の学術を教授・研究し、高度の医学及び看護学の知識と技術並びにそれらの本義を見失わない 道徳観と、それを支える豊かな教養を身に付けた医療人及び研究者の育成を目標としている。医師には病める人を全人的、多面的に診ることのできる能力に加え疾病を科学の目で観察し評価、批判する能力も求められる。医学研究者・研究医になる為には、これまでに積み上げられてきた幅広い医学知識を習得するだけでなく、医学、医療をサイエンスの側面から見ることのできる能力を養うことが肝要である。
 卒前教育では4年次生の学生を対象とした研究室配属において、学生は研究室に身を置き真理を追究するサイエンスの面白さを通じて、国際的な視点、科学的論理的思考及びリサーチマインドを修得する。さらに、医療の発展における医学研究と倫理の重要性についても学ぶ。これらを通じて、幅広い視野を養い、自ら考え・学ぶ自主性を伸ばし、豊かな人間性を高める。
 研究室配属では、特定の研究テーマに焦点を絞り、それを行う研究室で実際の研究活動に従事し経験を深める。学生は、様々な研究テーマの存在について知り、それらのテーマを解明するための方法論を実践し、発見の喜び、研究者の苦悩、研究者間の交流や情報交換などに直接触れる機会を持つ。研究室で行われている研究・実験の補佐から共同実験者としての活動、実験やフィールドで得られたデータの処理や解析などを指導教員、大学院生とともに行い、さらに可能であれば学会発表、論文発表なども体験する。また医学・医療の現況を国際的な視点で見ることのできる機会として、国外に積極的に飛び出して見聞を広げることも推奨している。基本的に配属先は、学内の講座であるが、学内担当教員を介し、国内外の学外機関に配属することも可能である。さらに、希望者に対しては1年次生からの先行配属や、プログラム終了後の継続も可能である。本プログラムは、平成15年度の開始当初より、学生の自主性を重んじている点が特徴である。6月の配属先の決定から、10月の発表会の運営・報告集の作成まで教員の指導を仰ぎながら全て学生主導で行っている。これらを通じて、研究のまとめ方や発表の方法を学ぶだけでなく、発表会の運営を経験することで将来の学会運営を担う人材が育成される。さらに、発表会では優秀な成果を挙げた学生を表彰することで、将来の研究への意欲を高める。本プログラムを経て、将来世界で活躍する医学研究者・研究医が輩出されることを期待する。

 一方、卒後教育では、若手研究者・研究医の研究を奨励する為、中塚医学賞(大分大学医学研究表彰)及び医学部留学支援制度を設けている。平成23年度に創設された中塚医学賞では、学術論文を発表した若手研究者・研究医の中から優秀な成果を挙げた者を表彰している。これにより若手研究者・研究医の向上心を刺激し、リサーチマインドを育成している。また、平成25年度より開始した留学支援制度は、若手研究者・研究医による国際学会発表や、短期留学(1ヶ月以内)・長期留学(3〜12ヶ月)をサポートしている。毎年、10〜20名の短期留学生及び2〜3名の長期留学生を支援し、地域に根ざしながらもグローバルで活躍できる若手研究者・研究医の育成を推進している。


 
  研究室配属発表会の様子