名古屋市立大学医学部では、「人類の未来に貢献する医学研究を行い、その成果を社会に還元する」ことを理念・目的の一つとして、その達成のための具体的な計画を「医学研究科・医学部未来プラン」として策定しています。
以下に、本学医学部における研究医養成に関する主な取り組みをご紹介致します。
教養教育科目
教養教育科目のうち、研究医養成に関わるものとして以下の科目があります。
○NCU先端科目(1年次)
1年次前半に一般教養科目として設定されている選択科目ですが、医学部生の多くが履修しています。医学部と薬学部の教員が、医療系の研究について、わかりやすく解説します。入学直後に本学で行われている最先端の研究に触れることで、医学研究への関心を高めます。
○自然科学実験(1年次)
必修科目として、ピペットマンの使い方など基本的な実験手技を学ぶことができます。
専門教育科目
専門教育科目のうち、研究能力の育成に関わるものとして以下のものがあります。
○学術論文入門(2年次)
研究をする上で必須となる英文論文の検索・読解能力を習得させることを目的としています。図書館での文献検索やPubMedの使い方を学んだ後、7〜8名の小グループに分かれて総説論文や原著論文を12コマ以上輪読し、最後にレポートを作成します。
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基礎自主研修における研究の様子 |
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基礎自主研修発表会のポスター会場 |
○Scientific Writing and Presentation(3年次)
医学領域の調査・研究成果を世界の研究者に適切に伝えられるようになるため、英語による科学的文書の作成とプレゼンテーションの基本知識と技法、論理、科学的な文章を作成することの醍醐味や面白さを学びます。この科目で学んだ技術は、「基礎自主研修」での成果発表に生かされています。
○先端研究(3年次)
医学研究科分子医学研究所を中心に行われている研究について講義で学び、基礎医学研究についての理解をさらに深めます。
○神経科学(3年次)
神経科学関連分野の教員が、神経科学の様々なトピックスについての話題を提供します。神経科学領域の分子・細胞レベルでの基礎知識と神経疾患の病因を理解するとともに、それに関連した研究について学びます。
○基礎自主研修(3年次)
基礎自主研修は、三年次の後半に全ての学生が基礎系の研究室に配属されて、約3ヶ月の間、基礎研究に参加するものです。海外の提携大学や、国内の本学以外の大学・研究所で研究を行うこともできます。終了時には発表会があり、全員がポスター掲示およびスライドによる口頭発表を行います。発表のタイトルと抄録およびポスターは英語で作成します。発表会には2年生も参加し、教員による審査が行われます。毎年レベルの高い発表が多く、基礎自主研修で得られた成果を元に、学会発表や論文発表をする学生も少なくありません。優秀発表者は、新入生歓迎会で表彰され、学会発表をする際に旅費のサポートを受けることができます。
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MD-PhDコース(前期コース)学生による発表風景
(全国学生合同リトリート) |
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MD-PhDコース(前期コース)学生の研究の様子 |
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MD-PhDコース(後期コース)進学者の研究の様子 |
MD-PhDコース
「MD-PhDコース」は、医学研究を志向する医学部学生に対し、早期に研究の機会を与えることによって、医学・医療の急速な進歩と社会情勢の変化に対応できる若手医学研究者を養成することを目的として、平成20年度に設立されました。学生の意見を取り入れて少しずつ改革を進めており、現在合計26名(前期コース21名、後期コース5名)が在籍しています。
このコースは、学部期間の前期コースと、大学院期間の後期コースに分かれます。このコースを希望する学生は、前期では、学部の1年次~4年次9月末までにコースに参加し、希望する基礎医学分野の研究室で研究に従事します。6年次にそれまでの研究成果を学術雑誌または学会で発表し、審査会で前期修了の審査を受け、合格すると前期コース修了となります。
後期コースに参加する学生は、医学部卒業後8年以内に大学院に入学し、基礎系または臨床系の研究室で研究を行います。医学部卒業後、名古屋市立大学病院臨床研修プログラムで初期研修を行いつつ、臨床研修2年目から後期の博士課程へ入学し、3年次に学位審査を受けると、卒後4年間で臨床研修をしながら学位を取得することが可能です。
尚、MD-PhDコースの学生は、川久保学生奨学金に応募することができ、採用されると以下の支援を受けることができます。
MD-PhDコース前期コース(医学部学生):1名につき10万円が授与されます。
MD-PhDコース後期コース:博士課程の大学院生のうち基礎系分野に所属する者2名以内に対して、大学院入学金および授業料3年分相当額の奨学金が授与されます。
現状と課題
本学医学部卒業者の進路は、初期臨床研修を受け、その後臨床医になる場合がほとんどです。従って、本学における「研究医」養成の取り組みにおいては、基礎医学の研究者を養成するのみでなく、高い研究能力を有する臨床医すなわちphysician
scientistを増やすことが重要な目的となっています。医学部卒業後一定期間の臨床経験を経て、大学院博士課程に進学する者も多く、基礎系の教室で学位取得のための研究をする場合もあります。大学院でトレーニングを受けた研究者が、学位取得後も研究を継続するためには、臨床と研究を両立させるためのサポート体制が必要と考えられます。
本学のMD-PhDコースは、学生への負担が比較的小さい制度であるため多くの学生が医学部在学中から参加して、優れた研究成果を上げる者も出ています。こうした学生の研究意欲を高めて、大学院への進学を促し、研究医へと育成するためには、若手研究者が活躍できる研究・教育環境をさらに整備する必要があります。
(資料)
名古屋市立大学医学部MD PhDコース
http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/w3med/education/md-phd.html
川久保学生奨学金
http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/w3med/education/lifesupport.html
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