*第52回*  (2019.6.25 UP) 前回までの掲載はこちらから
研究医養成情報コーナートップページへ戻る
今回は東邦大学での取り組みについてご紹介します。

東邦大学医学部における研究医養成の取り組みについて
文責 :  東邦大学医学部 盛田 俊介 副医学部長・大学院運営委員長
三上 哲夫 病理学講座教授・医学部教育委員会委員長

「医学部のカリキュラムに於ける研究医養成の取り組み」
 東邦大学医学部では、医学生のresearch mindの涵養のために、2012年度より2年生を対象とする「先端医科学演習」の科目運営を始めました。その科目運営の経験を踏まえて、2016年度のカリキュラム改訂時に、「先端医科学演習」を発展的に解消し、医学生が複数年かけて実験など行い論文を執筆する「医学論文―原著コース」に改編いたしました。以下にその概要を示します。

「先端医科学演習」として
 東邦大学医学部の当時のカリキュラムでは、1、2年次が医学準備科目と基礎医学、3年次以降に臨床科目を学ぶというスケジュールでした。Research mindの涵養を目的として、2011年度入学生から医学部2年生に対しての新しい演習科目として、基礎医学のラボにて研究手法などを実際に経験する「先端医科学演習」を立ち上げました。具体的には、医学生の希望調査と基礎医学講座の受け入れ人数により、学生を数名ずつのグループとして、2年次の冬(12月~1月)に午後の時間6日間(連続する6日ではなく、3~4週間のうちの6日として)の演習(総計約20時間)を行いました。講座により実際に行うことはそれぞれ異なりますが、各研究室の特徴や研究テーマを活かして、実際の実験手技、研究用機器を使用してのサンプルの解析、結果の解釈や討論などを組み込んだ演習として設定されました。

「医学論文」科目について
 上記の「先端医科学演習」は5年間行われましたが、学生がいわゆる「お客さん」になってしまうこと、予定された実験だと結果が予測されてしまうこと、などのいくつかの問題点が指摘されました。そのため、2016年度のカリキュラム改訂時に、「先端医科学演習」からさらに発展させ医学生のいわゆる卒業論文としての位置づけにすべく、およそ1年間の議論を行いました。大まかな条件としては、
(1) 教員が主題を提示して、学生は希望調査に基づき一人一人に主題と教員が決定される。
(2) 原著型論文と総説型論文とを設定し、どちらかで1本を執筆する。
(3) 2年次の夏に希望調査と主題の決定を行い、4年次の冬を論文提出の締切とする。
 2019年5月現在、原著型論文を選択した学生は、科目名「医学論文-原著コース」のもと、講座、テーマにより異なりますが、定期的に研究室に通い実験などを行っている段階です。4年次の冬(2019年12月)に論文提出があると、その後、医学部教育委員会で論文の評価を行います。また、論文提出した学生の研究発表会を行い、優秀論文の表彰を行う予定です。
                                       (文責:三上)

「大学院医学研究科特進コース」
 東邦大学医学部は、成熟社会の健康医療を推進できる人間的な温かさと高い実践能力を持った「より良き臨床医」の育成を目指しています。「より良き臨床医」の責務は、日進月歩の医学を医療として病める人に還元することにありますが、これには探究心を持ち学問を続け、課題解決ができるフィジシャン・サイエンティストであることが大切です。この実現のため本学では、基礎医学の将来を担う医師ならびに研究マインドを有する臨床医の育成を目指す大学院医学研究科特進コースを設置し、医学部と大学院との連携により学部教育と医学研究科博士課程との同時履修を低学年から可能としています。

 

大学院医学研究科特進コースの対象者は次の6項目すべてを満たしている学生としています。
(1) 医学論文-原著コース(基礎系)を選択している。
(2) 大学院医学研究科科目等履修生に登録している。
(3) 初期研修医として東邦大学医療センター病院(大森、大橋、佐倉)にマッチングしている。
(4) 大学院医学研究科基礎系専攻科目を志望し、特別選抜入学試験に合格している。
(5) 卒業試験に合格している。
(6) 医師国家試験に合格している。

大学院医学研究科科目等履修生 (科目等履修生) とは
 科目等履修生とは、大学院医学研究科が開設する授業科目のうち一又は複数の授業科目を履修し、単位を修得できる制度で、修得単位の有効期限は10年間です。大学院生は、共通必修科目6単位と共通選択科目4単位 (1単位=8時限、1時限=90分) を、毎週金曜日の18時から2時限ずつ40週間にわたり受講する必要がありますが、科目等履修生になることで、医学部在学中に共通必修科目4単位と共通選択科目4単位を履修して単位を修得することができます。大学院入学後には、共通必修科目である医学教育コースの2単位を受講するのみで全ての共通科目の単位が修得できますので、臨床研修に支障は生じず、初期臨床研修の到達目標の達成が可能です。

大学院医学研究科特進コースの特典
 大学院医学研究科特進コースにはいくつかのメリットがあります。大学院入学試験では、特別選抜の対象となり、TOEFL iBT等の英語資格試験で基準点以上を取得することにより面接試験が課されるのみになります。大学院に係る費用は、入学検定料、入学金と授業料の全額が免除されます。医学部生の間に科目等履修生として大学院共通科目の大半の単位を修得していますので、多忙な初期研修医期間でも学部時代からの研究を継続しつつ、臨床医としての視点も加わった質の高い研究に発展させることもできますので、この研究成果を纏めて学位申請に繋げることが可能になります。

「おわりに」
 本学の大学院医学研究科特進コースは始まったばかりです。現時点で4名の学生が医学論文-原著コース(基礎系)を選択し日々研究に取り組み、そして、1名が科目等履修生として大学院講義を受講しておりますので、我々は彼らの成長を楽しみに声を掛け、そして見守っています。本学医学部は、今後も医学部と大学院との連携のもと、探究心を持ち学問を続け課題解決ができるフィジシャン・サイエンティストの養成に努めることが責務であると考えています。

                                              (文責:盛田)