*第54回* (2019.10.25 UP) | 前回までの掲載はこちらから |
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今回は東京慈恵会医科大学での取り組みについてご紹介します。 |
東京慈恵会医科大学 コース医学総論 ユニット医学研究Ⅰ~Ⅵ | |||||||||||||||||
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1.はじめに 私が学生時代(1975年から1981年)に習った基礎医学の教授の中には、ご自身が学生時代に基礎医学系の研究室の学生班として、学生時代から基礎医学講座で実験をしていた方が何人もいた。私も解剖学実習が終わった医学部4年生(当時の言い方ではM2)の4月に第三解剖学教室の学生班となって、学生時代にご遺体の解剖だけでなく、光学顕微鏡、電子顕微鏡そして組織化学の実験手法を学んだ。このように慈恵医大では古くから「学生班」という制度があり、学生によっては講座を渡り歩き、いろいろな手法を身に付けることができた。私の研究室で電子顕微鏡と凍結超薄切片法を学んだ学生は、1年後、微生物学講座に籍を移し、分子生物学の手法を身に付けた(彼は現在、本学の解剖学の教授である)。このように、本学では学生は自由に基礎医学研究室に出入りする文化があった。しかし、基礎医学研究に進むものが激減し、この減少を少しでも食い止めるために、「学生班」という制度をフォーマルなもの(単位認定や大学院への進学への特典など)にしようと、2015年から1年生から6年を通じた科目(本学ではユニットと呼ぶ)「医学研究」を自由選択科目(卒業単位には組み入れない)として開講した。 2.ユニット医学研究 ユニット医学研究のシラバスから引用する。「本学は本学出身の基礎医学研究者を養成したいという強い思いがある。ユニット『医学研究』は、卒前教育における研究参加の促進と、研究医の養成を目的として平成27年度より設置された。1年次から6年次の全学生を対象としている。学生時代から医学研究を行いたい学生が、本ユニットで単位を積み重ねることで、本学大学院の基礎医学系および社会医学系に進学する場合、大学院における種々の優遇措置を受けることができる。この優遇措置は単位取得者が本学の大学院に入学するときの選抜時に大学院委員会により単位互換が審議される。」 ユニット医学研究を選択する場合は、研究科教授(臨床を含む全領域)からユニット責任者へ「医学研究申請書」が出されユニットに登録される。学生は研究科教授もしくはその研究室のスタッフの指導を受け、研究を開始する。このユニットでは「成果主義」により単位を認定する。論文を作成した場合は、査読制度のある学術研究誌に発表した場合に限り、英文論文の筆頭者ならば6単位、共同研究者は2単位、日本語論文の筆頭者の場合は4単位、共同研究者は1単位が与えられる。学会発表した場合は、学内学会である成医会を含め公的な学会であれば、英語、日本語を問わず筆頭者の場合は2単位、共同研究者は1単位が与えられる。 卒業時までにユニット医学教育で6単位を取得し、研究科教授から推薦を受けた学生は、大学院博士課程の基礎系講座(総合医科学研究センターを含む)の標準修業年限を1年短縮できる権利を得る。また、医学研究に登録した学生は、授業時間外であれば大学院の共通カリキュラムを受講することができ、卒前で受講した共通カリキュラムは受講履歴として記録し、大学院出願時に共通カリキュラムの単位として、授業科目ごとに単位互換することができる。さらに、奨学金に関する特典もある。 ユニット医学研究履修中の学生が学会出張した場合、ユニット責任者が認めた学会であること、学会発表(口頭発表・ポスター発表)の筆頭者であること、会計年度内での学会参加であること(ただし、3月開催の学会の場合は、次年度申請できる)、の条件が整えば、学会出張旅費と学会参加費を補助している(このユニットのために年間100万円の予算を確保している)。予算内であれば、海外の学会への補助も行っている。余談ではあるが、学生が学会の懇親会の費用も請求してきたことがあり、請求は却下されただけでなく、ユニット責任者からお説教という補講も受講することとなった。 写真1 成医会での発表風景(医学科4年生と学長) テーマ:エトポシドのばく露によるヒト大腸がん細胞HT29が分泌する細胞外分泌小胞の構成タンパクの変化 写真2 3. MD-PhDコース(大学院博士課程)
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