*第6回*  (H24.4.26 UP) 前回までの掲載はこちらから
研究医養成情報コーナートップページへ戻る
今回は東京医科歯科大学での取り組みについてご紹介します。

東京医科歯科大学医学部の研究医養成の取組
     
(文責:東京医科歯科大学 細胞生理学分野 教授 水島 昇 先生)

東京医科歯科大学医学部では、次の3つのコースを設けて研究医養成に取り組んでいる。「MD-PhDコース」は原則として医学科の第4学年と第5学年の間に大学院博士課程を組み込んだコースで高度な大学院教育により早期に学位取得を目指すものである。「研究者養成コース」は研究医となることを前提とした学部・大学院一体型プログラムで、コース修了者は学内の特任助教ポストを利用することができる。「研究実践プログラム」は第2学年以降を対象とした研究入門プログラムであり、より気軽に研究に接することを目的としたものである。これらを選択したり組み合わせたりすることで、多様な研究医養成のプログラムを可能としている。

1.MD-PhD(医学研究者早期育成)コース
コース設立の趣旨
 医学研究の最先端で世界をリードする優れた医学研究者を育成するために、意欲ある医学部医学科学生を対象として、早期医学研究トレーニング特別プログラムを推進するコースとして、平成16年に設置された。
 臨床研修医制度必修化の導入によって、多くの学生は卒後まず臨床研修を修了する。そのため、たとえ研究指向のある学生であっても、最短でも大学入学後9年目にして初めて大学院を受験することになる。医学科第5-6学年と初期研修の合計4年間は研究に触れない空白時期となる。医学・生命科学は今日極めて多様化し、かつ広大な研究領域となっており、また研究手法字体の高度化にも著しいものがある。20代前半の知力・体力の充実した時期に集中的に医学研究者としての思考法、知識、技術を習得するトレーニングを開始することは、基礎医学研究者、臨床医学研究者のいずれにとっても有意義なこととなる。そこで、本コースでは医学部医学科第4学年あるいは第5学年終了後、直ちに大学院博士課程に進んで3年間医学研究に従事し、博士論文を完成させて博士(医学)の学位を得る。その後本人の希望により医学部医学科にもどり残りの学部教育を受けることにより、医学部を卒業し、医師免許を得るというプログラムである。
コースの概要と現状
1.医学部医学科第4学年あるいは第5学年終了後に医学部を休学し、医歯学総合研究科博士課程に入学する。
2.大学院教育期間は3年あるいは4年とし、3年で修了することをめざす。
3.博士論文を完成したものは博士論文審査を行い、合格者には博士(医学)の学位を授与する。
4.博士課程修了後は再び医学部に戻る。
5.本制度により博士課程に入学したものには規定の奨学金給付を行う(現在8万円/月)。
6.定員は若干名で、これまでの参加学生は以下の通りである。
平成16年度:4名  平成19年度:1名  平成22年度:2名
平成17年度:2名  平成20年度:1名  平成23年度:2名
平成18年度:1名  平成21年度:2名

2.研究者養成コース
コース設立の趣旨
 本コースは平成22年度の研究医養成のための定員増をうけて開始した学部・大学院一体型カリキュラムである。本学では、医学科第4学年時に5ヶ月間にわたるプロジェクトセメスター(基礎配属)を行っており、学生はここで初めて本格的な研究に触れることになる。実際、多くの学生は研究の面白さや重要性に気づき、その後さらに研究を継続して論文執筆に至る学生もいる。そこでこのような研究指向の強い学生に対して、基礎医学研究者養成を中心とした専門教育を行い、研究に必要な知識、考え方、技術を習得させることを目的としている。
 本コースも医学部医学科第4学年あるいは第5学年終了後に入ることになる。このコースでは、上記MD-PhDコースを利用してもよいが、通常通り6年間の医学部カリキュラムを終えてから大学院に進学してもよい。また、研究医養成を強力にサポートするために医学部・大学院在籍中は奨学金が貸与される。これは大学院修了後研究医となる場合は、返済が免除される。さらにこのコースでは、大学院修了後に最長3年間までの特任助教ポストを付与することになっており、金銭面やポストなどの不安をもたずに研究に没頭できる仕組みを整えている。基本的には研究者となることを前提としたコースである。
コースの概要と現状
1.定員は2名。医学部医学科第4学年あるいは第5学年後期に選抜を行う。応募者はプロジェクトセメスター(第4学年後半の基礎配属)などで関連基礎研究を半年以上行っていることが望ましい。
2.医学部在籍中は配属先の医学科基礎系分野において、授業時間外を利用して研究を行う。
3.大学院教育期間は3年で修了することをめざす。大学院の所属研究室は本学医歯学総合研究科医学系基礎系(研究所も含む)または日本医科大学大学院医学研究科基礎系(研究医定員枠のコンソーシアム)とする。
3.研究者養成コースのミーティング(現在はMD-PhDコースと合同開催)で研究進捗状況を発表する。
4.在籍中は月10万円の奨学金貸与(返還免除制度有)を受けることができる(MD-PhDコースの場合は月8万円(ただし返済義務無し))。
5.学部卒業後直ちに大学院に進学するコースと、MD-PhDコースを利用するコースのいずれも対象とする。なお、学部卒業後2年間の臨床研修をうけることも可能である。
6.コース終了後は研究者として医学研究を継続することが義務づけられ(研究機関は国内外を問わない)、奨学金貸与年数と同年数以上の研究を行うことが、奨学金の返済免除の要件となる。
7.コース終了後に本学医学部医学科に属する分野において研究を継続する場合は、最長3年間の特任助教のポストを得ることが出来る。
8.平成23年度は3名(第4学年1名、第5学年2名)の参加があった。平成24年度の新第4学年は3名が参加する予定。

   
   研究者養成コースミーティング

3.研究実践プログラム
コース設立の趣旨
 医学科第4学年時のプロジェクトセメスターには5ヶ月間という長期間を割いているが、将来研究を職業とすべきかどうか、あるいは自分に研究の適正があるかどうかを判断するには決して十分とは言えない。この数ヶ月の経験だけでは、第4学年終了時に募集されるMD-PhDコースや研究者養成コースへの応募を躊躇する学生もいると考えられる。そこで、より早期から研究に触れる機会をもてるよう、平成24年度から「研究実践プログラム」を開設することとなった。平成23年度より市川キャンパスでの教養課程が1年間に短縮され、新カリキュラムの第2学年以降は湯島キャンパスで通常授業をうけるため、基礎系研究室へアクセスしやすくなったという好都合もある。上記のMD-PhDコースや研究者養成コースと異なり、「研究実践プログラム」はもっと気軽に参加できる基礎研究の入門プログラムである。実習ではなく、実際の研究を体験することがこのプログラムの目的である。
コースの概要と現状
1.対象は医学科第2学年以上で、定員は学年全体で10名程度とする。
2.配属先の医学科基礎系分野で、授業時間外を利用して研究を実践する。
3.定期的に開催されるリサーチミーティングに参加して、学生同士で議論する。
4.配属先は毎年登録することとし、研究室の変更も可能です。
5.選択実習科目として単位認定を行う。
6.奨学金は支給されない。
7.本格的に研究者を目指す場合は、第4学年終了時に、より専門的な「研究者養成コース」や「MD-PhDコース」へ応募することができる。

ホームページ
MD-PhDコース:http://www.tmd.ac.jp/artis-cms/cms-files/20100314-130745-3662.pdf
研究者養成コース:http://www.tmd.ac.jp/artis-cms/cms-files/kenkyusya_yosei6.pdf