*第60回* (2020.10.26 UP) | 前回までの掲載はこちらから |
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今回は関西医科大学での取り組みについてご紹介します。 |
関西医科大学研究医養成コース | |||||||||||||||
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1. 概要 関西医科大学は、1928年(昭和3年)の創設以来、90年以上にわたり八千数百名を超える医師を輩出し、卒業生は関西圏のみならず全国レベルで臨床医として活躍されています。そのような背景もあり、入学する学生のほとんどが臨床医を目指しています。しかしながら、急速に発展する医学の進歩に対応できる医療を実践していく為には、研究マインドを持った医師および自ら研究を進める研究医の養成は大学としての重要な使命と考えています。本学はこれまで、2003(平成15)年には文部科学省21世紀COEプログラムに採択されるなど、私立単科医科大学のなかでも、研究に対する実績が高く評価されてきました。2013(平成25)年には、西日本でも有数の規模と実績を誇る附属病院が位置する枚方市に、大学学舎を移転・統合し、最先端の研究環境を整備することで、さらなる研究力の向上にむけた取り組みに弾みがつきました。 一方、初期臨床研修制度の必修化や専門医制度の導入により、全国の医科大学・医学部においては、学生・卒業生の臨床志向が強くなる反面、大学院進学を希望する学生の数が年々減少傾向を示し、医学研究に対するモチベーションの低下が懸念されています。そこで本学は、2013年の枚方学舎移転を機に、学部学生における研究マインドの一層の醸成を目指した、「研究医枠」二名の増員をともなう「研究医養成コース」の設置申請をおこない、これが認められました。これまでに、昨年4名、本年は3名の卒業生を輩出し、現在は、総数25名の第3学年〜6学年の学生が研究医養成コースに所属し、放課後や休日を利用して学内の各研究室で研究を進めています。 2. 特色 (1)研究マインド育成プログラム 本学では入学時から研究医枠学生を決定することはせず、入学者の中で研究活動に興味がある学生を対象に、少人数で実施する第1学年セミナー科目のひとつとして「基礎医学セミナー」(今年度から「リサーチマインドの実践セミナー」と名称変更)を開講しています。このセミナーにおいては、“遺伝子”や“免疫”等の分野における基礎的な知識や研究に関してセミナー形式で学ぶと共に、学内研究者を招いて学内研究グループによる最新の研究についての紹介をおこなってもらっています。昨年は、1学年特別講義の講師として来学された山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所所長(本学客員教授)が講演後、1学年から6学年までの同セミナー履修者に、エールを送って下さる機会を得ることも出来ました。(写真1)
このセミナーの履修者を軸に、1,2学年の2年間、第3学年からの「研究医養成コース」の準備プログラムとして「研究マインド育成プログラム」が設定されています(図1)。このプログラムの第1の目的は、研究にある意味“あこがれ”を持って入学してきた学生に、研究の“楽しさ”を知ってもらうことです。そのために、次に挙げる「関西5医科大学・医学部コンソーシアム合宿」を含め、大学内外の研究者や研究に参加している様々なレベルの学生との交流を通じて、研究に対するモチベーションを活性化する活動を進めています。同時に、学生個々の興味に応じた研究室への紹介をおこなっており、毎年、2学年のレベルで4〜8人の学生が、「学生研究員」として、主に基礎医学系を中心とした研究室に出入りしています。
(2)関西5医科大学・医学部コンソーシアム 関西医科大学研究医養成コースのもう一つの特長は、近隣の国公私立医科大学・医学部と連携し、研究医を目指す学生の育成を図っているところです。2013年当初、奈良県立医科大学、大阪医科大学、兵庫医科大学を連携先大学として4大学コンソーシアムとして発足しましたが、2016年からは、神戸大学医学部が加わり、5大学コンソーシアムに拡充しました。 このコンソーシアムでは、毎年、8月あるいは9月に1泊2日で、コンソーシアム合宿を実施し、国公私立の枠を越えて同じ志を持つ学生が集い、より高いレベルでの刺激を享受できる機会としています。この合宿への参加者は、年々増加し、学生によるポスター発表やグループワークにより、学生は自らの研究活動を見直し、教員側も指導体制を考えるよい機会となっています。(写真2〜5)
(3)学生研究員制度 研究医養成コースの履修者のうち希望者には、申請に基づき毎年100万円の奨学金が貸与され、本学大学院を修了後、一定期間、研究医として研究業務に従事することで返済免除されることになっています。しかしながら、ほとんどの学生は将来の進路を制限される事を嫌い、貸与奨学金への応募を躊躇するのが現状で、これまでの申請者は2名にとどまっています。さらに、研究医養成コース開設1〜2年間は、この返済規程が理由で、研究医養成コースに進むと生涯基礎の研究室に縛られるという間違った印象を持つ学生が多数を占めました。 そこで本学では、大学院生のリサーチアシスタント(RA)に倣い、学生RA(今年度から「学生研究員」に名称変更)制度を導入しました。当制度は、学部生の間に少しでも研究に触れさせる機会を創出し、研究に関心のある学生の裾野を広げることを念頭に、指導教員の指示に従い研究を進めたり、研究の補助的業務を担うことに対して給付型奨学金を支給するものです。さらに、研究が進み、学会発表や原著論文の筆頭著者になれば、それとともに給付金額も増加するシステムで、学生の研究への意欲向上とモチベーション維持に効果を上げています。この制度の導入に伴い、研究医養成コースへの希望者は一気に増加し、現在、3学年、4学年ともそれぞれ10名近い学生がコースに参加しています。 (4) 学内研究助成 本学には長年にわたり、科研費制度と同様な審査方式で、講座・若手研究者・大学院生の研究プロジェクトをサポートする学内研究助成制度があります。学部学生の学会参加の際の旅費・参加費の捻出には苦労することもあり、この学内研究助成制度の対象に学生研究員を加え、採択された課題には旅費を含めた研究費を補助することで、学生自らの研究に対する自覚の向上と、学会参加の活性化を図っています。 (5) 関西医科大学学術祭 これまで、関西医科大学では、毎年、いくつかの学内研究グループおよび前年度の学位取得者の研究発表を「学内集談会」というかたちでおこなっていましたが、3年前より「学術祭」と名称を変更し、その対象を学内研究助成採択者および学生研究員奨学金受給者に拡大しました。その結果、ほとんどの「研究医養成コース」参加学生は、毎年、この学術祭で研究内容をポスター発表することになり、学内全域への研究活動の周知に加え、優秀者の表彰など、研究に対するモチベーションの向上に役立っています。 3. 問題点とそれに向けた取り組み 本学では従前より、学生の課外活動が活発で、多くの学生が複数の運動系クラブと文科系クラブを掛け持ちしています。従って、先輩学生に誘われるまま入ったクラブの活動に放課後や長期休暇の大部分の時間を拘束され、研究室から次第に遠ざかってしまう学生も度々見受けられます。更に、年々ハードルが高くなるCBTや医師国家試験に向けて、各種学内試験等、教務関連の制約が強くなる傾向があります。どのようなバランスで、これらに対応していくか、学生にとっても教員側にとっても大きな問題です。 幸いにして、入学時に研究に対する興味を持ち「研究マインド育成プログラム」に参加する学生は、勉学に対する意識も高く、これら学生をできるだけ早い時期に研究室に出入りするように動機づけることで、研究室の教員レベルで学生の生活指導や問題点の把握ができ、バランスを持った学生生活をサポート出来ると考えています。 また、学生間のタテの関係は強固で、上級生の成功体験や発言は下級生に強い影響力を持ちます。そこで、「屋根瓦方式」の研究医養成コースの活動形態を構築することで、学生間に研究を楽しむ機運が形作られることを期待し、学内における学生間の交流会を頻繁に計画し、学生同士あるいは教員との意思疎通を図る機会を持つように勉めています。 関西医科大学研究医養成コース: http://www.kmu.ac.jp/faculty/medical/curriculum/resident/index.html |