*第19回*  (2019.10.25 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は東北大学での取り組みについてご紹介します。

卒前卒後の医学教育における東北大学医学部、東北大学病院、地域医療機関の連携
文責 : 東北大学大学院医学系研究科 医学教育推進センター
加賀谷 豊 教授
 東北大学は、1907年に我が国で3番目の帝国大学として設立され、以来「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」を建学理念として掲げてきた。1915年に東北帝国大学医科大学として開設された医学部においても、医学研究を重視し(研究第一)、教育・研究・診療における公平性を重んじ(門戸開放)、診療や研究において人類の健康に貢献する成果を挙げること(実学尊重)を目標としている。一方、2013年の文部科学省「国立大学改革プラン・医学分野のミッションの再定義」により、本学医学部の重要なミッションとして「最先端の研究・開発機能の強化」とともに「東日本大震災被災地の地域医療復興への貢献」が掲げられている。本学医学部は建学以来、多くの医療機関と共に東北地方の地域医療を支えるとともに、卒前卒後の地域医療教育を充実させるために多くの地域医療機関と強力な連携をとり、その使命を果たしてきた。これを一層充実させ、卒後臨床研修を通じて医師の養成と地域医療のさらなる発展に寄与することを目的として、本学は関連が深い東北地方を中心とする地域医療機関と共に、NPO法人「艮陵協議会」を2008年に設立した。現在、その加盟病院は123に達している(図1)。
 

 卒前教育における地域医療機関との連携は、医学教育推進センターが中心となって実施している1年次の秋の地域医療体験実習に始まる。事前に学内において手指衛生・防護具着脱実習、心肺蘇生法実習、日常生活援助技術実習、車椅子実習などを行った後に、高齢者あるいは障害者の介護・医療を地域の医療機関、あるいは医療関連施設を訪問して体験的に学修する。訪問後には訪問先毎に発表と質疑応答を行い、体験を共有できるようにしている。また、1年次学生の希望者(2019年度は37名が参加)を対象として、東北大学病院総合地域医療教育支援部(石井正教授)が中心となり、東日本大震災により被災した福島県の浪江町(2019年9月現在、一部が帰還困難区域に指定)、二本松市において見学実習を行っている。

 地域医療実習に関しては、2017年度に前述の東北大学病院総合地域医療教育支援部が、学生が充実した地域医療実習を経験できるように実習先と実習内容の見直しを行った。この見直しに際しては、それまで地域医療実習として学生を受け入れていた関連医療施設において、地域包括ケアシステムなど医療制度上極めて重要な事項を含めコアカリに沿った充実した地域医療実習が実施されているか、学生の実習報告書をもとに綿密に検討した。さらに地域医療実習の充実を図る目的で、2017年10月に宮城県登米市の寄附による地域総合診療医育成寄附講座(石井正教授兼任)が設置され、地域医療実習拠点病院(登米市立登米市民病院)が指定された。同寄附講座には地域医療実習の専任教員2名が配置され、登米市立登米市民病院内に総合教育センターを設置し、4~6年次学生の地域医療実習を充実させている(図2)。

 

 一方、臨床研修に関しては、本学の60%を超える卒業生が東北大学病院を始めとする艮陵協議会加盟病院における臨床研修を選択している。東北大学病院における臨床研修においては、東北大学病院卒後研修センターが中心となり、前述の艮陵協議会加盟病院を始めとする東北地方を中心とする多くの地域医療機関と連携して、本学の臨床研修医が極めて自由度の高い研修プログラムを組めるようにしている。これにより、各臨床研修医が希望する将来のキャリアにできるだけ沿った臨床経験を積めるようにしている。さらには、開始されたばかりの専門医制度における専門研修プログラムにおいても、本学と艮陵協議会加盟病院を始めとする多くの地域医療機関が強い連携をとりながら、各専攻医が必要な臨床経験を充分に積むことができる体制をとっている。臨床研修の指導医の養成に関しては、艮陵協議会が東北大学病院と共催して、年2回の臨床研修指導医講習会を実施し、今までに921名の臨床研修指導医を養成している。本指導医講習会では、本学の教員が主催責任者と企画責任者を務め、艮陵協議会加盟病院を中心とする指導医がタスクフォースを務めている。2020年度からは、臨床研修制度が大きく変わり、必須の診療科が増えるばかりではなく、学修成果基盤型の研修プログラムとなる。本指導医講習会もこの点を踏まえて、講習会プログラムを大きく変更しつつある。

 本学医学部は、東日本大震災の被災地を始めとする東北地方の地域医療を支えるためにも、今後も艮陵協議会加盟病院を始めとする多くの地域医療機関と緊密な連携をとりながら、卒前卒後の医学教育を一層充実させていく予定である。