*第28回*  (R6.1.29 UP) 前回までの掲載はこちらから
「地域医療構想を踏まえたこれからの医学教育」連携トップページへ戻る
今回は宮崎大学での取り組みについてご紹介します。

宮崎大学における地域医療構想を踏まえた医学教育
文責 :

宮崎大学医学部地域医療・総合診療医学講座

吉村 学 教授

はじめに

 宮崎県は、厚生労働省が示す医師偏在指標において、全国33位で、九州で唯一の「医師少数県」に該当する。7地域にわけられる二次医療圏毎にみても、宮崎大学医学部附属病院がある宮崎東諸県医療圏に県内の57.1%の医師が集中しており、他の5地域の医療圏は医師少数区域に区分され、県内格差は以前と比して拡大している。また医師の平均年齢は男性54.4歳、女性45.1歳、全体で52.6歳であり、年齢構成でみても30歳代・40歳代の医師数は10年前と比して減少する等、医師の高齢化が進んでいる。
 宮崎県からは若手医師の確保・養成や、医師の県内定着、県内地域間の医師偏在是正が課題として指摘されている。

ユニークな地域包括ケア実習

 宮崎大学では、2018年より全体で6週間の地域医療実習(必修)を行っている。まず4-5年次に行われるクリニカル・クラークシップⅠの期間に2週間、宮崎大学が指定管理者となっている宮崎市立田野病院にて地域医療実習を行っている。当該医療機関は、平成の大合併で宮崎市に編入した旧「田野町」にあり、旧「清武町」にある大学病院と隣接して近距離にあるため、医学生は、通いで、6~8人のグループ全員一緒に外来診療、病棟診療、訪問診療を修学する。
 つぎに5-6年次に行われるクリニカル・クラークシップⅡの期間に4週間、「地域包括ケア実習」と銘打って、県内7医療圏の66医療機関を実習先として行われている。一実習先に1~2名の配置である。4週間の初日午前中に、グループ全員を集めてレクチャーを行い、地域包括ケアのみならず、コミュニケーションや病院の一員として溶け込む手法等を伝授し、「研修医0年目」として午後からの実習にむけて各医療機関に送りだす。実習先は遠隔地にあるため、通いではなく、割り当てられた病院や近隣のホテルに泊まりこんでの実習となる。実習先に任せきりにならないよう、毎日Google Classroomを用いた振り返りシートを記入させチェックするとともに、週1回Webでグループ全体の振り返りを行っている。なおこの実習は、宮崎県の補助により、医学生に金銭的負担はほとんどない。
 さらに、クリニカル・クラークシップⅡのうち12週間を「地域包括ケア・総合診療医学講座」のある都農町国民健康保険病院で実習する「長期滞在型地域医療実習(Longitudinal Integrated Clerkship;LIC」を特別カリキュラム(定員3名)として展開している。ここでは、初診だけでなく再診、入院から退院、退院後の外来診療や訪問医療・終末期の看取りまで、チームの一員として経験する。また小児健診や特別養護老人ホームの嘱託診療、介護認定審査会にも参加する。2020年度から当該実習を開始(年間3名)したが、一人当たり外来40~100例、救急外来10~20例、病棟20例程度の症例を担当しており、包括的な診療能力の修得、多職種連携の理解、地域指向性の向上に寄与している。

《参考資料》

※下の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます



今後の課題

 宮崎大学医学部は、2022年度から地域枠が定員25名から40名に拡大した。宮崎県は、30代・40代の医師数が減少しており、若手医師の確保・養成を課題としてあげている。また、県内の地域間の医師偏在を是正するために、地域枠生等に適用されるキャリア形成プログラムの運用により、医師の派遣調整を行うとともに、医師の働き方改革を踏まえた勤務環境改善の支援を行うとしている。
 医学生教育では、地域医療の現場で、地域医療で活躍している医師との距離を近くして、実情を体感させ、地域指向を向上させるべく地域医療実習を工夫してきた。一方で、初期臨床研修・専攻医研修等の期間を通じて地域指向性が維持されるよう、更なる工夫が求められる。キャリア形成プログラムの適用となる地域枠生が専門医を取得する前後年になりつつある今日、地域医療を担う志のある医師が、地域医療に従事するためのキャリアアップ支援等を行う等きめ細やかな関与を通じて、宮崎県と一体となって地域医療構想を推進していく所存である。